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書記のBio/Chem-Info日誌#10 Molinspirationで分子特性と生理活性を調べる


Molinspirationとは


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以下のサービスを提供するフリーのオンラインサービスである:

Molinspirationは、SMILESとSDfileの変換、分子の正規化、互変異性体の生成、分子の断片化、QSAR、分子モデリング、ドラッグデザインに必要な様々な分子特性の計算、高品質な分子の描写、部分構造と類似性の検索をサポートする分子データベースツールなど、分子の操作と処理をサポートする幅広いケムインフォマティクスソフトウェアツールを提供しています。また、フラグメントベースのバーチャルスクリーニング、生理活性予測、データの可視化もサポートしています。MolinspirationのツールはJavaで記述されているため、どのようなコンピュータプラットフォームでも使用することができます。(Molinspiration Cheminformatics Software 欄より翻訳)


今回はその中で,分子特性の計算と生理生理活性予測を行う。


参考論文


今回はフラボノイドの一種である「Isobavachin」「Eriosemation」で実験する。



分子特性

ここのリンクから,計算サイトに飛ぶ。

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分子構造について,SMILES表記を入力するほかに,手書きでも入力できる。

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PubChemなどからCanonical SMILESを取得して打ち込む。

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結果がこちらである。

「Isobavachin」

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「Eriosemation」

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パラメータの解説

logPオクタノール-水分配係数分子の疎水性の指標として用いられ,値が高いほど疎水性が高い

2つの化合物を比べると,疎水性残基の多いEriosemationの方が値が高いことがわかる。

※Molinspirationでは独自に「miLogP」を定義している

参考:

https://future-chem.com/logp/


TPSAトポロジカル極性表面積分子表面のうち極性を帯びている部分の面積値PSA)を高速計算で近似したもの,薬物の細胞膜透過性の評価に用いられる,値が低いほど透過性が高い

2つの化合物を比べると,より残基の多いEriosemationの方が値が高いことがわかる。

参考:

https://www.chem-station.com/chemglossary/2017/04/polar-surface-area.html


natoms:原子の数

MW分子量

nON酸素原子Oと窒素原子Nの数,水素結合アクセプター

nOHNHOH基とNH基の数,水素結合ドナー

nviolations"Rule of 5"(後述)の違反数

nrotb回転可能な結合分子の柔軟性に寄与する

volume:分子容積


リピンスキーの「ルール・オブ・ファイブ」

対象の分子が医薬品(特に経口投与で)として使えるかどうかの指標として,リピンスキーの「ルール・オブ・ファイブ」がよく用いられる。(名称は,基準値が5の倍数であることに因んでいる),あくまで目安の1つである点には注意。

logP <= 5

MW <= 500

nON <= 10

nOHNH <= 5

「Isobavachin」「Eriosemation」を見ると,共にリピンスキーの「ルール・オブ・ファイブ」に違反していないことがわかる。


参考:

https://www.chem-station.com/chemglossary/2016/01/lipinskis-rule.html


生理活性

説明によると,GPCRリガンド,イオンチャネルモジュレーター,キナーゼ阻害剤,核レセプターリガンド,プロテアーゼ阻害剤,その他の酵素ターゲットに対する druglikeness score を算出することもできる。スコアの値が大きければ大きいほど,その分子が活性を持つ確率も高いことを示す。

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結果がこちら。

「Isobavachin」

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「Eriosemation」

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これらは,元論文ではアンドロゲン受容体と相互作用する分子としてスクリーニングされたものである。「Nuclear receptor ligand」の値が高いことから,作用の強いことを確認でき,さらにIsobavachin>Eriosemationであることはドッキングスコアとも一致する。


フリーなので信憑性は分からないが,医薬品として適合性があるかのスクリーニングには役立つように思う。


本記事のもくじはこちら:


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