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本やビデオで学ぶ人気バンド再結成術② LUNA SEAのTOKYO DOME公演

 ロック誕生以降、数多くのバンドが解散~再結成を行ってきているが、成功するためにはノウハウが必要。
 私も過去にロックバンドのマネージメントをし、数年後に再結成も担当、様々な問題・課題を解決・克服して幸いにも成功を手に入れた。
 その時に参考になったのは私がこれまでに見て・読んでいたビデオや書籍であった。
 ここではバンド再結成を担当する読者に向けて、私が有益だと感じた情報をお届けしたい。


この公演は

 2007.12.24 in東京ドーム
 GOD BLESS YOU 〜One Night Dejavu〜

 私がこの公演を知ったのはこの年の夏に入った頃だった。
業界の同僚から”LUNA SEAのHPにカウントダウンをしている時計がついて、8月の皆既月食の日にゼロになるようだ”という話を聞いた。
 しかし、そのカウントダウンが何を指しているのか、当初は何も発表されず、この12月の一夜限りの再結成公演が発表され、その模様は2008年にNHKでライブが放送され、そののちにはリハーサルにカメラが入ったドキュメントも放送となった。

選曲と演出による完璧な距離の詰め方

 私はこの放送を見るまでほとんど”LUNA SEA”というアーティストの情報を持っていなかった。
 もちろん、メンバーの名前や代表曲などは知っていたがライブに足を運んだ経験もなく、どんなライブをするバンドなのか知らなかった。
 2000年の解散から7年が経過。各自が別々に音楽活動をしてきた彼らが再びバンドとして東京ドームのステージに上がるということが並大抵のことではないのを私は痛いほど知っている。
 吐き気を催すほど緊張し、逃げ出したくなる気持ちを抑えてステージに立つ事を彼らは知っていたのだろう。これまで7年間、それぞれのメンバーが音楽活動を続けてきただろうが、その活動の規模と東京ドームでは何もかもが違いすぎるのである。
 どれほど準備してもやり足りないと思えるほどの不安と戦い、ステージでどう立ち振る舞えるのかを計算した完璧なライブのスタートであった。
 7年待った爆発したいファンと、7年ぶりだから失敗できないメンバーたちのバイオリズムが一致する瞬間までの運び方が見事であった。

オープニングから1曲目の計算が見事

 数年ぶりの再結成、東京ドームの1曲目をどう見せるか? お祭り感覚であれば派手な照明でスタートダッシュをするような人気の高速ナンバーを持ってくるのかもしれない、しかしLUNA SEAは違った。
 スクリーンのカウントダウンの映像が『2007』になると背景の月が満月となり、ステージ後方からの白い照明の中メンバーが登場するが逆光でよく見えないまま暗転。 彼らはロケットスタートを選ばなかったのである。
この日彼らが1曲目に選んだのはテンポこそ160BPMとやや早いが決して派手ではなく、落ち着いて聞こえる「LOVELESS」。
TVのバラエティなどにも顔を出すようになっていた真矢は髪を伸ばし、赤いフレームの艶やかなドラムセットを披露。その姿はロックミュージシャンそのものであった。
 サングラスをかけて登場したのはRYUICHIとINORAN。
 Jは赤いベースを下げて登場。
 そしてSUGIZOがトリプルネックのギターで登場。
 SUGIZOのギターから「LOVELESS」のイントロが奏でられると暗がりのステージが徐々に明るくなるが、濃いスモークもあり全景がまだ見えない。
徐々にスモークも晴れ、メンバーが見えてくるが、ほぼ立ち位置から動く事なく演奏するメンバー。
 この映像を見たときに私は思った『なるほど』。完璧なスタートである。
 なぜ、この曲が1曲目なのかお分かりだろうか?
考えてみてほしい、メンバーたちは”LUNA SEA”というバンドから7年間離れていたのである。
その後、メンバーはそれぞれ音楽活動を続けてきただろうがLUNA SEAを超える規模で活動できていたメンバーが何人いるだろうか? (あのミック・ジャガーでもソロ活動ではローリング・ストーンズの規模にはならないのである)
 LUNA SEAのファンの前に7年ぶりに立つ彼らはどんなパフォーマンスをしなければいけないのか?
 5万人の視線を感じ続け、大きく振りかぶった手で客席を指差し、ステージ左右の走り込みを駆け抜け、高揚していながらも常に冷静な自分を持ち演奏しなかればいけないあの感覚を7年ぶりに一晩だけやらなくてはならないのだ。
 そのために選ばれたこの1曲は大きなうねりの曲で、メンバー全員のビートを一つにし、ステージに立つ自分達を”整える”目的で選ばれたと思う。
5万人のファンの中に放たれた5人がゆっくりとドームの空気で呼吸しながらファンに向かって一斉攻撃を仕掛けるチャンスを待っているのだ。
 そして、7年待ったファンの爆発したい気持ちを焦らすようなイントロのギター。 じっくり聞かせるようなその曲調はファンの叫びたい気持ちを抑えさせる効果があった。
徐々に明るくなっていくステージはファンをギリギリまで爆発させず、次の曲まで運ぶ役目を持っていた。

爆発の2曲目

 2曲目は「Dejavu」。
真矢ドラムからSUGIZOのギターへと続いた瞬間、ステージ最前列から何本もの火柱があがり、メンバーが左右のステージに走り出す。
 ”LUNA SEA”による一斉攻撃の開始である。
 もう5万人の客席は大騒ぎだ、「静」のステージから「動」のステージに変わり、メンバーがステージを大きく使い始めるのである。
それぞれのメンバーが客席のあちこちに目線を送り、指を差す。
 2曲目で走るメンバーのエネルギーになったのはここまでのファンの熱い想いなのだろう。メンバーたちは7年のブランクを経て正にLUNA SEAとしてTOKYO DOMEのステージに蘇っている。もうどんなに格好をつけても恥ずかしくないし、7年のブランクなんて忘れているのかもしれない。
 途中、下手のスピーカー前でJとSUGIZOが顔を見合わせながら演奏しているシーンがあるが、”自分達のさまを5万人に見せつけている”意識が溢れ出ている。それほど自信にあふれ、ファンに応えようとしている彼らの姿がこの映像で見ることができる。

MC中にサングラスを外す

 「静」「道」と続き舞台は暗転。
 メンバーが呼吸を整えたタイミングで再びステージが明るくなるとRYUICHIが語り始める「2007年12月24日・・・」
 と、ここでRYUICHIとINORANがサングラスを外すと大歓声。
すかさず「お前ら、会いたかったぜ!」で再び大歓声。
 もう、こうなったらLUNA SEAの勝ちである。最後まで何をやっても大歓声。
 このMCタイミングでサングラスを外す事まで計算しているとしたら完璧である。(きっと計算されていると思うが)
 ライブが始まってここまででほんの10数分。たった2曲でファンをノックアウトできている。

彼らは戦っていた

 後年、私もとあるバンドの再結成を手掛けることになるのだが、この映像を見て、再結成でこんな完璧なライブをできる事が信じられなかった。
 再結成のステージに上がったメンバーが客席を指差しポーズを決めるまでにどれほどの時間が必要だろう?
 静から動へとシーンを切り替えたとき、左右のステージに走り込めるだろうか?
 喉から絞り出すように「会いたかったぜ!」と叫べるだろうか?

 解散後の”大舞台からのブランク”がステージ上がるメンバーの気持ちを萎縮させるだろう。そして、かつての心を取り戻すのにはそれなりの時間が必要だろう。そう思っていた私の考えはこの映像で崩れ去った。
LUNA SAEは1曲で取り戻しているのである』
 
この映像には見事なメンバーへの心の計算とファンに対してのリスペクトが詰まった信じられないライブだった。
 彼らは必死に演奏している。戦っていると言ってもいいほど必死に演奏している。
自分の持てる全てを出し切ろうとしているかのように、走り、歌い、演奏している。
 ベテランになり、ニヤけた顔で2時間演っているのとは全く違う。

嘘だと思うならこのビデオを見てみるといい。
こういうライブができるからLUNA SEAは成功しているとわかるはずである。

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