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僕にはかなり刺さりました:映画評「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」

「ミッシェル・ヨー」ファンなので、評判のこの作品は当然観るつもり
…だったんですが、まさか「アカデミー賞7部門」獲得するとは!
しかも、主演女優、助演女優、助演男優、監督、脚本…と主要部門を制覇してますからね。
まさに「完勝」。

というわけで、慌てて平日のレイトショーを予約。
混むのは嫌なので。


ただ予約した後、ネットの評判を読むと、
「う〜ん…」
ってのも少なくなかったんですよね。
設定が甘い、長い、飽きる、アクションのレベルが低い、訳わからんetc,etc…
「こりゃ、ちょっとシンドイかもな」
と、やや構えて観に行く気分になりました。

…が、全くの杞憂。
僕はすごく楽しみましたし、考えさせられ、感動しました。
長い?(上映時間139分)
全然。
短く感じたくらいですw。


マルチバースを使い切った作品なので、目まぐるしい展開で、考え始めたら追いつかないのは事実。
設定も甘いっちゃあ、甘い。
「えっと、どういうことだっけ?」
ってトコもありますw。
でもそれを超えて、僕の心には届いてくるものがあります。


主人公は僕らの同世代の女性(ミッシェル・ヨー)。
彼女の「気づき」がテーマなのですが、作品の根本にあるのは彼女の娘の「絶望」と「虚無」と「混乱」。
主人公はマルチバースを経験して自分自身を見つめ直し、娘を理解し…しかし「理解」では娘の「混乱」を癒すことはできない。
デジタルネイティブ世代で、いろいろな情報に接し、その中から「自分」のあり方にも折り合いをつけている(彼女には女性のパートナーがいます)娘は、それでも「絶望」と「虚無」を抱え、「混乱」しているのです。
主人公と娘の関係。
目まぐるしく展開する物語の根幹にあるのはそれなのです。


僕らの世代が「世界」と向き合うために手に入れた武器を、主人公の夫(キー・ホイ・クァン。最高です)が訴えます。
「親切」(字幕では「優しく」)
こんなところでヴォネガットに巡り合うとは!


でも多分、彼らの娘はそれだけじゃ足りないんだろうな。
もっと先に行きたい。
先に行けないことに苛立ち、絶望さえ感じている。
その彼女を、僕らの世代は「行かせてやる」しかない。
彼女の絶望と虚無と混乱は、かつて自分たちも感じたことのあるものだから。(質的にはかなり違うところもあって、「分かるよ」としたり顔で言えるものでもないんだけど)
「行きなさい」
でも…



この映画が刺さる理由もよくわかるし、理解されない理由もよくわかります。
アカデミー賞獲ってるし、アメリカじゃ大ヒットらしいけど、「万人向け」じゃあないよね、これは。
それでも僕にはパーソナルな部分ですごく響いてくるものがありました。
よくわかんないとこも結構あるんだけど…w。



(向く/向かないでいうと、近年のハリウッドのエンタメ映画で取り上げられている「マルチバース」に馴染みがあるかどうかは大きいかもしれません。
あるいはTikTokの感覚。
じっくりと物語やテーマを追いかけていくのではなく、短い映像を切り替えながら、個々の映像を深めるよりも、その流れの中で物語を<感じて>行く。
そういう「見方」ができるかできないかってのはあるかも…です。
テーマ自体は普遍的なもんだと思うんですけどね)



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