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引っ掛かる

先日同窓会についてのからみで、絲山秋子氏の「神と黒蟹県」のことを書きました.

誠に面白いのですが、ストーリーだけでなくその文中にある「引っ掛け」が絶妙で、読んでいて「ブッ」と噴き出すようなところが何か所もあります。そういう引っ掛かりがなく、するするっと読み進める文章は、読み終わった後に振り返ると、なんだか読んだ足跡が真っ直ぐな感じで、読後感も同じ。引っかかるときは足跡がふらついていて、逆に心に引っかかるんですよね。

先日引用した「なんだかわからん木」でも主人公が町内の清掃奉仕に行く箇所がありますが、一部紹介。

「わたくしは小型の三角ホーを持ってぶらぶらと集合場所まで歩いて行った。各班の班長も、鋤簾(じょれん)やねじり鎌、移植ゴテなどを手にして集まってきた。ふつうに家にある草刈り道具にこれほどのバリエーションがあるという事実に感心する。道具を手にした人々が無言で歩いていればなんだか町民一揆のようでもあって、にゃあとした顔の山猫が「とびどぐもたないでくなさい」と言いながら心のなかに降臨する」

の山猫のくだりに爆笑。もちろん宮澤賢治の「どんぐりと山猫」で、この町内の皆様がどんぐりに思えてくる。
三角ホーとはこちらです。

鋤簾はこちら


こういう引っ掛けが随所にあります。
そういえば桂二葉さんという抜群に面白い落語家さんがおられます。随分上手くなったな~と感心するのですが、彼女を一番最初に拝見したのは2年前の「令和3年度NHK新人落語大賞」でした。丁度出かけようとしていた時についていたテレビで二葉さんの「天狗さし」が始まり、第一印象は「何ちゅう高い声じゃ」で第二印象は「天狗さしって何?天狗裁きじゃないの」でしたが。
幸か不幸か女房のお出かけの準備が手間取り、二葉氏の落語を最後まで見ることが出来てからで帰ることができました。
この落語聞かれている人はご存知だと思いますが、この中に「天狗のすき焼き」をアホな主人公が算段し、その中で「天狗をさばくちゅうても天狗裁きちゃいまっせ」という引っ掛けがあり、ブフッと噴き出してしまいました。動画の4分50秒あたりです。

このコンテストの他の落語家さんを全員聞いたわけではありませんが、彼女が優勝じゃろうと思いつつ、出かけたことがあります。実際優勝されました。

落語は全体の構成も大事でしょうが、その中に何か所かある引っ掛けに相当な工夫があります。それを見つけるのも面白いのです。

タイトル写真は二葉さんの手ぬぐいです。

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