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#14 情報活用能力って・・・

■学校現場は情報洪水

国主導で教育に関する新しい動きがあるたびに、文科省や教育委員会を経由して学校現場にいろいろな紙データと電子データが投下される。

新学習指導要領が告示された時、高校の教科「情報」にからむICT活用(新しい時代へ向けてどう対応するかの趣旨説明、情報活用の事例)について、おびただしい量の資料が送られてきた。

これは教科情報に限ったことではなく、全教科について同じことがいえる。

そのたびに情報洪水に飲み込まれそうになり、「これって、学校や教師の情報活用能力が試されているのか?」と思ったほどだ。

バケツをひっくり返したような情報の集中豪雨を浴びるのだ。

情報活用以前に大量の情報を整理することに追われる。

文科省は「できない、知りませんなんて言わせませんよ。

学校現場にちゃんと情報を与えました。あとは自分たちでしっかり読み込んで理解し、適切に実行することだからね~」(そうは言っていないけど)、いわばアリバイづくりをしているのではないかと勘ぐるのである。

学習指導要領総則とその教科編を読み込んで解釈するだけでお腹いっぱいになる。

私の脳のキャパの問題もあるかもしれない。

これまで10年間にわたって文科省の説明会に出席して真面目に聞いてきたが、プレゼンのスライド1枚に200~300文字程度の説明文が書かれていることがある。

それが数十ページも続くのだ。

話を聞きながら目で文字を追うとなると集中できない。

結局、何を言いたいのか分からない。

きっと、どれもこれも大切で、情報の優先度や重要度に軽重をつけるのが難しい・・・・・

「情報活用能力ってなんだよ!」と心の中で叫ぶことが何度もあった。

もう高校現場を離れたから、「情報」とは縁が切れるだろうと高をくくっていたら、大学の教職課程でも「情報」の免許取得を目指す学生と向き合うことになった。

昨年の11月に、大学入学共通テスト「情報Ⅰ」の試作問題と正解表が公表された。

「ボク、知らないもん」とは言えない状況になってしまった。

私の大学でも文系大学としてのデータサイエンスに力を入れていくということで、カリキュラムも含めて学内でいろいろなプロジェクトが動き出している。

■学校デジタル化  特定分野の才能の支援

政府が推進する「デジタル田園都市国家構想」の基本方針において、2026年までに、エンジニアやデータサイエンティストなどDXの推進を担うデジタル人材を230万人育成すると定めている。
間に合うのか?

とにかく、社会全体でデジタル人材の育成を加速させなければ、日本はますますICT後進国になってしまう。

先を見据えれば、根底を支えるのは小中高校、大学での教育が要になる。

文科省は「学校デジタル化-特定分野の才能の支援」を目的に、令和5(2024)年度度予算案の一般会計に、前年度比0・2%増の5兆2941億円を盛り込んだ。

学校のデジタル化に関連して、1人1台端末の活用を支える「GIGAスクール運営支援センター」の機能強化を図ることや、ヘルプデスクの設置やネットワークトラブルに対応することが示されている。

また、都道府県が民間事業者に業務委託する費用の一部を国が補助し、教員の校務支援システムの実証研究へ着手することや、クラウドに対応した新たなシステムの入れ替えを促すという。

民間企業がDXへ動き出し、とりあえず設備投資して失敗している事例も増えている。

いい機器を揃えれば上手くいくというわけではない。

やはり活用するヒトが要となる。

人材、人財だ。

■情報活用能力ってなんだ?

文科省は「情報活用能力調査」の結果の一部を公表した。

調査は令和4年の1~2月、CBT(コンピュータ試験)で実施されたもので、小学5年生、中学2年生、高校2年生の計1万4,219人(479校)が調査対象となった。

具体的には、コンピュータ画面で、指定されたとおりに保存先フォルダを選べるかを問う問題の正答率は、小学生が51.5%、中学生が76.1%、高校生が83.5%(全体平均69・8%)だったという。

※キーボードでの「文字入力の課題」「調査問題」「質問」の三つが出題され、調査問題は一部を除いて非公表)

環境問題について書かれたウェブページを読み、その内容に答える問題の正答率は小学生が31.5%、中学生が58.4%、高校生が73.0%。

長年、商業高校で情報処理を教えてきた者として、「指定された保存先フォルダを選ぶ」ことを情報活用能力と捉えるとは思ってもみなかった。

高校入学したての1年生に、4月当初の授業で、フォルダの目的と構造を教え、それが記憶領域のどこに存在するか、フォルダに適切な名称を付けたり、アクセス権限がどうなっているか・・・・等々、一度教えたら生徒は理解するものだと思い込んでいる自分が甘いのか。

多くの場合、中学校の既習事項なので確認程度で終わらせていて、不都合を感じたことはなかった。

私自身、有能な生徒たちを扱ってきたということか?

学校間格差があるのかもしれない。

大学で教えていて感じることは、総じて専門高校の生徒(特に商業高校出身者)の情報活用能力は突出して高い。

普通科出身者に対して「教科情報はどれくらいやった?」と質問すると、大半が「1年生の時にちょっと・・・・」ということで、記憶が曖昧な学生が多い。

実際には、Wordで文章を書く、Excelで作表・グラフをつくる(覚えている関数はSUM、AVERAGEで、IFになるとちょっと・・・・・)

進学校の場合、入試科目(主要5教科)への対応を考慮すると、教科としての情報に多くの時間は割いていられないということなのだろう。

現高校1年生が対象となる2025年度共通テストでは、科目変更により「数学C」が復活する。

国公立大学をめざす生徒は文系であっても数Cを履修することが実質的に必須となった。

つまり、理系のすべてと、国立文系の9割以上が数Cを学ぶことになる。

数Cは、「応用数理の観点からコンピュータを活用して、行列と線形計算、いろいろな曲線、数値計算や統計処理について理解させることを通じて、知識の修得と技能の習熟を図り、事象を数理的に考察し処理する能力を伸ばす」となっている。

ああ、やっぱりデータサイエンティストの養成ということか。
ならば、解決策は、以前にも書いた「10歳の壁」を超えること、すなわち、国語・算数における抽象概念の把握、読解力の育成だろう。