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微々炭酸のサイダー

短歌をはじめて約4ヵ月。「新鋭短歌シリーズ」第5期の募集に際し、応募をしてみた。

「自選30首」を応募するいうことだったので、これまで詠んできた約60首の中から30首を選び、応募した。Instagramには写真付きで投稿してきたが、文字だけで並べてみるとまた違った趣があるような、ないような。

二十二の火を吹き消した君の顔まだ見たいのに暗くなるなよ
会うために電車を一本遅らせた 会わないように車両をかえた
右利きの僕が左で傘をさす理由は僕の左に在って
新宿は豪雨と歌う曲名が思い出せずに林檎を頼る
きんいろの大人のジュース飲んでみた まずいと言えないこれが大人か
お母さん僕は元気でやってます ライス以外でカレーを食べた
曲芸を終えてイワシを食うイルカ 芸がないから食われるイワシ
公の園の覇権を奪い合う私欲まみれの小さな君主
「スマイルひとつ、店内で。」税率が10パーセントかかって0円
三百八十円の牛丼がうまい シェフを呼んでくれ(呼ばない)
メロディーも歌詞も知らない曲を聞き涙を流す 相手の校歌
ハネムーン きみの希望はハワイだが代案としてアンズを添える
めんつゆとごま油着て艶めいたきみが欲しくて 月がきれいだ
ラーメンを撮って店主に怒られた「こっちの角度のほうが盛れるよ」
銀紙をとっておくのはこのガムの家だから 仕事を終え帰る
近所のよく吠える犬は近所では決して吠えないことで有名
車窓からビルが木になり森になる 林は瞬きする間に過ぎた
黒猫が横切れないよに蟹歩き 不幸は角度を変えて滑稽
ポケットの中にはビスケットがひとつ ケンタッキーで売ってるほうの
かわいいと思った服を手に取ってそっと戻してビームスを出る
釜めしが炊き上がるまで半時間待てる余裕は貴族の証
ハンバーグきみと作った思い出が忘れられずに玉ねぎを切る
音よりも光のほうが速いんだ 塾の窓から夏を見ていた
トモダチでなくなるためのひとことを言い出せぬまま冷めたから揚げ
恥じるべきダメージオムレツ纏わせたチキンライスの肌が赤らむ
シモキタに仲間はずれにされた沢 渋谷が受け入れて渋谷沢
「このお部屋、フォークソングの歌詞みたい」嫌そな君は少し笑った
新宿の海は狭いな小さいな 波を避けられない十八歳
「あ、もしもし。急にごめんね。実はその」「おかけになった電話番号
夢を追いかけてるけれど追いつかない 夢はおそらくチャリに乗ってる

選考結果は後日発表とのことで、今しばらくご辛抱。

何はともあれ、「自選30首を提出」というハードルを越えて応募ができたことは、日々の積み重ねの賜物ということにして、今日は美味しくサイダーを飲む。

グラスいっぱいの氷はカラカラと音を立てながら、常温のサイダーに解けていく。その氷はまるで、浮き輪を持って市民プールを初めて訪れた子どものように、泳ぎ方は知らずとも水の流れに身を任せる感覚を楽しんでいるように見えた。

短歌の海は深く、広い。その海の正しい泳ぎ方を僕はまだ知らない。それでも僕はサイダーに浮かぶ氷のように、そこにただ揺蕩うことを楽しめたらいいのかもしれない。

告知

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『裏笑いが起きた瞬間爆破ライブ』
日時:12月11日(水) 20:00~
会場:中野Vスタジオ
料金:1000円

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『吠えろ!MC魂!』
日時:12月12日(木) 15:00~
会場:新宿バッシュ!!
料金:500円

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『どっきん!』年末恒例!紅白歌うま合戦!
日時:12月21日(土) 17:30~
会場:新宿バティオス
料金:前売1000円

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『E-3セレクションバトル』
日時:12月22日(日) 12:30~
会場:下北沢シアターミネルヴァ
料金:前売1000円

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氷が解けてきた。サイダーを飲んでみると、わずかに炭酸と甘さの弱まりは感じるものの、その過冷却とも思える冷たさは、かつてそこに氷があったことを思い出させてくれる。

氷が完全に解け切った。甘くない微々炭酸のサイダーも、これまた美味いのである。

大きくて安い水