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書記の読書記録#484『シンセミア』

阿部和重『シンセミア』のレビュー



『戦後文学の現在形』収録作。


レビュー

2004年に,第15回伊藤整文学賞小説部門,第58回毎日出版文化賞第1部門を受賞。

犯罪といってしまえばそれまでなのだが,原罪を抱えたまま放置した末路がさまざまな人物によく現れていると思う。共感を放棄させるどころか,作者自身が覗きを推奨するような構成で意地悪い。

どこかからのラジオと洪水が繋がった時に不穏はさらに広がり,やがて様々な装置により物語は一気に沈む。爆発に始まり爆発に終わる,そんなB級じみたくだらない神話が,読んでいて楽しくてしょうがないのだ。

現代は監視されていない人など存在しないほどの情報社会,本書の「ビデオ撮影サークル」の末路は示唆に飛んでいる。戦後日本の落とし子は今なお脅威を保ち続けている。


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