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書記の読書記録#46「分子進化のほぼ中立説」

太田朋子「分子進化のほぼ中立説」のレビューと読書記録


レビュー

先に断っておくと,集団遺伝学を勉強していて本著者について知らないのであれば,目を通しておくべき本である。


題名にある「ほぼ中立説」というのは,今となっては一般的とされる木村資生の「中立説」の難点に対するものである。太田朋子は「弱有害効果(ほぼ中立)」の導入によりその解決を図った,現在では十分認められている概念とみられる。

本書のレビューを簡潔に言うなら,内容★5で編集★1,といったところ,レビューサイトの星の(内容にしては)低いのはこれに尽きると思う。内容は集団遺伝学に触れるのであれば必読ものだ。

そのレベルの高さに編集が追いついていない。随時補足説明をしたり巻末に用語集を載せたりと初心者に合わせようという努力が一応は見られるものの,そもそも初心者が読めるレベルの話ではない(木村資生の理論が分からないと門前払いだろう)。ではある程度分かる人が満足するものかというと,そうでもない。引用元の論文のリファレンスがないのは,学術書ではないということなのか。

まとめると,読者層のターゲッティングができていない本,ということ。もっともビジネス書ではよくあることなのだが。この内容でこれは残念なことだ。


読書記録

# 1p12〜45
・集団遺伝学のモデル・淘汰による遺伝子型頻度の変化・遺伝子頻度の偶然的変化の確立過程・木村資生の中立説・タンパク質進化の速度・ほぼ中立説(弱有害突然変異仮説):淘汰,ほぼ中立,中立・集団が大きいほど自然淘汰が有利,集団が小さいほどドリフト効果が大きくなる・コルモゴロフの後ろ向き方程式(拡散過程)・突然変異のステップモデル


# 2p46〜162
・同義置換と非同義置換の割合と集団サイズ・ゲノムの複雑さ:重複遺伝子,イントロン・ネオ機能化の進化・サブ機能化(重複-退化-補足(DDC)モデル)・グロビン遺伝子族,Hox遺伝子群・協調進化・Eve遺伝子とエピスタシス・マイクロRNAの緩衝効果,ロバスト性・マクドナルド-クライトマンの方法・ソーイヤーらの検定と推定・恒温動物と変温動物のGC含量の違い・反復配列と動く因子・ロバストネスとエピジェネティクス・遺伝的背景依存性・淘汰係数の分布


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