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#256 読書日記40 持たない時代の生き方

『持たない時代のマーケティング ~ サブスクとシェアリング・サービス』
高橋広行・財津涼子・大山祥平/同文館出版

社会のフレームワークが急速かつ大規模に変化している。
鈍感な私ですら、いろいろな場面でそう感じるようになった。

マーケティングの手法も大きく変わっていくのだろう。
マーケティングを専門分野にしてきたチンパンジー先生ゆえ、改めて勉強しようと考えている。


■コト消費と循環型社会へ

「モノ消費」から「コト消費」へシフトするということは、「見えない価値をどう提供するか」ということをテーマにして新しい時代に適応したマーケティングのあり方が必要になってくるというお話である。

その物語をつくるのは、政府や企業任せではいけない。
家計を担っている私たち自身の態度にかかっている。

現在のサブスクリプション・サービスもシェアリング・サービスも、「モノを持たない社会」が進行していくことを象徴している現象だ。

高度経済成長期をきっかけにモノが大量生産・大量消費されることを体感してきた世代にとっては隔世の感がある。

持たない」時代に突入した今、売り手は別な次元でビジネスを展開しなければならない状況になっている。

今や、ネットに繋げられるデバイスさえあれば、サブスクを利用していつでもどこでも何度でも繰り返し「聴ける」「観られる」「読める」わけで、しかも、クラウドに保存しておくことができるので、記録媒体を「持たない」という状況だ。

一方のシェアリングも、古くからあるレンタルとはシステムが異なる。
自転車・バイク、車、傘、洋服・和服、タクシー、書籍、音楽、空間(駐車場、民泊、会議室)、スキル(家事代行、育児、介護、教育、観光)など多種多様で、「えっ!そんなものまで?」と驚くこともある。

まだこの世に存在しない、名前も付いていないようなニッチな市場が潜在しているのだろう。

そのうち、下着もカツラも入れ歯も・・・・・それは勘弁してくれ

教員不足で悲鳴をあげている学校も、複数校で教師をシェアするのもありではないだろうか。
任命や雇用形態(労働時間と賃金)の問題さえクリアすれば可能なはずだ。

ビジネスも自前の社屋やオフィス、店舗を持たない形態が急速に拡大している。
倉庫だけで成立するビジネスも堅調だ。

個人のレベルでも可能な限りモノを持たないシンプルライフミニマムライフを目指すミニマリストが増え、私のようなマキシマリストはやがて絶滅危惧種に指定されるのかもしれない。

家に最低限のものだけあれば、押し入れやクローゼット、シューズラックもダウンサイジングできる。

ネコに家具やソファーをボロボロにされるストレスからも解放される。

スマホとアプリの進化によって現金を「持たない」状況も拡大している。
代金決済は、生体認証(指紋、光彩、声紋、体内ICチップなど)という時代も来るのだろう。

モノを持つ以外に選択肢のなかった時代は、モノを選択するための情報時間が必要だった。

買った分だけ身の回りにモノが増え、整理することに時間とエネルギーが奪われ、処分費用もかかったりする。

サブスクやシェアリングの躍進は、先行事例の成功により、新規参入する企業は今後も増えていくのだろうが、この分野の研究はまだ少ない。

SDGsは「絵に描いた餅で2030年はゴールにならない」と言われながらも、シェアリングとサブスクは少なからず循環社会に貢献しているはずだ。

問題は、こうしたサービスは「個人の物欲・所有欲=これは私だけのお宝」と対局にあること。
新たなサービスや「持たない」ことで充足感が得られるのかということだ。

コレクションしたものをニヤニヤ眺め、うっとりしながら頬ずりしたり、さすったりして至福の時を過ごすことも必要な気はする。

整理整頓しましょう

タイムパフォーマンスを追求することに異論はないが、無駄な時間もあってこそ心に余裕が生まれるのではないだろうか。

いずれにせよ、「時間は価値」というのは重要なキーワードだ。

一方、モノに対する価値観として、「ホンモノ」や温もりのある「手作り品」を生涯にわたって使い続けたいという人もいるだろう。

そのためには、モノを作り続ける担い手がいて、それで飯を食っていけるだけの収入が保証されなければ存続できない。
ハイテクと同時にローテクも大切にすべきだろう。

よいモノが循環する社会」になることには賛成だ。

ただし、「持たないは正義」を振りかざして、極端なほうに振れるのは多様性を否定することにもなる。

いずれにせよ日本の人口減少はこのまま続けば、40年後には8,000万人台になるのだから、経済規模も縮小し、マーケティング戦略は、これまでのような消費者の口を無理矢理こじ開けて「それ食え!やれ食え!!」という戦略ではもたないだろう。

生き方、あり方に関わることなので、「持つこと」「持たないこと」について考えを深めたい。