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熊本のあさり

1/22日のTBSの番組「報道特集」で中国産のあさりが、熊本産のあさりと産地偽装をされて全国に流通しているというニュースが流れました。ご覧になられた方もいらっしゃるかと思います。

熊本では夕方のローカルニュース番組で連日放送されています。

(このタイムラグは何なのでしょうか・・・。県が事実確認をしていたのでしょうか。)

一昨日は県知事があさりの産地偽装について徹底的に改善していく旨を記者会見で発表していました。

今回は気付くきっかけとなったTBSの報道特集を見て知ったこと、感じたことを描かせていただきます。

中国におけるあさりの漁獲量は2019年のデータで396万トン日本国内のあさりの漁獲量は年々減少してきており、2020年4400トン規模が全く違います。

番組が都内のスーパー30店舗で調べると熊本産のあさりが21店舗で売られていたそうです。

愛知県は16年連続であさりの漁獲高日本一なのにも関わらず、地元の愛知県でも熊本産のあさりがスーパーで売られているシーンが流れていました。もう流通停止処分になっているのですが、熊本県が流通停止処分をする前までは、熊本のあさりが日本を席巻していました。愛知のあさり漁業関係者の人はずっと自分たちのあさりが産地偽装のせいで不当な扱いを受けていたと感じていたそうです。


報道特集では、衝撃的なシーンが放送されていました。


コンテナにぎっしりと積まれた袋にあさりが入っていました。コンテナから降ろしたあさり入りの袋をトラックに乗せて干潟へ運び、それらを干潟にあさりを撒き始めあさりの鮮度を回復させる蓄養という作業をしていました。(これが今回の偽装の肝となります。)
トラックは一台だけではなく列を成して干潟に入って行っていました。干潟には海中道路が舗装されているので干潮のときはこの上を車で走っていくことができます。(最初このシーンを見た時は、「蓄養」というワードを知らなかったのでなぜあさりを海に戻しているのか理解できませんでした。)

TBS報道特集のディレクターさんは3年前から取材をしていたそうです。
そこで産地偽装に関わっていた福岡の水産会社の元社長がインタビューに答えていました。
この方、産地偽装に関わる脱税の疑いで逮捕され、現在は保釈されているそうです。偽装の手口を全て話してくれていました。産地偽装をしたことは許されないことですが、消費者へ申し訳ないという気持ちから全て話す決意をしてくれたこの元社長さん。

間違ったことをしても人はやり直していけるということを教えてくれている気がします。

現在はあさりの産地偽装撲滅に向けて協議会を設立し、活動しているそうです。

話してくれた内容は、以下のようなものでした。

あさりの鮮度を回復させる蓄養。この蓄養期間が一番長い産地を表記して出荷するそうなのですが、少し蓄養していただけで熊本産あさりと表記して全国に流通させていたとのことでした。1週間で鮮度は回復するが、それ以上蓄養してもどんどん鮮度は落ちていくとのこと。

原産国より長い時間蓄養したものは輸入したものでも国産と名乗ることができるそうです。(和牛も出身地ではなく、飼養された期間が一番長い地域を冠した和牛となります。)
事実と異なる「蓄養記録」を提出すればそれで流通させることができたと言っていました。

熊本はかつて全国でも有数のあさりの産地だったそうで(全盛期の1977年におけるあさり漁獲高は6万5000トン)、天然の熊本産あさりは現在とても希少なものになっているとのことでした。

本来であれば貴重なものになっている天然熊本産のあさりが全国のスーパーを席巻するようなことはありえないんですよね・・・。かつての産地だったから設備は整っているし、既成事実もあることが今回悪用された一因だったのでしょうか。

業者さん曰く、国産のあさりを売ってもなかなか売れないようです。加えて中国産、韓国産のあさりは売れないようで、扱ってくれる卸問屋もないそうです。

商材であるあさりが国産すらも売れず、海外産も売れない状況に苦しんだ末、安く輸入したあさりを偽装して売らないと利益がでない構造になっていたそうです。生活のために産地を偽装していたと話してくれていました。

あさりを流通させる業者さんの苦しみは想像の域を出ませんが、大変辛かったのだと思います。しかし、産地偽装が許されるわけではありません。

農林水産省が調査に乗り出し97%が産地偽装だという結果が出たそうです。
農林水産省では、今後関係機関と連携しながら、あさりの表示の適正化に取り組んでいくと発表していました。
2005年に産地の適正表示についてガイドラインが公表されていたようなので、業者さんは「知らなかった」では済まされない事態となりそうです。

消費者はスーパーで表示されているものを見て判断するしかありません。産地を偽装されていたら気づく術がありませんよね。これが氷山の一角だとしたら怖いですよね。何を信じればいいのかわからなくなるぐらい根底から信頼が揺らぐ事態となりました。

また、真面目にあさり漁に取り組んでいる人が風評被害や金銭的な被害を受けるのがあまりにも不憫です。

改善されることを切に望みます。





 


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