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自分のためにフレンチトーストを焼く-すずころ日和 労い-


春休みの今日、子どもたちは文句を言いながらも離任式のために登校した。
すずと途中まで一緒に歩く。

子どもたちを見送って、ポテポテと春を感じる農道をすずと歩く。
桜が一本咲いていた。8分咲きだろうか。
ああ、季節が巡っている。
冬のダウンをまだ着ての散歩だけれど、もう冬は終わったのだ。

いつもより少し長めの散歩をした。
ご機嫌なすずを、途中の草むらで、そして帰宅後の玄関前で撫でる。
気持ちよさそうに、お座りの体勢から後ろ足が寝っ転がるように崩れていく。顔を時々、こちらにむけて愛おしそうに鼻を近づけてくる。

家に入りすずにご飯をあげてダウンを脱いでいると、ガンガンと音が聞こえてきた。
早くもご飯を食べ終わったすずが、サークル内をすごい勢いでぐるぐると走り回って、ジャンプ。サークルとゲージにあたり、床のマットはずれまくる。
そして「キューン、キューン」!

ああ、お姉ちゃんたちがいない!!!

きっと気付いたのだろう。ここ数日の朝の団欒とちがう部屋。
言葉にできないもどかしさが、犬なりに感じたのだろうか。
5分ほど紐で遊んであげて、あとはひたすら背中をなでた。
「大丈夫だよ〜。みんな、帰ってくるからね」
ぐちゃぐちゃになった部屋を整え、フリースをきれいに敷いてサークルをでた。

さて。
子どもたちがいない朝は久しぶり。

超熟の残り2枚は朝ごはんに子どもが食べた。
なので私はダブルソフトを開ける。
ふと手をとめて、考えた。
ボールを取り出し、卵と砂糖と豆乳を入れる。計量はしない。
たぶん、いける。
めんどがらずに泡立て器は取り出す。電動ではないやつ。
きれいにまぜて、四つに切った食パンを浸す。思いのほかぐんぐんと吸い上げる。
フライパンには私比いつもの倍のバターを投入。ちょっと贅沢。

そこでまた手を止める。子どもたちの学校滞在時間は1時間。
きっと美味しい残り香がしてしまう。
再び液を追加。だいたいできっと大丈夫。パンもさらに追加投入。

バターたっぷりのフライパンに弱火でじっくり焼く。
焦げ目があるほうが好き。美味しそうに感じる。じわじわと焼かれるパン。

焦げ目大事

いい匂いがしてきたので、豆を挽く。ゴリゴリ、という音も慣れてきた。昨日開封したキリマンジェロ。香りに気持ちがほぐれていく。

フレンチトーストなら、コーヒーもたっぷり欲しい。

食器は、イッタラを探す。旦那さんに嫌味を言われるかも(食器たくさんあるのに?)とドキドキしてお小遣いで買ったイッタラのカップ&ソーサー。
なぜか、彼はお気に召したらしく、毎朝毎晩の食後に使われている。
なので「使おう〜」と私が思う時は、シンクの中にいたりする彼ら。

今日は一セット残っていた。

ナイフとフォークもだして。
コーヒーもセットして。
BGMは久しぶりに大好きなBTSを大きめの音でかける。

自分のために、準備する。好きなものに囲まれて。
ちょっと手をかけて。私だけの時間と空間。

好きがいっぱいの満たされ感

すずに目をやると、ぱたりと倒れるように眠っている。

平和だ。
離任式にまでいくなんて、成長しているじゃないか。

「がんばったね、私」

思い切って、声にだしてみた。

「うん、がんばった。よかったね」

一人の時間。
自分を大事にできる時間。

気持ちに余裕がない時、そんな時間をもつことができなかった。
一年前の今「これからは自分の時間をもとう」と習い事にいってみたり美容に力をいれてみたり。

子どもに元気がなくなって、そんなことは全くできくなった。
やりたい、と思えない。気力や興味が湧かない。

それが今、自分を労わろうと行動できる。
少しずつ、以前のように。

「家族が元気だからこそ、自分に手をかける気持ちが生まれる」自分なのだと知った。だから、前と違うのは「意図的に自分に手間暇かかけてもいいんだよ」と、自分自身を許せること。
そして、家族みんなが元気だからこそ、のありがたさ。

自分のために、最近食べたかったフレンチトーストを喫茶店でなく家で焼いて、1人味わう。
今はそう、そんな気分。
大好きなものに囲まれて。
犬の寝息と音楽に包まれて。

落ち着くとパタリと寝てた


ああ、子どもが、もう帰ってきてしまった。
さあ、おしまい。

でもなんだかすごく満足。満足。
ノートにも忘れたくない気持ちを書き記した。
手書きで紙に残したい、そんな思いもある。

「わあ、フレンチトーストだ!」
「おかえり。おやつに作っておいたよ〜」


うん、これも嘘ではないから有りとしよう。
みんなが平和に過ごす、コツもある。


最後までお付き合いありがとうございました。
では、また。

皐月

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