「旅の左手,最果ての右手」楽曲分析(書記が音楽やるだけ#22)
メイドインアビスの2期制作が決まったことなので,早いうちに1期のおさらいをしておきたい。
楽曲情報
作詞作曲:橋本由香利
唄:リコ(富田美憂),レグ(伊瀬茉莉也),ナナチ(井澤詩織)
アニメ「メイドインアビス」のエンディングテーマ。オープニングとは対の,ほっこりした曲調でありながらも,登場人物の心理に寄せたような楽曲となっている。
全体構成
[E major]イントロ→
(1番)A→B→サビ→
(2番)A→B→サビ→
間奏→サビ→アウトロ
イントロ
早速難しそうなのが並んでいる。ここでは基本骨格とつなぎと分けて考えてみる。すると,基本は「16 145」というシンプルなものであるとみることができる。
前半はSDMを挟みながら下降していると考える。
後半にある#Ⅳdimは,ⅣとⅤのパッシングとして用いられるのが一般的である。ただ,ここでは2回使っており,特に1回目ではⅤにいくかと思いきやⅣに下がって,とすかしてくる。最後のⅤ/Ⅳはドミナント緩和と同時にベース音の流れを作る。
Aメロ
メロディのリズムについて,適当に共通部分を切り取ってみる。
AメロのコードはⅠとⅡmを中心に構成される。
後半では,半音下降を作るⅠm/♭Ⅲが印象に残りやすい。
ここで繋ぎとして多用される#Ⅳm7-5についてみておく。これはリディアンからのモーダルインターチェンジ,あるいは属調B majorからの借用と見なすことができる。元を辿るとⅡ7(9)でありドミナントを有するのがわかる。
この曲全般に言えることだが,ちょくちょくスケールが変化しているのがポイントである。
Bメロ
Bメロは大きく3つに分けられ,それぞれに特色があり,ストーリー性を形作る。
前半について,コードはⅥmとⅡが中心となり,聞こえ方としてはB major感が強くなる。
Aメロとは違い,メロディは16分を増やしてそれらをつなぎ合わせたものとなっていく。
後半は「125」に半音下降を加えた形。
ここは単純に,ダイアトニックコードの下降である,合いの手を挟んで繰り返し。
サビ前で,2小節かけた大胆な上昇コードを見せる(特に#Ⅳはかなり外れている)。
サビ
メロディは一気に伸びのあるものに変わる。
ちょうど今までのコードを混ぜたものが,サビとなって現れてくる。「ⅠとⅡm」と「ⅥmとⅡ」の繋ぎはセカンダリードミナントであるⅢに半音進行するようベース音を転回したものである。
半音下降をさらに伸ばす。
締めはSDMによる「671」である。
間奏
Cメロで再び盛り上がるために,ここではゆっくり下降する。
Cメロ
「なーなーなー」のところ。雰囲気としてはBメロに近い,2回繰り返し。
少しずつ上がっていく,SDMである♭Ⅶでさらに期待感をあげていく。
ここでも色々混ぜて上昇している,Ⅶに至ってはもはや調性からの外れが強く思い切った進行である。この上昇について,歌詞とも合っているのが良い。
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