見出し画像

隣の家におばあさんが住んでいる。そのおばあさんと、家の前で鉢合わせた。

「あら、こんにちは〜。暑いねぇ〜」

その日は本当に暑かった。ほんとうに暑いですね……。おばあさんは何かを思い出したように、家の中に戻る。戻りながら、両手をひらいて、こちらに向けた。その場で待ってて〜のジェスチャーっぽい。信じて待っていると、おばあさんが箱を持って出てきた。

「暑いからね、これどうぞ〜」

ハーシーズのチョコアイスバー。箱で渡してくれた。冷凍庫の、保冷剤の位置を調整して、箱のまま仕舞う。1日1本ずつ、計画的に食べた。後日、また家の前で鉢合わせた。

「暑いね〜」

家の中に戻っていく。

「どうぞ〜」

ハーシーズをくれた。鉢合わせたら、ハーシーズがもらえる。そういう法則があるのかもしれない。また別の日の朝、おばあさんが家の前で庭木の手入れをしていた。窓から見えて、少し急いで外に出る。まるで外出する予定があるような勢いで、挨拶をする。おはようございます、今日も暑いですね〜。

「暑いね〜」

チュンチュンチュン……。上から鳴き声が聞こえてくる。雀だ。雀が、おばあさんの家の前に集まってきた。チュンチュンチュンチュン。10羽はいる。

「この子たちね、わたしが毎朝えさをあげてたら、この時間に集まるようになったのよ〜」

え、俺じゃん。ハーシーズをもらえると学習してここに来てる、俺じゃん。雀を見る。チュンチュンという鳴き声は、口から出ているというよりも、体が鳴っている感じ。雀、かわいいですね〜。できるだけはやく歩いて、そこを去った。

この記事が参加している募集

#夏の思い出

26,274件

大きくて安い水