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紫花
細い路地に誘われて迷い込んでみた住宅街の一角の、突如ぽっかり現れた空き地一面に紫花が揺れるのを見た。
かつては誰かが暮らした家が建っていたはずのその土地で、恐らく自生したのであろう紫花があたり一面静かに揺れていた。
夕暮れ時の住宅地だというのに、なぜここはこんなに静かなのだろう。
傾く西陽に照らされて紫花は浮かび上がり、また静かに揺れた。
その場所だけが時間から溢れ落ちてしまっているかのように見えて、しばらく釘付けだった。
いつぞやの、汗だくだった美容院帰りの思い出である。
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