ボアアップギアのトラブル事例とオーバーホール

巷ではあまり事例のない、4ストギアのボアアップカスタム
更にデリバリー用途で酷使するなどという、暴挙にも近いカスタムに手を出してから、、早3年経ちました

初号機はごく親しい配達員さんから依頼されました
ノウハウもなく二つ返事は出来ませんでしたが、技術的興味と好奇心から
お受けしてしまったことから始まりました

2台のボアアップギア デリバリー仕様

全く未知な世界でしたので、全く同じ仕様を同時に作る
同じように作って同じように稼働させることでトラブル発生のリスクに対応しました
それは私自身が乗る車体です
そして、同時進行でカスタムし同じように過負荷走行を強いる
私の車体はメンテサイクルを知る為に頻繁に車体点検をしました
そして、、、何も起こらない? 2台とも定期メンテナンスだけでノートラブルだったのです

定期メンテナンスという落とし穴

距離を走ればエンジンオイルを交換する、ベルトを交換する 駆動系をメンテナンスする
この当たり前なことが実は落とし穴、盲点でした

機械的な信頼性は確認出来たので、ボアアップギアとして販売・カスタムを始めました
評判も良くお客様にも喜んでいただき、3年で数十台は作ったのではないかと思います

台数が増えるのつれ、全ての車体にまで目が行き届かなくなってきました
それと同時にトラブル事例が増えていきます・・・何故だ?

ボアアップとオーバーヒート

トラブルのほとんどがオーバーヒートです
ボアアップのトラブル事例について別な記事にまとめていますので
そちらを参考にして頂きたいのですが、、最初はオーバーヒートから始まります
駆動系との因果関係も別記事の通りで、ローギア化した駆動系がエンジンに過負荷を与え続ける訳です

前項の落とし穴、ともつながります
定期的な、という定義がユーザーによって余りにも違うこと
違和感を感じる、というセンサーも全く違うのです
最初の2台のテスト機での定義が全く通用しないことがわかってきました
同時に、万人向けでトラブルフリーの難しさも改めて痛感しました
オーバーヒート警告灯が点灯していながら走り続けてしまうとか
ベルト劣化が激しく高回転域を躊躇なく回し続けてしまうとか
想定外のトラブルが多く見受けらました

実績からみるトラブル事例と対処

想定外の使用でトラブルが発生しておりましたが、良い意味で解釈すると
色々なデータが取れたことにもなります
そこで得られた結論のようなものがあるとすれば

 そう簡単にはエンジンは壊れない

 そのくらいベースエンジンは強い 

ということになります
しかし、機械である以上トラブルは必ず起きます

母数は数十台、仮に30台程度としてトラブル数をみてみます
・シリンダーヘッド損傷(歪み)3台 10%
・ガスケット抜け(冷却水混入)5台 17%
・定期メンテナンス 5台 17%
 うちピストン・シリンダー交換 1台 7%
   ピストン交換 1台(お客様希望)

初期トラブル車をのぞき
トラブル車は2万kmから3万㎞走行、駆動系劣化車も含みます
エンジンブロー車は今のところ1台もありません

ガスケット抜けによるトラブルは想定内ですが一般的な距離(3万から5万km)
からみると若干早いペースとも言えます
オーバーヒート傾向が強くダメージが大きいと、シリンダーヘッドにまで
トラブルが進んでしまうことがわかります
しかしピストンやシリンダーまで影響が出るケースは少ないのです
ましてやピストン焼き付き、クランク損傷は皆無です

オーバーヒートをさせない為には

データからみれば一目瞭然でオーバーヒートをいかにさせないかが大事です
きちんとメンテナンスをしてオーバーヒートのケアをしても3万kmあたりが
オーバーホールの目安となってきます
しかし、ピストンやシリンダーまでダメージが及ぶことはほぼありませんが
シリンダーヘッドのダメージが心配されます

駆動系に問題があった方がトラブルを起こしやすいことは明白です
駆動系に難があっても、乗り方でケアしている方はオーバーヒートせずにトラブル回避を出来ております

機械的には3万km目安、高回転高負荷にならない為には駆動系を5000から1万kmで確実にメンテナンス
そして、アクセル全開で爆走する時間を極力減らすこと
この3点がとても大事になってきます

機械は必ず壊れること ボアアップは愚かな行為であること

この2つを理解していただきたいと思っております
しかし、理解して機械としてきちんと付き合えば
機械は確実に答えてくれるものでもあります
10のポテンシャルで8を出すことと
5のポテンシャルで8を出すことの違いは桁違いに違うのです
8ではなく7,いや6で抑えて労わることが必要です

少しだけ、アクセルを緩める運転がトラブルを防ぐことになります

以上、ご参考になれば幸いです


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