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書記の読書記録#178「女坂」

円地文子「女坂」のレビュー


レビュー

円地 文子(1905年(明治38年)10月2日 - 1986年(昭和61年)11月14日)は,日本の小説家。江戸末期の頽廃的な耽美文芸の影響を受け,抑圧された女の業や執念を描いて古典的妖艶美に到達。戦後の女流文壇の第一人者として高く評価された。『源氏物語』の翻訳でも知られる。

「女坂」は1957年3月角川書店刊,第10回野間文芸賞受賞作である。"The Waving Years"の題で英訳(1980年)されてもいる。

一般的に,「家」という倫理(制度)に対して耐え忍ぶほかのない女の一生について書かれた作品と解釈される。中にはストイシズムを指摘する感想もあって面白い。

何も女に限らず,男もまた「家」の維持装置に過ぎない。それは「家族」へと変容しつつある現代でも,そう大きくは変わらない。

文学の持つ力というのは厄介で,世代を超える呪詛を実現してしまうことも多々ある。明治という改革の時代より,現代に至り華やかな記憶だけが選別される中で,ひっそりと伝播する怨念が本作の魅力なのだろう。


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