「マンション投資で年800万円稼ぐ方法」(岡本公男著、明日香出版社)

 本書は、書名だけ見ると、区分マンション投資で誰でも簡単に稼げますよなどと、どこかの不動産屋の営業マンが不動産投資について何も知らないサラリーマンをカモにするときに使うような安直なタイトルに思えるが、実際に読んでみると決していい加減な気持ちで書かれた本ではないらしいことがわかった。

 冒頭からいきなりこのような書き方をするのはややとがった言い方だが、これまでワンルーム投資をほとんど顧みることが無かったというのに、本作を読んで以降、不動産投資の勉強科目にワンルームという新たな科目を加えるようになったのは事実である。特に私のように資金が潤沢でもない、むしろ小額物件からしか始められないような方々にはワンルームは外すことのできない検討項目とも言えそうな気がしてきた。

 さて、ワンルームその他区分マンション投資のメリットを単刀直入に表現するなら、デメリットだと思っていたものがメリットだということである。つまり、区分マンションは自分で工夫できる余地がもともと限られているのであまり悩まなくていい、ということである。アパート一棟ならオーナーが取り組める部分は多い。だが、初心者がいきなりベテラン大家気取りであれこれやろうとしてもなかなかうまくいかないし、一棟まるごと見ていかなければならないので当然コストもかかる。であれば、敢えて選択肢の少ないものを選ぶことでコストも悩みも抑えられる、という論理である。

 著者が勧める不動産投資のステップは次の通りである。

1.中古区分マンションを1戸取得する。
・自己資金は100万円か、少なくても良い
・管理会社とのやり取りを通じて賃貸経営を知る
・チャンスがあれば管理組合に参加する

2.中古区分マンションを1戸か2戸、追加取得する。
・管理会社に任せず、自分でやってみる

3.中古区分マンションはそれ以上取得しない

4.郊外や地方で一棟モノを取得する

5.一棟モノを追加取得

6.キャッシュフロー等が向上したら、都心に向けて資産の組み換えを行う

 確かに、小さく始めて徐々に大きくする、という王道の形であろう。区分マンションで注意すべき点は、金融機関の担保評価が低いため購入は3戸までにとどめておいた方がいい、ということである。そして不動産投資で成功するコツは、著者の言葉で言うと、「最初の投資で致命的な失敗をしないこと」である。不動産業者に勧められたからとか、銀行で融資が下りたからといった事情は、致命的な失敗をしない理由にはならないというのである。最近起きた「○○○の馬車」事件からもわかる通り、不動産会社の勧めるビジネスプランに乗って初めての不動産投資としていきなり数億円の融資を取り付けるのは、知識も経験もない人がやることではないということである。

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