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#101 ヒグマは冬眠したかな?

ヒグマとサケと僕

写真は、北海道の日本海沿岸にある小さなまちの歴史資料館でヒグマと記念撮影したときのもの(令和4年撮影)

向かって左がヒグマ、ヒグマに咥えられた鮭、右がチンパンジーと呼ばれている私。

ヒグマの体格は個体差があるものの、ツキノワグマよりも遙かに大きい。

北海道で過去に確認されたヒグマの最大記録は身長2.5m、体重450kg。

戦ってどうにかなる相手ではない。

猫パンチならぬ熊パンチ一発で頭蓋骨が粉砕したり、首や足が飛んでしまったというケースもある。

サバイバルナイフを刺しても鋼鉄のような皮膚で刺さらないし切り傷にもならないという。

走力は約60㎞/hだからウサイン・ボルト(44.6㎞/h)でも、かけっこしたら負ける。

今年は、農作物被害だけでなく人身被害が頻発しメディアで大きく取り上げられた。

駆除対応している自治体やハンターに対して、野生動物保護団体や動物愛に溢れた人が何度も苦情電話したり、業務に支障をきたす迷惑な長電話、誹謗中傷メールやDMを送りつけたりして世間を賑わせ、全国ニュースでも取り上げられていた。

環境省「人身被害」統計

私が住む北海道の札幌市(人口197万人)も、ここ数、市内各所でヒグマが頻繁に出没し人身被害も発生している。

10年前、私と同僚が近くの山へ山菜採りに入った際、同一時間帯にその山の奥で山菜採りをしていた男性がヒグマに襲われ、土に埋められたという凄惨な事故があった。

今でも春夏の登山はよく行くが山菜採りには行かないようにしている。

ドングリやヤマブドウが実る季節は、冬眠前に脂肪を蓄えるヒグマの活動が広範囲化する(一日50~60㎞程度移動するらしい)し、しかもヒグマが人間を食する例が何件かあったので、あえて餌食になるような行動はしたくない。

札幌は都会でありながら土地の総面積112,126 haに対して林野面積は68%の68,247 haもある。

しかも、街の真ん中を流れる石狩川の河岸には背丈の高い草木が生い茂っている所もあり、ヒグマが身を隠しながら移動するには絶好の環境となっている。

熊ファーストの環境づくりをしているわけではない。

あくまでも緑豊かな自然の景観を大切にするという考え方だ。

熊が行動範囲を広げ人里に出没している原因はすでに専門家が情報発信しているので、ここでは省略するが、私自身、何度も緊急対応したことがある。

高校勤務時代(8年ほど前)、学校近辺にヒグマが出没し、行政や警察と連携して生徒の下校を止めたことがある。

ほどなくして、猟友会所属の20代女性ハンターが仕留めたのだが、その際も北海道内外から多くの苦情、批判が寄せられた。

子熊を引き連れていた目撃情報もあった。
その母熊であろう個体に狙いを定めた女性ハンターは、引き金を引くことを一瞬ためらったという。

「躊躇していると、自分や猟友会の人々が襲われ、さらに住民に被害が及ぶかもしれない」
いろんな思いが交錯するなか引き金を引いたのだろう。

ハンター達は市民の安全を守るために危険と背中合わせで活動しているのだ。

地域住民は被害実態や日々の恐怖を訴えると同時に、何とか女性ハンターをかばおうと弁護に回っていたのが印象的だった。

私も新聞社の取材に対し、人命優先はやむを得ないとのコメントをした。

私の住まいは広大な森林、山岳地帯の麓の住宅街にある。
ここの住民は春から晩秋まで常に熊出没情報に注意を払っている。

市内の学校にも緊急用の「くまメール」が入るようになっている。
都会でありながらヒグマはそれくらい身近な存在だ。
とは言え、めったやたらと出没するというわけではない。

幸い、今年は11月30日以降の熊出没情報は途絶えている。

北海道は開拓時代より「緑豊かな大地」を守りながら、また、アイヌ文化における動物信仰の心も重んじながら、野生動物(ヒグマ、エゾシカ、キタキツネ、エゾリス、エゾモモンガ、エゾシマフクロウ、オオワシ等々)と共存してきたと言える。

先日、早朝に近くのコンビニへ買い物へ行くために歩いていたら、道路の真ん中に巨大なエゾ鹿が現れて、度肝を抜かれた。

角の先端までの高さも含めると、馬より大きく見えた。
こんな大きな鹿は見たことがないのでチビリそうになったほどだ。

いや、少しだけチビったかもしれない・・・・

「生物多様性」や「野生との共存」を学校教育でも学んでいるなか、北海道全体が厳しい局面を迎えている。

野生動物たちをいかに人里へ寄せつけないか、各地域で苦悩している。

もちろん、どこの市町村民もヒグマを無闇に殺生することを望んでなどいない。

人命を優先しなければならない事態が増えている以上、「駆除もやむなし」と考えるのが道民の感情だ。

狩猟免許所持者の高齢化と後継者不足も深刻な問題になっている。

中学校や高校では、探究学習の一環としてSDGs、環境保全の取り組みとして、校外活動でヒグマが身を隠せないよう草刈りをするといったことにも取り組んでいる。

環境整備の方法、生ゴミの出し方など、私たちができること、自らの手でやらなければいけないことがまだまだありそうだ。

先週から雪が降りはじめた。
ヒグマたちは穴ぐらに入って眠りについたのだろうか。

https://www.photo-ac.com/