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読書記録「西の魔女が死んだ」

夏の文庫フェアが続々とはじまりましたね。
今週は梨木香歩さんの「西の魔女が死んだ」を読みました。

このお話は、まっすぐな性格であるがゆえに、中学校に馴染めない主人公まいが、大好きなおばあちゃんと、穏やかな、けれどしたたかな日々を過ごして、成長していく物語です。

題名の一文からはじまるこの物語は、タイトルからは想像できないほど暖かで優しさにあふれています。けれど、最初の一文から、その穏やかな日常に死の伏線が常にあることを感じました。「西の魔女が死んだ」。そのことがまいにとってどのようなことを意味するのか。徐々に明らかになっていくうちに、自分にとっての大切な人が思い出されて、涙が止まりませんでした。

梨木香歩「西の魔女が死んだ」新潮文庫

私は将来のことを漠然と考えるときに、自分にとって生きやすい、呼吸がしやすい場所はどこだろうと考えることがあります。例えば学校を選ぶとき、近いという理由で通っていた小中学校を卒業した後は、どこの高校が自分の学力や性格、そして周りの意見に合っているかを考えて、進路を決めました。今では、自分の学びたいことに合わせて選ぶべきだったなと反省しています。けれど、この小説を読んで、積み重なったタラレバが少し軽くなりました。

「その時々で決めたらどうですか。自分が楽に生きられる場所を求めたからといって、後ろめたく思う必要はありませんよ。サボテンは水の中に生える必要はないし、蓮の花は空中では咲かない。シロクマがハワイより北極で生きるほうを選んだからといって、だれがシロクマを責めますか。」

梨木香歩「西の魔女が死んだ」より

今選んだ道がよかったと思えるようになるには、まだまだ時間がかかりそうなので。おばあちゃんのように色々なことを教えてくれたこの小説を読み返しながら、その日を待とうと思います。

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