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金甌無欠、はてなの茶碗

当社もシステム開発を少ししている会社ですが、システム開発については結局人がやっている訳なので、ミスやエラーの存在は前提としています。つまり完全無欠のシステムは存在しない。宇宙旅行でも時々事故が起きますがあれは氷山の一角で、実際はバックで様々なトラブル、エラーがあり、それを必死で修正し、消しこんでいるのだと思っています。
ゆえにこの度の全銀データのシステムエラーは人が介入している以上、起こりうることだし、同様なシステムにおける過剰なデジタル依存の教師、反面教師になると思っています。

この件に関しては、当社も関連した金融機関の取引があり、確かに10日の振り込みはなく、11日に前日分が処理されていました。
また当社は9月決算なので、その中の銀行の担当者から「決算はいかがでしたでしょうか?」と催促の電話がかかってきました。締めて1週間なので概算しか…とお伝えして、いくつか質問に答えながら「さて、この度の送金システムのトラブルのお詫びはどういうのかな?」と思っていましたら、先方は聞きたいことだけ聞いて、「わかりました、正式に数字が出たらご連絡ください、ガチャリ」で、唖然としました。
ははあ、この度のトラブルはその銀行の問題ではなく、全銀ネット側の問題で、ワシらも被害者ですわ、という受け止めなんだろうな、ということは

障害当日の「おわび」も本気じゃないのだろう。

また政府の動きもノロいですね。水道、電気や道路、公共交通機関等が社会のインフラであることは長年承知だと思いますが、今やシステムも社会インフラであることは間違いないし、それを使えとデジタル庁を表に出して旗を振っているのが政府でしょう。
水道、電気、道路、公共交通機関が一日以上ストップしたら、政府は速やかに動くか、ポーズだけでも文句を言うというのがいつもの光景ですが、今回はノロい。全銀ネットから「サイバーテロではない」と言わせて、社会不安にならないよう、一所懸命に火消しをするのがせいぜいでした。

誰も発言しない二日間でしたが、本来言うべきなのは金融庁?総務省?デジタル庁?内閣府?誰もわからないことにはへっぴり腰。

マイナカードも使え使えの大号令ですが、何回もシステムトラブルが起きています。
さらに健康保険証とセット、口座紐付けとなった暁に、今回の全銀ネットのようなシステムトラブルが起きたらお手上げでしょう。

タイトルの「金甌無欠」とは、黄金の瓶かめに少しも欠け損じたところがない意味から転じて、物事が完全で欠点がない例えに使われる熟語。
外国からの侵略を受けたことがなく、安泰で堅固な国家や天皇の例えとしても終戦まではよく使われていたとか。

多分今の政府はDXを金甌無欠と思っている、いや思わせたいのじゃないですかね。実際はどこからともなく水が漏れる「はてなの茶碗」ですよ。

冷静に考えたらわかります。今のシステム、特に市場に出ているシステムはマイクロソフトの子孫と言っても良いでしょう。マイクロソフトだけじゃなくてアップルも含めて作り上げたシステムのやり方は、最初はβ版を市場に出して、その後正式版をリリース、市場で不具合が出れば、バージョンアップ。そういうやり方でした。最初は更新用にCDとか配布していましたが、ネットが主流になったら、アップデートが毎週のように行われるようになっています。つまり「金甌無欠」のシステムとしてリリースするわけではなく、「はてなの茶碗」としてリリースして、水が漏れたら(バグ・エラー)そこにパッチをあてるというのが普通のやり方です、という刷り込みをユーザーにしたわけです。
それが刷り込まれたから、今はどのような商売であっても、早期に市場に出して、トラブルがあれば差し替えればよい、というのが当たり前のようになっていますが、本当はそうじゃないでしょう。
自動車もかつてはリコールなんてめったになかったけれど、今は毎年目にするようになりました。事故が起きては大変だから金甌無欠のものとして車を開発していたのが、まあまあ他社が出したから、とりあえずはてなの茶碗でも良い、というようになってきている証だと思います。

車もEVやDX化が進んでいますが、それはまさにマイクロソフト型開発、市場提供、「はてなの茶碗」方式以外の何物でもありません。
今回の全銀ネットのトラブルは、政府が推し進めるマイナカード、電子政府もまた「はてなの茶碗」方式で行ってなにがわるいのか?と見せているように思います。

「はてなの茶碗」はその後、関白の鷹司公が妙味があると
「清水の 音羽の滝の 音してや 茶碗もひびに もりの下露」
と歌がつき、天皇もご高覧になり、最後は鴻池善右衛門が千両で借り受けるということになりました。

水道、電気、道路等と同様に今はお金、ネットもまた社会インフラ。そこがトラブルが起きないようにするのは政府の重大な責務であると思います。
結局は責任をいかに取らないかに頭が行くと、銀行は被害者で、開発のNTTデータも被害者、泣くのは孫請けの開発業者当たりでしょうか。

「振り込みの 全銀ネットの 落とし穴 ネットも日々に 泣かせる下請け」


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