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中国軍艦による口永良部島付近の領海侵入の隠された目的とは?

 8月31日(土)、防衛省は中国海軍シュパン級測量艦1隻が同日朝、鹿児島県沖の口永良部島南西我が国領海侵入したと発表しました。本件に関して、多くのメディアが中国軍の狙いについて、以下のように報じています。

 これらの分析は間違いではないと思いますが、ただ、1点、大変重要な点見逃しています中国が、日本の有識者の弱点突いてきたということもできます。また、今回の領海侵入からも、中国本気で太平洋への海洋進出狙っていることが窺えます。

 本分析では、中国軍艦による口永良部島への領海侵入隠された思惑について国際法観点から分析をしていきます。

まずは事実関係を確認!

中国海軍シュパン級測量艦
出典:防衛省HP「中国海軍艦艇の動向について(令和6年8月31日)」

 それでは、中国軍艦が領海侵入をした行動概要を確認していきます。以下の地図をご覧ください。

中国海軍シュパン級測量艦の航行経路
出典:防衛省HP「中国海軍艦艇の動向について(令和6年8月31日)」

 赤字が「中国海軍艦艇」の動きで、細い黒線内の海域が「領海」で、その周りにある海域が「接続水域」です。「屋久島」と「口之島」の間の中間線トカラ海峡)をキレイに通っていることがお分かりいただけるかと思います。

 実は中国軍艦がこのトカラ海峡内の領海に侵入したのは、今回初めてではありません。中国軍艦は今まで日本の領海に13回侵入してきましたが、今回の領海侵入を含め、その11回がこのトカラ海峡への侵入なのです。 

中国軍艦がトカラ海峡の領海を通過してきたルートを見ると、あることに気付く

トカラ海峡の領海に侵入した中国海軍シュパン級測量艦
出典:防衛省HP「中国海軍艦艇の動向について(令和5年6月8日)」

 それでは、中国軍艦がトカラ海峡領海侵入した直近の2例」と、「非常に重要な1例」を見ていきましょう。まずは、「令和5年6月8日(木)」の領海侵入についてです。以下の行動概要をご覧ください。

中国海軍シュパン級測量艦による領海侵入の動き
出典:防衛省HP「中国海軍艦艇の動向について(令和5年6月8日)」

 今回と同じように「シュパン級測量艦」が領海侵入をしていますが、今回の領海侵入とは異なり、南東から北西に向かって、西に向かっていますね。つまり、今回の軍艦が取ったルートの航行したことが分かるかと思います。

 次に「令和4年12月19日(月)の領海侵入」を確認していきます。同様に、以下の行動概要をご覧ください。

中国海軍シュパン級測量艦による領海侵入の動き
出典:防衛省HP「中国海軍艦艇の動向について(令和4年12月19日)」
中国海軍シュパン級測量艦による領海侵入の動き
出典:防衛省HP「中国海軍艦艇の動向について(令和4年12月19日)」

 このときも「シュパン級測量艦」が領海侵入をしていますが、令和5年の領海侵入と大体同じルートを通っています。そして最も重要な例が平成28年(2016年)6月15日に起きた同海峡への領海侵入です。

 平成28年(2016年)6月15日の領海侵入について、令和元年版防衛白書は以下のとおり記述しています。

 2016(平成28)年6月には、同型情報収集艦1隻(※ドンディアオ級情報収集艦)が、口永良部島(くちのえらぶじま)及び屋久島付近のわが国領海内航行した後、北大東島北方の接続水域内を航行し、その後、尖閣諸島南方の接続水域の外側を東西に往復航行した。中国海軍艦艇による領海内航行約12年ぶりであった。

令和元年度版防衛白書第2章第2節 中国 2 軍事

 具体的な行動概要の地図は見つかりませんでしたが、「中国の軍艦が口永良部島と屋久島付近の日本の領海内航行した」ことに変わりはありません。

 この3事案から、「中国軍艦わざわざ口永良部島近くのトカラ海峡通航しようしている」ことがご理解いただけるかと思います。なぜ中国はこのトカラ海峡を11回も通航してきたのでしょうか。ここからは国際法の観点で説明をしてきます。

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