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書記の読書記録#19「分子進化の中立説」

木村資生「分子進化の中立説」についてのレビューと読書記録。


レビュー

木村資生が唱えた分子進化の理論。タンパク質や核酸に見られる突然変異の多くは,適応上特に有利でも不利でもなく,そうした中立突然変異が遺伝的浮動を通じて集団内に固定されることによって分子進化が起こるという説。

これを立証するための議論が詳細に展開された専門書。数々の批判に耐えうるものとなっており,現在では定説として広まっている。当時の数理統計による記述が多い。


読書記録

# 1 p17〜71
・ラマルクの進化説・ワイスマンの新ダーウィン主義・ダーウィンの「種の起源」・メンデル法則の再発見・ハーディとワインベルクの法則・フィッシャー,ホールデン,ライトによる古典的な集団遺伝学,遺伝的浮動の見方の違い・マラーによる遺伝子首位・ドブジャンスキーの自然集団の研究・フォードの遺伝的多型の概念・淘汰万能主義・数学的理論の8点,偏微分方程式を用いた拡散モデル・置換の荷重,1968年中立説の論拠・タンパク質多型の中立な同義対立遺伝子による解釈・自然淘汰にかかりにくい分子的変化ほど進化の過程で急速に起こる・遺伝的浮動の概念・集団の有効な大きさ・無限座位モデル


# 2 p72〜133
・化石記録からの表現型進化の特徴・新生代にはじまる哺乳類の多様化・速い表現型進化における生態的好機・分類学的速度・表現型進化の連続性の議論・ヘモグロビンα鎖から見る分子進化,速度の一定性・進化速度の単位ポーリング・分子進化時計・ヌクレオチド配列の比較,塩基置換・アミノ酸で表した進化速度は年当たりほぼ一定,世代時間仮説・保守的置換が起こりやすい・遺伝子の重複の先行,偽遺伝子・多重遺伝子族,反復構造・有害な突然変異も分子進化に重要


# 3 p134〜210
・正の淘汰と負の淘汰・表現型淘汰:安定化,定常性,分断性・遺伝子型淘汰・遺伝的荷重:突然変異,分離,頻度依存性淘汰下,浮動,置換・フィッシャーの適応過程モデル・保守的置換の性質・突然変異による変化が小さいほど進化速度は速い・機能的制約と進化速度の関係:重要でないものは速い・3置換型モデル・種内の大部分の突然変異置換が中立な偶然的浮動によるという観察・利己的DNA・偽遺伝子の速い進化・同義コドンの不均一使用による進化の減速


# 4 p211〜269
・確率論的扱い・突然変異の消失・突然変異のモデル・無限中立対立遺伝子モデル:対立遺伝子の有効数・淘汰に中立な突然変異の割合の推測・超優性突然変異遺伝子・突然変異対立遺伝子の年齢・遺伝子頻度の和,見本過程の滞留時間・ステップ状突然変異モデル・無限座位モデル・有効中立突然変異モデル・遺伝的距離


# 5(最終回)pp270〜345
・平均ヘテロ接合頻度の分布・タンパク質多型の中立説・半数体生物での遺伝子変異・ダイカイゼン-ハートル効果・統計的検定・対立仮説:超優性仮説,フランクリン-ルウィントン理論・地理的構造


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