意識高い系に遭った話
先日意識高い系の方とお食事に行った。
今はかろうじて生きている。
彼と遭うのは2度目で、1度目はボクが本屋で三浦崇宏さんの『言語化力』という本を立ち読みしているときだった。
堀江貴文さんの『それでも君はどこにでも行ける』を買おうとしたその瞬間、まるで彼はボクがこの場を立ち去るのを見透かしたかのように、不意にこんな言葉をかけた。
「おすすめの本ってありますか?」
その言葉を聞いた瞬間、ボクは察した。
あ。意識高い系だ。
ボクの推測では彼は意識高い系歴1、2ヶ月といったところだろうか。
彼の目は未来への期待と将来への自信に満ちていた。
柄にも合わず、なぜかものすごいへし折りたくなった。
そのまま彼は意気揚々と語りのパートをソロする。
付添の友人は困惑しているようだ。
本屋でおすすめの本を聞くことは別におかしなことではない。
ボクとっては嬉しいことでもあった。
だが警戒心は緩めない。
ボクは颯爽と、スマートに、まるで台本を演じているかのごとく1冊の本を差し出した。
「『のび太』という生き方、おすすめです。
小学2年のときに読んだのですが、今でもボクの人生のバイブルですよ。」
それから彼は、ボクになぜここにいるのかを訪ねた。
なるほど、学ラン姿でビジネス書コーナーに居るのがよほど珍しかったらしい。
簡単にボクの経緯を話した。
大学に行かないこと、のび太の素晴らしさ、将来ドラえもんになりたいこと。
爛々と目を輝かせ、嬉々としてボクの話に夢中になっている。
よほどおもしろかったのか、彼は興奮した鼻息で、一緒に食事に行きたいと急かしてきた。
彼は自分のことを大学生だと言っていた。
そしてボクは高校生だ。
さらにビジネスパーソンには、誘ったほうが全部もつというしきたりがある。
これらの事象から導き出される答えは1つ。
タダ飯。
計算を終え、ボクは行くと答えた。
日にちは二週間後の日曜日、18:00からに決まった。
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