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イメージは「邦題」。でも芯のとこには「原題」が…:映画評「丘の上の本屋さん」

妻の誘いもあって、大阪ステーションシネマで劇場公開を見ました。
小さなスクリーンでしたが、お客さんの入りは良かったです。
テアトル梅田が閉館しましたが、こういう風に単館ロードショーの受け皿になってくれると良いのですが。


イタリアでも風光明媚で知られた田舎町が舞台。
そこで小さな古本屋を経営している「リベロ」。
少し風変わりな隣人たちとの日常の中に、ある日、アフリカから移民として渡ってきた少年が加わる。
1冊ずつ本を貸してやり、少年と感想を語り合うリベロ。
その日々と並行して、彼はアメリカに移民として渡ろうとする女性の日記を読み続ける…


隣のカフェの店員や彼がモーションをかける女性とのやり取り、店に訪れる一風変わった人々との交流。
ユーモアたっぷりに描かれる日々と、勉強する意欲も向上心もあるが、居場所が見つけられない少年との交流が、淡々と描かれます。
「リベロ」の過去がどういうものであったか、全く描かれず、少年も含め、登場人物たちの背景は会話や画面から最低限受け取れるだけ。
多弁な日本映画とは真逆な映画ですな、これはw。


全体的な印象は、邦題の「丘の上の本屋さん」のイメージ通り、「ほんわか」したものです。
予告編もそういう印象でした。
ただ物語の最後、その印象が一気に変わります。

原題「私は幸せになる権利がある」
振り返れば、「そういう物語だったのだ」、と。


今、ヨーロッパでは「移民」問題に大きな焦点が当たっており、イタリアはその最前線に立たされています。
僕にはその切迫感を感じることはできないのですが、そういう背景がこの作品にはあるのではないか、と。
リベロが読む日記は、戦後の経済環境が厳しい中、アメリカに希望を持って移民として渡っていくことを決意した女性のものです。
「幸せになりたい」と海を渡った女性。
そして今、同じように「幸せ」を求めてアフリカからやって来た少年が目の前にいる。
彼に手を差し伸べながら、リベロは伝えるのです。
「君には幸せになる権利がある」
柔らかな作品だけど、社会問題を見据えた作品でもあるわけです。



もちろん「本」を巡る物語でもあり、ここで紹介される本たちの物語に温かい気持ちになります。
「発禁図書」に対するリベロの想いとかね。
もしかしたらそういう物語でおさめた方が映画としては出来が良かったかも…。
でもそうしたくない想いが作り手にはあったんでしょう。
それはそれで観る側が受け止めるべきものなんでしょうね。



#映画感想文
#丘の上の本屋さん

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