「ALL SECOM 創造する経営」(大倉雄次郎著、日刊工業新聞社刊)

 「セコムしてますか?」で知られる日本の警備業界の雄、セコムとその創業者について書かれた本。

 「セコムという会社がいかに素晴らしいか」をひたすら説いている本かもしれないな、とやや警戒気味に読み始めたというのが正直な気持ちであるが、業界随一の企業でもあるので、特に創業の時期に関する部分については知っておきたいし読んでおいて損はないだろう、というのが読むに至った動機である。

 冒頭、1962年に「日本警備保障株式会社」(のちセコムに社名変更)を設立した経緯が述べられている。創業者飯田氏は警備保障というビジネスが欧米にあることを知り、日本でもウケると判断して友人と共に起業したというものである。

 この点、創業にあたり、スウェーデン系の企業から資本の一部提供されたと言われており、警備業界第2位の綜合警備保障株式会社(現在はALSOKと呼称)はこの点を指摘し、「われわれは純粋なる国内資本の警備会社を目指した」というような趣旨のことをALSOK関係者が主張していたのを聞いたことがあるが、そのスウェーデン資本などについては本書では一切触れられていない。

 ちなみに、セコムの公式HPを見ても本書と同じような表現で創業当時のことが語られていて、外国企業からの資本提供やサポートがあったと受け取れるような表現は一切ない。否定も肯定もしていない。理由は分からないが、触れないよう巧妙に避けているように見えるのが興味深い。

 ネットなどを検索すると、この創業時に関わった外国人のことなども出てくるのだが、本書では直接触れられていないことなので、ひとまずここまでにしておこう。

 会社設立後、東京オリンピックの開催やテレビドラマの影響で警備会社というものが世間に認知されていく。一方セコムは、ヒトに頼らない警備方式、すなわち機械警備部門を中心に、他の追随を許さない勢いで発展していくのである。

 その他、サービス紹介というか、どのようなサービスを提供しているかなどについて比較的詳細に書かれているが、興味は無いのでここではいちいち触れずに割愛しよう。海外留学制度がある、という話は現役セコム社員から聞いたことがある。日本の警備業界で働くのであれば、業界第2位のALSOKよりも遥かに企業規模の大きいセコムの方がいいのかもしれないと思える一方で、そのセコムに幻滅して辞めて去った知り合いもいるのが実際だ。

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