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トキメキシリーズ・番外編〜コロンボのコート。


古今東西ミステリードラマは数多あれど、「刑事コロンボ」は世界中でもっとも有名な刑事ドラマと言っても過言ではないだろう。
ヨレヨレのコートにボサボサ頭、たいがいは出会ってものの数分で犯人を見抜いておきながら、そこからエンディングまでの残りの約60分間はとぼけたフリをし続け、時に容疑者にヤらしいトラップをしかけたりしながら証拠固めを進めてじわじわじわじわと犯人を追い込んでゆくドラマである。(褒めてます)
推理ドラマでありながら冒頭に犯行シーンという「答え」をもってくることで視聴者にまず犯人を知らしめ、その後に登場するコロンボがどうやって犯人を特定し、追い詰めてゆくのかを安心して心ゆくまで楽しめるという斬新な手法が使われていることで有名だ。

そのコロンボが愛用する品々の中でもベージュのステンカラーのコートはファンにとって永遠の憧れだろう。もはやベージュのステンカラーコート=コロンボコートと言える。あのコートを着て、ポケットからゆで卵やアラジンの魔法瓶を取り出したり、ペンやメモを探し回りたい。探し回ったあげく、見つからなくて誰かにペンを借してもらいたい。

ただ、残念なことに私はベージュがあまり似合わない。ベージュは色白の方もしくは思いっきり陽に焼けている方にこそ映える色で、わたしのような中途半端な肌色の人間にはみすぼらしく見えるだけ、とこれまでの人生避けてきた。
そもそもステンカラーコート自体がトラッドに分類される洋服という認識で、パンク&ニューウェーブに源流を汲むわたしのスタイルからは縁遠いスタイルだった。

しかしである。
先日古着屋で出会ってしまったのだ。状態の良いベージュのステンカラーコート=コロンボコートに!
と言ったところでコロンボのコートそのものではなく(コロンボのコートの特定についてはファンの間で盛んに議論されているようだ)、現代のアパレルメーカー製の婦人服だ。しかもコロンボのコートより明らかに厚手だし、裏地も付いている。袖口のボタンはないし、襟の形には多少丸みがあったりして随所に婦人服らしいアレンジが施されている。しかしながらわたしにとっては全てのベージュのステンカラーコートがコロンボコートなのだ。羽織ればたちどころに気分はコロンボである。ポケットも大きくてゆで卵が3個は余裕で入るし、アラジンの魔法瓶も入れようと思えば入れられるだろう。似合わないと避けてきたベージュのコートだけど、もはややりたいことはできるうちにやっておこう、それに近未来、白髪のおばあちゃんになった時ステンカラーコートを着こなせていたなら絶対的に素敵だし、と一念発起して購入に至った。

しかし、いざ手に入れてみて悩ましいのがコットンのコートを着る時期だった。コロンボはあのコートがトレードマークだから、地中海性気候の恩恵を受ける温暖なロサンジェルス警察の刑事でありながらも年がら年中コートを羽織っていたけれど、わたしのような暑がりかつ寒がりはコットンのコートを着る時期がかなり限定されてしまうということに気がついた。

コットンのコートを羽織っていても暑くもなく寒くもない、そんな旬の時期はいつ来るのか。今か今かと見計らっていたところ、近頃ようやくその時期が到来した。晩秋である。多分、もう少し寒くなったらきっとわたしはウールやダウンのコートを引っ張り出すことになりコロンボコートはクローゼットの奥に追いやられてしまうだろう。だから最近はコロンボコートの短い旬を心ゆくまで楽しませてもらっている。
ポケットにゆで卵はまだ入れられてはいないけれど、ボサボサヘアーだけはコロンボには負けてないつもりだ。


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