機を見るに
朝から晩まで、実際には時差があるので昼から早朝までという方が正しいでしょうが、地上波、BSがオリンピック三昧なのにはウンザリします。
いつもの通常放送に早く戻って欲しい。中でも早朝、5時~6時台の番組が軒並み五輪には困ります。今は音を消してradikoで音楽番組を聞くという流れになっていますが。
とはいえ、五輪でやってるから見る競技もあるというのも事実。フェンシングは日本勢が大活躍ですが、高齢者になった今でもリアルで競技を見たことないし、テレビでも五輪以外で突き合うのを見たことないですね。
そういう意味ではマイナー競技にとって五輪は大事なんでしょう。他のマイナー競技もフェンシングがうらやましいでしょうね。
ただスピード感にはついていけないのです。剣道の剣さばきは目が追うことが出来ても(中学の頃剣道部でした)、フェンシングの剣の速さはまったくわからない。これは老人になった目の衰えかもしれませんが、いやいや以前、卓球の球が全く見えないということで、今でも卓球をしている先輩(70歳)に聞いたら、「球を追うのじゃなくて、玉のラインを見なさい」と教えてもらったことがあります。恐らくフェンシングも剣先だけ見るんじゃなくて、相互の身体全体の動きを見て初めて分かるんでしょう、そうじゃなきゃ緑や赤のライトでしかわからないですからね。
そこで思い出したのが武道で言う「先の先」、相手の打ち込もうという気持ちを認めて、相手が仕掛けないうちにこちらから動作を起こして打ち込んでいくことだと思います。恐らくテレビ桟敷の当方と違い、対戦中の選手は相手のその気持ちがくみ取れるのでしょう。
その「先の先」は決してフェンシングやブドウだけではないと思います。思い出したのが先日のなでしこジャパンのブラジル戦での谷川選手の決勝ゴール。
凄かったですが、一番感じたのは相手から流れてきた球をそのままのタイミングでロングシュートしたこと。本来なら、アディショナルタイムでもあるし、決められる体勢にきちんと持ち込んでと、ワントラップして、相手選手との位置関係を変えてとやりがちですが、彼女はそのままシュート。言われているようにブラジルのGKが体勢を作る前に蹴ったのものだから、頭上の球を唖然として見送ったように見えました。
私はサンフレッチェのファンなので、フェンシングはからっきしですが、サッカーは結構見ます。ただシュートは沢山打っても、意外とゴールというのは決まるものではありません。
それは守る相手との駆け引きがあるから。シュートのタイミングに合わせてGKはポジショニングするし、体勢を作る。さらにそれをしやすいようにDFが位置取りやチャージして、シュートレンジを狭めているからなだと思っています。
それでも決まるのは凄いなとも思うのですが、私は一つの決め方として相手が十分な備えをする前にシュートすることもあると思っています。それはわずかコンマ数秒のことなのだと思いますが、それが勝敗を分けることになると思います。
シュートする側は決めたいから、自分の万全の体勢に持ち込み、かつ確率の高いポジションで打ちたい、それを整えるのがコンマ数秒の遅れとなり、一方それはイコール相手に態勢を整えさせることになるのです。やはりこれが「先の先」でしょう。
ポルトガル・トルコからレッズに帰ってきた中島翔哉選手は、小柄でしたが、ドリブルで切れ込んで体勢を整える数コンマ秒前にシュート。これが上手な選手だったという印象があり、「先の先」のシーンが多かった選手の印象がありました(今はそういうきらめきはあまり感じませんが)。
ブラジル戦での谷川選手のゴールは、相手が態勢を整える前、自分が十二分になるコンマ数秒で蹴ったものだと思います。
まさに「機を見るに敏」コンマ数秒の決断が結果を生んだと思います。
一方「機を見るに鈍」という言葉があるとすれば岸田君でしょう。
総理には解散権という伝家の宝刀があるといいますが、過去海部首相のように解散できず野垂れ死に、麻生首相の様に玉砕した総理もいます。
岸田君もどうせ惨敗はするのだからぼろ負けよりちょい負けで済むタイミングもあったはずなのに、その宝刀が抜けなかった。まあ彼は国のリーダーとして何をやりたい、実現したいというものは持ち合わせず、現状対応型なので首相の椅子に一日も長く座っていたいだけだから、「機」なんてどうでも良いのでしょう。
イタリアのサミット仲間のイギリスのスナク首相、フランスのマクロン大統領、アメリカのバイデン大統領と軒並み選挙に向けてのタイミングを見間違い大敗(スナク)、あるいはレイムダック(マクロン)、ゾンビ状態(バイデン)と惨憺たる状況になったのは「機を見るに鈍」であったという共通点があり、それはまた岸田君の進む先でもありましょう。
「先の先」の反対に「後の先」というのもあります。それは相手の攻めを利用して逆に相手を攻める、相手の攻めをゆとりをもって受けるという明らかに自分と相手との間に圧倒的な力量差がある人が出来ること。横綱相撲という受けてから、自分の相撲に引っ張り込むというのがこれです。
岸田君は実力者、横綱とは思えないので、こういう相撲を取ると悲惨なことになると思います。
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