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書記の読書記録まとめ

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今までに読んだ本についてのレビュー。 ブクログ:https://booklog.jp/users/9512a62a15b04973
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2021年5月の記事一覧

書記の読書記録#185「中医臨床のための温病学入門」

神戸中医学研究会「中医臨床のための温病学入門」のレビューと読書記録 レビュー温病学とは,主に温熱あるいは湿熱の邪による外感病である温病に対する理論で,いわゆる感染性疾患を考えるのに有効である。中医学においては傷寒論とともに発達してきた一分野といえる(日本漢方では傷寒論メインで温病学はあまりない,気候の違いの影響か?)。方剤として有名なものに「銀翹散」「麻杏甘石湯」「白虎加人参湯」「大承気湯」がある。 読書記録・温病学の歴史・温病と傷寒・病因:風熱,暑熱,湿熱,燥熱,伏気・

書記の読書記録#184「古代オリエントの宗教」

青木健「古代オリエントの宗教」のレビューと読書記録 レビューキリスト教の拡大からスンナ派イスラームの完成までを範囲とする。大学の講義を元にしているようで,読みやすい本である。その約1000年の期間における,オリエント世界における宗教は次々に変化を遂げていった。元となる「聖書ストーリー」をどう受け取っていったかにより多様性が生まれる。 主な宗教:マンダ教,マーニー教,ミトラ信仰,ゾロアスター教ズルヴァーン主義,イスマーイール派,二元論的ゾロアスター教,スンナ派イスラーム

書記の読書記録#183「ゾロアスター教」

青木健「ゾロアスター教」のレビューと読書記録 レビューゾロアスター教の興亡の歴史について書かれた本。思想についてはざっくりした解説となっている。世界史では,ヒンドゥー教やイスラーム教の影に隠れ主役を握る機会は少ないが,後世への影響は侮れない。 読書記録# 1p16〜146 ・古代オリエント時代,古代アーリア民族の時代,イスラーム時代・インド/イラン/ヨーロッパへの分岐・テュルク人の民族移動・アーリア人社会の3階級制度・ミスラ神,ヴァーユ神,ウルスラグナ神,アータル神,アナ

書記の読書記録#182「ロスマンの疫学」

KennethJ. Rothman「ロスマンの疫学」のレビューと読書記録 レビュー原題にはintroductionとあるが,統計学入門の知識を前提とする。数式はさほど重要でない反面,言葉での説明を飲み込むのに時間がかかりそう。誤った解釈の事例も載っているので,訓練をして慣れたいところ。 読書記録# 1p3〜60 ・交絡・公衆衛生の歴史:ヒポクラテス,アヴィセンナスノウ,ナイチンゲールなど・因果のパイモデル・誘導時間・帰納法・反証主義・ヒルの因果性基準 # 2p61〜20

書記の読書記録#181「朱を奪うもの」

円地文子「朱を奪うもの」のレビュー 「戦後文学の現在形」収録本。 レビュー1969年, 『朱を奪うもの』『傷ある翼』『虹と修羅』の一連の活動で第5回谷崎潤一郎賞を受賞。 本作はおそらくイプセンの劇に大きく影響されている(ちょうど新劇運動と被っているのか?)。また左翼運動とのつながりも見られる。 考察ポイントはたくさんあると思うが,ここでは冒頭のみ取り上げてみる。始まりは抜歯の場面から,さらに乳房の切除手術を受けたことの告白。この地点で,既に性の喪失への恐れが見られる。

書記の読書記録#180「図解・感覚器の進化―原始動物からヒトへ水中から陸上へ」

岩堀 修明「図解・感覚器の進化―原始動物からヒトへ水中から陸上へ」のレビュー読書記録 レビュー動物ごとに特殊な感覚器について比較する本。環境の変化に適応するまでの過程を辿るのも読み方の一つだろう。 読書記録# 1p3〜76 ・受容器・水晶体眼:散在性視覚器,眼点,杯状眼,窩状眼・複眼・脳から眼へ・頭頂眼,松果体・外側眼・視細胞・魚眼レンズから凸レンズへ・望遠鏡眼 # 2p77〜152 ・化学受容器・昆虫の味覚・遊離化学受容細胞,味蕾・5つの基本味・嗅覚器・鼻嚢・鼻腔・嗅

書記の読書記録#179「論理と集合から始める数学の基礎」

嘉田 勝「論理と集合から始める数学の基礎」のレビュー レビュー本書は,以下分野の入門のためと読み物あるいは副読本として扱うことにする。 →命題代数/述語/集合代数/写像/2項関係/順序集合/同値関係/商集合/有限集合/可算集合/論理回路/帰納法 本記事のもくじはこちら:

書記の読書記録#178「女坂」

円地文子「女坂」のレビュー レビュー円地 文子(1905年(明治38年)10月2日 - 1986年(昭和61年)11月14日)は,日本の小説家。江戸末期の頽廃的な耽美文芸の影響を受け,抑圧された女の業や執念を描いて古典的妖艶美に到達。戦後の女流文壇の第一人者として高く評価された。『源氏物語』の翻訳でも知られる。 「女坂」は1957年3月角川書店刊,第10回野間文芸賞受賞作である。"The Waving Years"の題で英訳(1980年)されてもいる。 一般的に,「家」

書記の読書記録#177「マテリアルサイエンス有機化学 第2版: 基礎と機能材料への展開」

伊與田 正彦,横山 泰,西長 亨「マテリアルサイエンス有機化学 第2版: 基礎と機能材料への展開」のレビューと読書記録 レビューエレクトロニクスの進歩により,ディスプレイやメモリなどのさまざまな技術が発展して活用されている。本書は有機化学の復習から始め,実際の有機機能材料について解説される。 読書記録# 1p1〜73 ・有機機能材料・炭素同素体:フラーレン,カーボンナノチューブ,グラフェン・高分子・励起状態の違い・一重項と三重項・ジャブロンスキー図・デクスター機構,フェル

書記の読書記録#176「生命科学のためのウイルス学」

監訳:下遠野邦忠,瀬谷司「生命科学のためのウイルス学」のレビューと読書記録 レビューウイルス全般における総論。詳細への起点として使える。 読書記録# 1p1〜43 ・ウイルスの構造:カプシド,エンベロープ・二十面体構造・ウイルスゲノム,フレームシフト・逆転写酵素・ウイルス感染・細胞形質転換・偏性細胞内寄生体・ボルモティア分類・スーパーウイルス,ウイロイド,プリオン # 2p45〜71 ・受容体への結合,侵入・ゲノム合成:dsDNA,ssDNA,dsRNA,ssRNA(+

書記の読書記録#175「図解 内臓の進化」

岩崎修明「図解 内臓の進化」のレビューと読書記録 レビュー要約されているとはいえガチの解剖学に,進化の要素を足すことで上手いこと読み物に落とし込んだ本。「進化」と銘打っているが,実質解剖学の導入として読むのがいいだろう。 読書記録# 1p3〜76 ・内臓:呼吸器系,消化器系,泌尿器系,生殖器系,内分泌系・鰓,呼吸運動:円口類,魚類・外鰓・鰓裂・咽頭嚢・鼻腔と口腔の連結,鼻甲介・咽頭交叉・肺の形態・肺の交叉系交換系・肺胞・鰾 # 2p77〜165 ・前口動物と後口動物・口

書記の読書記録#174「クリスチャン分析化学 原書7版 Ⅱ.機器分析編」

G. D. Christian 他2名「クリスチャン分析化学 原書7版 Ⅱ.機器分析編」のレビューと読書記録 レビュー主に分光分析法,原子分光分析法,クロマトグラフィー,質量分析法について扱っている。こちらも教科書として標準的なものだろう。 読書記録# 1p1〜72 ・分光分析法・電磁波の吸収に伴うエネルギー変化・紫外可視吸収,発色団・赤外吸収・ブーゲ-ランベルト-ベールの法則・分光計・光源:発光ダイオード,低圧重水素放電ランプ・検出器・蛍光分析法・ケミルミネセンス #

書記の読書記録#173「シャクンタラー姫」

カーリダーサ(訳:辻直四郎)「シャクンタラー姫」のレビュー レビュー(以下Wikipediaより引用) カーリダーサ(कालिदास)は古代インドの作家。サンスクリット文学において最も偉大な詩人,劇作家と考えられている。 『シャクンタラー』は、インドのカーリダーサによる戯曲(正式な題名は『アビジュニャーナ・シャークンタラ』( अभिज्ञानशाकुन्तल Abhijñānaśākuntala 「思出の品により回復されたシャクンタラー」)。 カーリダーサの戯曲として

書記の読書記録#172「古代インド」

中村元「古代インド」のレビューと読書記録 レビューグプタ帝国の崩壊までのインドの歴史についての解説書。主な問いとして,インドを元とする宗教や哲学の発展や衰退について扱っている(著者の専攻はインド哲学や仏教)。 読書記録# 1p13〜152 ・インドの言語分布・アーリア人バラモン教徒の国・インダス文明,モヘンジョ=ダロ・彩文土器,大浴場・地母神信仰・文明の永続・ムンダ人,ドラヴィダ人・インド-ヨーロッパ語族の移動,インド-イラン人・ダーサ,ヴァルナ・アーリア人の定住化・宗教