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冷蔵庫の中の生き物

先日女房と昼飯を食べにデパートの食堂街に行き、美味しくいただきました。わざわざ行ったのは無料券(割引券)があったから。

その食堂街の1フロア下が催事場でよくある「おいしいもの市」というのをやっておりました。
幸い昼飯を食べたばかりなので、ついつい買ってしまうという誘惑は無かろう、と寄ってみましたが、これが正解。「おいしそうだな」と思うわりに胃袋から強烈な要求が上がってこない。「まあ今日はいいか…」という冷静さで売り場を廻っておりましたら、お酢屋さんがありました。

お酢か…。先日NHKの「小さな旅」で香川県の三豊市の話をやっていたのを見ました。

その中で仁尾酢という樽で作ったお酢屋さんが出ていたのを思い出しました。

丁度この「おいしいもの市」出ていた京都のお酢屋さんの店名も「中野」だったので、同じじゃないけど、木樽で作っているお酢だから少し話を聞いてみようと、普段空腹だったらお酢屋さんなんて…という所、満腹の我が輩は聞いてみることに。

これがなかなか面白かった。
とにかく全国メーカーのステンレスタンクでつくるようなやつは、本当の酢は1割程度で、後は人工の様々なものを混ぜて大半は水で割っているから、酢の中にある酵母ちょっぴりだし、多勢に無勢で酵母も元気がない。
一方木樽のものは水で割ったりしないから、とにかく酵母が多いし、活性化している。
飲めばわかる、と飲ませてくれましたが、私みたいなド素人でも、飲む酢じゃなくて普通の料理酢をなめても全然むせない。舌に残る味も酸っぱいだけじゃないのがわかる。
女房は飲むお酢も少し試していましたが、丁度高級梅干しのペーストの感じに同じと言ってましたね。

とりあえず料理酢を購入しました。先ずは野菜をピクルスにしてみたらいい、野菜を入れ替え入替で酢が水っぽくなったら少し足せばいいとのことでした、試した後に多分ネットで頼むんじゃないかな。

タイトル写真はそのピクルス。キュウリ、人参、大根、なすに山芋です。美味しかったです。

そのお店の方によると「お酢は常温で置いておいた方がいい」とのこと、「冷蔵庫に入れると酵母が休んでしまってよくない」と教えてくれました。そりゃそうだ、生きているものだから、まあ暑すぎるのは別として日陰で少しひんやりするような普通の温度で管理したほうが良いのでしょう。

そう考えると、冷蔵庫を開けると多くの食材は死んだものばかり、仮死状態もいるのかな?肉や魚はそうだ。生きている肉は入れませんね。
野菜はどうでしょうか?野菜は生きているのかな?
それぞれ時間がたつと水分が抜けたり、腐ったりして「やっぱり死んでいたのか、あるいは仮死状態なのか」と思います。

時間がたっても(賞味期限を越えても)食べられるものは、最初から生きていないものなのかもしれません。納豆もそのまま置いておけばガビガビになって、糸も引かなくなるから、これは納豆菌が死んだのか?大豆が死んだのか?どっちかでしょう。ヨーグルトを冷蔵庫に入れますが、ヨーグルト菌も冥途への道を進んでいることになるのでしょうか?

卵はどうだろうか。冷蔵庫に入っている卵は基本無精卵だから、細胞としては生きているといえるのだろうけれど、増えたりすることはないからやはり死んでいる状態と言えるのかもしれない。
とすると冷蔵庫の中の生き物はいないのか?

なんだか冷蔵庫が、台所にある巨大な雑居ビル、廃墟で朽ちていくビル、棺桶のように見えてくる。一番いいのは今日買って、今日食べるのが一番なんだけど。

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