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おむすび

私は毎週金曜日の「おむすびニッポン」という番組が好きです。方言同様に日本中それぞれの地域にそれぞれのおむすびがあるものだと感心し、またおいしそうなのに朝飯食った後なのに食べたくなります。共通しているのは「ごはん」を「握っている」ことだけで、あとは自由。その土地にあった具材を、その具材とお米に合う形で作るのが素晴らしい。
「食べたい」とは思うけれど、本当はその土地に行って食べるのが一番おいしい食べ方だということもよくわかりますね。

先日読んだ若竹千佐子さんの「かっかどるどるどぅ」。
若竹さんの東北弁もたっぷりですが、表紙にあるように「おむすび」もいいんですよね。この中で作られるおむすびはおしゃれなもの、高いものじゃなくて

「大皿にラップを広げてごはんを平盛りに敷いてそこに冷蔵庫から取り出した有り合わせの具材をのっける。梅干し、お浸し唐揚げ塩辛佃煮なんだって、焼鮭をほぐしたのだの沢庵のきれっぱしだって、とにかくその時あるもんを、あちこち点々と置いてそこにご飯をまた載せて、ごま塩をまぶす。ラップにくるんでちょっと握って出来上がり。これだとどっから食べてもいろんな味が楽しめるんだ。」

というものですが、これがしみじみお腹と心を満たすのがわかります。この本の装丁はそんな「おむすび」の後藤美月さんの絵。タイトル写真はその一部です。

後藤さんのサイトを見ると「あっ、持ってるわい」という本もありました。

で、印象的なシーンも多々あるのですがその一つを無断で紹介します。


「おらにも、わがんねな」
 突然に話を振られて吉野も何と言っていいのか分からない。起きるのもおっくうで寝転がったまましばらく考えて
「滅びるんだが、滅ばねんだが。・・・・・・そんどぎはそんどぎだ。なるようにしかならね」
 そのときはそのとき、成るようにしか成らないというのが、このごろ吉野の口癖だった。
 起き上がって、言葉を選ぶようにして
「んだども、人というのはぎりぎりのどぎに思ってもみね力が湧いてくるもんだ」
そうだった。伝えられることがあるとすれば、長く生きた分の経験と、経験から分かったことしかないのだ。
「振りがえって見れば、おらそんなごどが何回もある。おらはときたま思ったもんだ。この力を引き出すために困難のほうが寄って来るんでねがってさ。なぁに、こういうどぎは何回もあって、そのたんびになんとがしてきたのも人間でねが。人の力を信じていいんだと思う。腹をくぐって楽観すればいいんだ」
 ひと言ひと言区切って言う言葉には力があった。ひとり、またひとり起き上がって
「腹をくくった楽観かぁ」
「腹をくくった楽観な」
「覚悟するってことですよね。 希望を捨てるなってことですよね」
「あの具体的にどうすれば」
小さな声で誰かが言って、それに答えたのは保だった。

どうでしょうか、この前後読みたくなりますよね。

さて、先日クレヨンしんちゃんの最新作「しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 ~とべとべ手巻き寿司~」を見に行ったことは書きましたが、シールも貰い、後日家で「手巻き寿司」を食べました。

でも手巻き寿司に限らず寿司って結局おにぎりとは違って、具材が圧倒的な主役なんですよね。
おにぎりは主役は間違いなくお米、具材は引き立て役に過ぎません。さらにおにぎりの具材の方が多士済々なのは、「おにぎりニッポン」を見るとよくわかります。

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