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雄山の作品の変遷とシリーズのご紹介~定番編~

突然ですが皆さんは五月人形というとどんなものをイメージしますか?
床の間に飾ってある、大きな鎧飾りでしょうか?横に付いている太刀で遊んだことのある人もいるかもしれません。

恥ずかしながら僕は実家が工房なのに、実際に働くようになるまでほとんど工房には出入りしたことがありませんでした!なので太刀を振り回して遊ぶし、鎧は動きそうで怖いなというイメージがありました。

ところがどっこい。
実際に工房に入って、さまざまな商品を見て成り立ちを知っていくと、五月人形も結構進化を遂げていて面白いんですよ!
なので今回は、どんな成り行きで作品ができてきたのか、作品の変遷を踏まえて紹介できればと思っています。

各シリーズはこちらにありますのでぜひご覧ください!

甲子之シリーズ -きねの-

いわゆる五月人形というイメージの作品はこちらのシリーズになります。古きよきを大切にする方々に支えられて、古いものだと50年以上愛されている作品もあるんです。
雄山の作品はここから始まったと言っても過言ではない、雄山の原点とも言えるシリーズです。

天山 緋糸威

平安道斎-へいあん どうさい-

平安道斎は雄山の作品の中でも、技術や素材によりこだわった、ワンランク上のシリーズとして登場しました。

元々、関西と関東ではお節句の風習が少し異なっていて、江戸甲冑と京甲冑という分類がされています。
二つの大きな違いは、江戸甲冑は実物に近い形で再現した作品、京甲冑は公家の雅な文化を反映した煌びやかな作品という点です。

鈴甲子の工房は元々江戸の下町、吾妻橋の近くで工房を構えていたので江戸甲冑の技術を踏襲していましたが、京甲冑の雅な雰囲気を作品に取り入れたいという思いからこの平安道斎の作品作りは始まりました。

最初は真似です。とにかく愚直に京甲冑の煌びやかさを表現することにこだわりました。ただ、東京で作る京甲冑は京甲冑とは呼べません。なので雄山の独自のスタイルで雅さを表現すべきだと考えたのです。

そこで金具を使って、一つの作品に一つの物語を落とし込むという表現を確立しました。それぞれの作品の物語は、また別の記事におこすことにします。

平安道斎 勝虫 1/3スケール

戦国武将シリーズ

現在では定番となった、戦国武将の五月人形ですが、30年ほど前までは実は一般的ではありませんでした。三日月の前立て(シンボルマークのようなもの)をつけて伊達の兜だというような簡素な作りがほとんどだったのです。

そんな中で戦国武将のリアルな模写を作るきっかけとなったのは、4代目の雄山である僕の父が仙台で伊達政宗公の甲冑を実際に見たことでした。この時父は初めて実物の甲冑というものを見たそうで、あまりの迫力に衝撃を受けたと言っています。

こんな迫力のある作品が五月人形として飾られたら、これまでより素晴らしい端午の節句になるに違いない、そう考えたのです。
そこでどうやって節句人形のサイズで、これだけの迫力と臨場感を備えることができるのかを考え、忠実に研究とスケッチ、試作を重ねた末に出来上がったのが、雄山作の伊達政宗公の兜そしてそれに続く数々の戦国武将の甲冑になります。

伊達政宗公の兜のスケッチ

国宝模写

実物の迫力に魅了され、それを五月人形の迫力ある作品として再現する面白さに取り憑かれ、雄山の作品は大きな舵を切りました。
国宝と重要文化財の模写です。

国宝の甲冑は全国に18領残っており、そのうち半分以上を模写の作品として世に送り出してきました。(甲冑の数え方は一領二領と数えます)
国宝は神社の宝物殿に奉納されているため、基本的に手や足を守るための小具足というパーツを取り外した状態で奉納されています。そのため我々は奉納の鎧と呼んでいます。

中でも、現存甲冑の双璧とも呼ばれる、春日大社の竹雀、櫛引八幡宮の菊一文字の模写は雄山の中でも最も繊細かつ手の込んだ作品になっています。総重量が30キロ近くになる繊細な金具であしらわれたこれら二つの甲冑は、実際に着るためというより、褒美やプレゼントとして製作されたと言われています。

ですが、実際に着用するように作られているため、我々の模写も全てこのサイズの小人がいれば着用することが可能な忠実な作品になっています。

赤糸威鎧兜 菊一文字 1/5スケール

まとめ

今回は我々の作品の中でも、長く愛されている作品の歴史について紹介してみました。
実際の甲冑の歴史はどこかで紹介したいなと思いますが、製造方法を含めてわかっていないことも多いです。
だからこそ、その空白の部分を自分たちなりに解釈して、作品に載せることができる、これが甲冑師としてのロマンであり、面白さであると思っています。

次回は、これまで忠実に再現してきた技術を、どうやって現代的なインテリアに馴染む作品に昇華してきたかを紹介していきたいと思います。

ありがとうございました。

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