考えさせられました。:立川談春独演会 三ヶ月連続人情噺その三「芝浜」
2023.12.28 大阪フェスティバルホール
三ヶ月連続人情噺の最後はフェスティバルホールで「芝浜」。
昨年に引き続き…です。
まあ、贅沢な話w。
今回の演目はこんな感じ。
「芝浜解説」がなんとも興味深い。
自分の考えや悩み、そこから作品(「これからの芝浜」)を作り上げる考え…みたいなものを「作品」にしちゃってるんですから。
「芝浜」を完成させたと言われる3代目桂三木助の「芝浜」をベースに、
志の輔・談春が衝撃を受けて入門するきっかけとなった談志の「芝浜」の解説を加え、
そこから自分がどういうつもりで手を加えて(前の)「芝浜」を演じたか
…ってのが、三木助・談志の「模写」を交えつつ語られる贅沢な一席。
そして「これからの芝浜」をなぜ考えるようになったのか…。
これは去年のプログラムに丁寧に書かれていました。
そのベースはもちろん変わりないのですが、今回はそれに加えて現代の世相や次代への想いなんかも正直に語られていました。
「パワハラ」や「男尊女卑」的な要素が色濃くある<落語>が、次の時代の中を生き延びていくことができるのか…って話ですね。
これは「文七元結」の時にも言ってらっしゃいましたね。談春さんは。
本気で気にしてるんでしょう。
談春さんは言われませんでしたが、もしかしたらこれは師匠の談志の
「落語は人間の業の肯定だ」
って看破への異議申し立てかもしれない。
「確かにそれはそうだ。でもそれを<逃げ>にしてないか?そう言ってしまうことで世の中の変化に対して背を向けることの<言い訳><カッコつけ>にしてるんじゃないか?」
…そこまで言ってない?
いや、それくらいのことは思ってるんじゃないか…と僕は邪推しています。
酒好きで怠け者の魚屋が、芝浜で財布を拾って大金を手に入れるが、妻の機転で夢だったと思い込まされ、仕事に励むようになる。
三年後に妻が真相を打ち明けると、魚屋は妻の愛情に感謝する。
お祝いに酒を…と妻に言われ、一度は手を伸ばすが、魚屋は飲むのをやめる。
「夢になるといけねぇ」
談春の「これからの芝浜」ではこの「芝浜」を大きく変えていますが、ポイントは以下でしょうか。
・魚屋は基本的に真面目。彼が酒を飲み、仕事を休むのも、自分自身への迷いのようなものがあってのこと。(ある種の「鬱」かな)
・魚屋の妻は女郎上がりで、苦労をしてきた人物。その苦労の末に彼女は自分の今の<幸せ>を認識している。
・3年経って彼らは小さな成功を収めるが、魚屋自身はそのことにモヤモヤを持ち続けている。そのことが3年経った大晦日に噴出する。
…これ以上は「ネタバレ」かな。
まあ綺麗に「夢になるといけねぇ」とは収めてくれません。
収めてくれないけど、それぞれが<幸せ>を感じるようになって、
「ああ、いい夫婦だな」
と聞いてるものが思えるようになる。
<許し>の向こうに救いが…
うん。そんな話です。
「芝浜」にそれほどの時代錯誤があるのか、僕にはよくわかりません。
妻にも聞いてみましたが(妻とは鶴瓶さんの「芝浜」を一緒に聞いています)、
「<落語>って<型>だと思ってるからなぁ。そう思うと、気にはならない。
でも確かにフラットで聞いたら、<どうかな?>ってところはあるかな」
との回答。
確かにね。
僕は男性だし、落語という型が好きだから、ピンとこないってのも尚更かもしれないです。
演者である談春さんには思うところがあるんでしょうね。
(実際、観客席に若者はほとんどいませんでしたしw)
来年、談春さんはピロティで10ヶ月連続独演会をされます。
何回かはお邪魔したいところ。
そして12月にはまた「芝浜」を…
となるんでしょうかね?
なって欲しいな。
その時、どういう思いを談春さんは込め、僕は感じるんでしょう。
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