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書記の読書記録#150「花芯」

瀬戸内晴美「花芯」のレビュー


「戦後文学の現在形」収録作品。


レビュー

表題作『花芯』は1958年の作品,1957年に「女子大生・曲愛玲」で新潮同人雑誌賞を受賞した後の第1作で,ポルノ小説であるとの批判にさらされ,批評家より「子宮作家」とレッテルを貼られ,しばらく干されていたのだという。

直接的な性愛描写を,隠すことを美徳としてきた(一部の)世間に対する,堂々たる反抗と読んだ。家庭というのは女性にとっては大きな制約なのであって,作者の裏表のない讃歌によって,子宮は自由へと解き放たれた。これは悪女でなければ雌獅子でもない,一娼婦の目覚めの話である。まだ熟しておらず粗削りではあるが,有り余るパワーを黙殺するのはもったいない作品である。

現代からすれば,陳腐にも思えるポルノと言ってしまえばそれまでなのだが(第一印象),戦後間もない時代背景を見てこういう風土もあったのだという,慎重かつ真っ向からの批評が求められる。


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