見出し画像

2019年見た映画 ベスト10

数えてみると、今年は映画やドラマなど映像作品を、169本見ていた。

今年はアベンジャーズにX-MENやスターウォーズといったアクションヒーローもののビッグタイトルが立て続けに完結したが、個人的にはどれも刺さらず、話題ばかり膨れている印象だった。
話題といえば、オリジナルのアニメ映画が多数公開された。海外で制作されたアニメ映画も多く、いずれも傑作揃い。ジャパニメーションなどと浮かれていられる時代は平成とともに終わった。
日本のアニメは、作品の多様性と作品数が強みだっただけど、それも今や昔。日本はアニメコンテンツにおいても、海外製品を輸入して鑑賞させていただくようになる日が近いのではなかろうか。

さて、僕が見た映画を振り返ると、今年は特撮ヒーローやアニメなどテレビシリーズの劇場版作品が輝いていたように思う。

10位 キャプテン・マーベル
男がつくった理屈によって女性が能力を発揮する機会を与えられず、不当に従属的な立場を強いられるガラスの天井。
テロへの恐怖から社会の構成員であるムスリムまで憎悪し、排除しようとするイスラモフォビア。
この2つの問題を1つに融合し、見事に現代的なメッセージのストーリーにした傑作。
身勝手な理屈で保身を続ける男の醜さに対して、何度も何度も立ち上がる主人公の姿は、震えるほどかっこよかった。
今後の活躍が楽しみでならない。

9位 映画 スター☆トゥインクルプリキュア 星のうたに想いをこめて
不思議な生き物に出会い、別れるという、ともすればありがちなストーリー。
だが、自分と相手の希望が一致せずに衝突しても、一致しないことこそが社会を形作るのだという展開に、多様性を掲げるスタプリのイズムが現れる。
同時に、「独り立ちする子供を見送る親の気持ち」=「成長し、アニメを離れていく子供を送り届けるプリキュアというコンテンツ」にも重なる。
自分たちの元を離れても、その成長を喜び祝おうという、児童アニメとしての矜持に感動した。

8位 ホテル・ムンバイ
アクション映画ばかり見ていると忘れがちな、銃の恐怖。銃がこれほど恐ろしいものかと、思わずゾッとする。
複数人の視点で状況を見せていく、徹底したリアリズム。
扇動され、富裕層への憎悪を燃やすテロリスト側の背景もキッチリ描くフラットな視点。
そして何よりも、テロリストに占拠されたホテルで、いつ殺されるかという恐怖に怯えながらもホテルマンとしての職務を遂行する、高潔な職業倫理感。
果たして自分が同じシチュエーションでどのような行動が取れるか、と考えてしまう。

7位 劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer
時が経つにつれ歴史が変容し、歪められて記憶されても、限られたリソースで完成させることを優先し、時には矛盾や飛躍が生じても、個別のシリーズに関連性がなくても、そのすべてが仮面ライダーという大コンテンツの歩んできた歴史なのだと飲み込んでしまう大怪作。
もはや清濁併せ呑むどころではない。こんなとんでもない映画、仮面ライダー以外の何ができるだろうか? アベンジャーズだってできないだろう。
クウガから追いかけてきて20年、恐るべき節目に立ち会えてよかった。

6位 トイ・ストーリー4
完璧な一作目から始まり、ついに3で完結と思いきや、まさかの続編。蛇足にならないかヒヤヒヤしていたら、これが驚くほど面白い。
まずは映像技術の進歩が素晴らしく、冒頭の雨の表現のリアルさに舌を巻く。
ウッディが必要とされなくなり、新しい生き方を模索する展開は、社会で必要とされるスキルや考え方が急速に変化していく現代ならでは。
おもちゃ視点の冒険活劇にビターなメッセージと新しいライフステージへの希望をを合わせる驚異的完成度の高さ。もう最高。

5位 シークレット・スーパースター
男女間の慣習的な不平等を打ち破るものは何か?それは勇気と、テクノロジーである。
機会の不平等を、インターネットというテクノロジーで補う展開は、現代にふさわしい、まったく新しいストーリー。
だがそこに通低するのは、母の愛と、チャンスを逃さないために退かない勇気という普遍的な要素。
社会的肉体的な力の弱いものが、勇気を振り絞り力強く立ち上がる姿。もう泣くに決まってるじゃん!

4位 劇場版ウルトラマンR/B セレクト!絆のクリスタル
アベンジャーズのようなブロックバスターが全盛期となり、ポケモンやゴジラなどのような日本のコンテンツが次々ハリウッド映画化されるなか、日本のコンテンツ産業はどうすれば生き残れるのか?
その答えはコレだ。
着ぐるみと遜色ないレベルのCGにより物理的制約から解放され、ケレン味あふれるアクションがリアルな質感を伴って可能になった。
そこにミニチュアを組み合わせて、CGのキャラクターがぶつかり、ミニチュアのビルが崩れるという新しい映像が繰り広げられる。
サンダーバード ARE GO にはなかった、アニメ的なモーションを加えたことで、日本独自の映像を実現している。
伝統芸能と言っていい、日本らしさを高次元で融合したこの映画は、シン・ゴジラの後を継ぎ、日本の特撮の方向性を示したエポックだと思う。

3位 ゴジラ キング・オブ・モンスターズ
新しい概念の外来語を翻訳する際に、原語のニュアンスが失われないように、あえて翻訳しない方法がある。スポーツなどで、肉体的と言わずにフィジカルと言うような感じか。
怪獣をモンスター=獣と呼ぶと、怪=あやかしのニュアンスが失われてしまう。その意味でパシリック・リムで怪獣をカイジュウと呼ぶのは、非常に理にかなっていた。
そこをKOMでタイタンと呼ぶ発想には思わずうなった。怪獣の人知を超越したニュアンスを含む、素晴らしい訳語だった。今後の怪獣のスタンダードになるのではないか。
怪獣のニュアンスを実によくわかっているだけに、その描写もアドレナリン出っぱなしである。
生物の範疇を超えた怪獣たちの暴れっぷり。死力を尽くすが到底及ばない人間たち。暴虐の限りを尽くすキングギドラ。ひれ伏すすべての怪獣をにらみつけるゴジラが高らかに吠える! バーン! KING OF MONSTERS!
今年一番エキサイトした映画。

2位 ジョーカー
社会を富裕層と貧困層に分断して、両者の間でコミュニケーションが取れない様子が実に現代的。
アーサーは暴動のきっかけとして祭り上げられるけど、扇動したわけではないし、大衆は主人公の孤独や生き辛さを知らない皮肉。
どこまでもアーサーは道化似すぎず、彼の人生で何一つ成し遂げていないというモノすごい悲劇だし、離れて見ると意図せずに分不相応なキリストに仕立てられる喜劇。
キリストとして蘇るジョーカーとバットマン誕生の瞬間を並行し、バットマンをサタンに見せるニクさ。
価値観を逆転させながら大衆は誰もジョーカーを理解していない突き放し方が最高。
弱者へ犠牲を強いる社会を放置する層の批判としても、徹底的に誰にも理解されない悲劇としても、どこから見ても傑作。

1位 バジュランギおじさんと、小さな迷子
これは本当に大傑作。生涯ベスト級の映画だった。
世にあふれる対立を超えるものは何か。それは愛である。
相手に愛をもって、一貫して誠実に接することで、周囲の人の心を動かしていく。
誠実さの美徳をここまで直球で見せてくる映画を、今まで見たことがあっただろうか。
嘘をつけないおじさんと話せない女の子の組み合わせも、インドとパキスタンの関係も、縛りが大きいので最後の感動がものすごく大きくなる。
あと、おじさんのスターオーラが半端ない。出てきただけでスクリーンから溢れ出るパワー。
一言も話さずに感情が伝わってくる女の子の演技もとんでもなくすごい。
ストレートなパワーがあふれる、美しい映画だった。

来年はMCUがフェーズ4に突入するし、DCEUはョーカーのような過激な描写を強調してMCUとの差別化を図るのかな?
映画は当然時代に左右されるので、社会問題があふれる昨今、まだまだ面白い作品が出続けるのだろう。
それがいいのか悪いのか、なんとも言えないところだけど。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?