鈴木えて

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Q短歌会/句またがり愛好会 短歌以外の話もします 短歌→@suzuki_etait 音楽/本/ファッションなど→@etais_etait

マガジン

  • 短歌連作

    鈴木えての作った短歌の連作をまとめました。

  • 50首連作作歌過程全部見せマラソン

    笹井宏之賞応募作品「ホログラム」を作ったときに何を考えていたか全部言語化していきます。

  • アートについての雑感

    アートの展示を見たときの感想を、あまり力を入れずに書きます。

  • 川柳連作

    鈴木えての作った川柳の連作をまとめました。

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[短歌25首連作]鳥(たち)のRITUAL

そのときは空っぽみたいに懺悔して手の施しようもなく歌って アルファケンタウリに移住したvtuberからクリスマスにもらいたてのプレゼント 人口の2割がフライング・ワームに連れ去られた経験を持ちます 黎明兆す神謡に振り向けば左耳だけパーリーナイト 楽市楽座の向かいに住んでいてときどき托卵されるのも仕方ない ART is good. NFTの鳥が蝶が集う我がランゲルハンス島 手伝ってくれるのならば深淵の都市は左へひかりは右へ 瑞獣の無聊を慰めるためのまったくのろのろ

    • 50首連作「ホログラム」作歌過程全部見せマラソン――5日目(12〜13首目)

      文フリで買うべきものがあればコメントで教えてください。 全部見せ(12首目〜13首目)崇高な計画として仰向けのあなたが宙に描く夏薔薇 12首目。 「王」というお題から作っている。 「王」のイメージから「崇高」という語を導いたのは想像できるが、メモがほとんど残っていない。 いきなりこの書きつけに飛ぶのだが、すでに3句、そして5句の一部以外は完成している。 「仰向けの」をどう導いたかについては、全く記憶がない。 「夏薔薇」は堂園昌彦さんを強く意識している。 堂園さ

      • 50首連作「ホログラム」作歌過程全部見せマラソン――4日目(11首目)

        筆名、変えた方がいいのかな。 全部見せ(11首目)日影ないね、日影ないねえって言いながら白っぽい歩道橋下りてゆく これは連作制作過程のかなり後半に作った歌なので、連作のメインになったり雰囲気を出したりする歌ではなく、隙間を補うイメージで詠んだ。 「下りる」という動詞から発想を広げて作ったもの。 原型としてこれがすんなり浮かんだようだ。 おぼろげな記憶だが、「白っぽい歩道橋」のイメージが最初にあったと思う。 繰り返しになるが「光」の質感を大切にしている連作なので、夏の

        • 50首連作「ホログラム」作歌過程全部見せマラソン――3日目(9〜10首目)

          全部見せ(9首目〜10首目)パスタのため沸かされる湯のかがやきが人類を寿いでやまない 9首目。 いきなり「生き延びるため湯を沸かすんだ」という下の句からメモが始まっている。 こういうキラーフレーズみたいなものは、割とフレーズという完成形でまとまって浮かぶことが多い。 「生き延びるため湯を沸かすんだ」は、普通にそうめんか何かを茹でようとして思いついたのではないだろうか。 それだけで歌の核になる強いフレーズを、狙って思いつく方法は分からない。あったら教えてください。 「

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        [短歌25首連作]鳥(たち)のRITUAL

        • 50首連作「ホログラム」作歌過程全部見せマラソン――5日目(12〜13首目)

        • 50首連作「ホログラム」作歌過程全部見せマラソン――4日目(11首目)

        • 50首連作「ホログラム」作歌過程全部見せマラソン――3日目(9〜10首目)

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        記事

          50首連作「ホログラム」作歌過程全部見せマラソン――2日目(3〜8首目)

          手を抜くことって大切なのだけど、賢く手を抜くのは意外と難しい。 手を抜くためには、 ・一連の作業のどこはクオリティを保証しなければならないか ・逆にどこはそこそこの出来でいいのか ・この作業を依頼してきた人はどれくらいの完成度を求めているのか ・自分は一連の作業のどこがやりやすくてどこで手が止まるのか こういうことが分かっていないと下手な手の抜き方をして怒られたりする。 最初の3点は依頼者との擦り合わせで分かってくることだけど、最後の「どこがやりやすくてどこで手が止まる

          50首連作「ホログラム」作歌過程全部見せマラソン――2日目(3〜8首目)

          50首連作「ホログラム」作歌過程全部見せマラソン――1日目(1〜2首目)

          確か去年の9月20日に短歌を作れなくなったので、ほぼ8ヶ月短歌を作っていないことになる。 歌歴としては6年目ということになるのだけど、短歌とは安定したお付き合いをしてきたわけではない。 すごく頑張った反動でほとほと嫌になり、Twitterアカウントを消してQ短歌会も辞めたことがある。 それでも短歌にぬるっと戻ってこられていたのだけど、今回は全く手がかりが掴めないので、何を考えていたのかテキストにしてみようかなと思う。 続きがあるとしたら、次回は「棚卸し」とか「言語化」と

          50首連作「ホログラム」作歌過程全部見せマラソン――1日目(1〜2首目)

          禁忌は偏在する。そう、その辺の自販機にも

          この記事は、私が遭遇した自販機を、品揃えのおもしろさという観点から格付けしたものである。 1台目:力が欲しいか?☆☆ あらゆるニーズに幅広く対応する優等生的な自販機。強いて言うならジュース系が少ないか。 その中に佇む「力水」はエナジードリンクの位置付けなのだろうか。閑静な住宅街にも、日夜パワーを欲している人がいるのかもしれない……。 2台目:近所にあったら気持ちが弾んでしまうかもしれない☆☆☆☆☆ お茶・水・コーヒーは隅に追いやられ、甘い飲み物でポップにまとめられた自販

          禁忌は偏在する。そう、その辺の自販機にも

          「ムラのあるネイルの方が抜け感があっていい」と語るとき、私は何を「抜」こうとしているのか?

          ネオングリーンのポリッシュ*1を買った。Twitterで見かけて、これは私に必要なものであると直感したので即購入し、その日のうちに塗ったのであるが、それは私がとても怒っているからなのだと思う。 私はずっと怒っている。先日私に向けられた加害についても、世界に存在する大小様々な無理解や無知や形だけのポーズについても、怒っている。 舐められている*2、と感じる。私は権力のない若い女であるがゆえに舐められているし、私が舐められていなければ、私が今のような痛みや怒りを感じることはな

          「ムラのあるネイルの方が抜け感があっていい」と語るとき、私は何を「抜」こうとしているのか?

          [短歌50首連作]ホログラム

          うつくしい神とひととの口約束として光の三原色は 祝福は触れたらわかる 黄砂舞う春陽の中に指を反らして 歩行者天国 手の触れ合ったよろこびは花火のように遅れてとどく 木漏れ日だろうあなたをなぞらえるならば 噴水が湧き上がりまひるま 理由なく好きでいいからはつなつにくまなく触れて ゆっくりでいい 恋が愛に変わるあいだに付け替えた千の電球一面に光る わたしより先に暑がることさえも滲むいのちの予言のようで 白亜紀のことを言いつつお互いのプリズムを照らしあって笑った パ

          [短歌50首連作]ホログラム

          「お約束」のない世界におけるアート――「biscuit gallery group exhibition 『re』」についての雑感

          「biscuit gallery group exhibition 『re』」で、菊地匠さん(以下敬称略)の作品を見た。 biscuit galleryの階段を3階まで上ると、正面に大きな窓のある展示室になっており、菊地の作品は入って右手の壁に沿って配置されている。 まず窓側、「オブジェ1」から鑑賞を始めた。透明度の低いプラスチックの箱が壁に掛けられ、その中にたわんだ形でレンブラントの「テュルプ博士の解剖学講義」のプリントが収められているというものだ。「テュルプ博士の解剖

          「お約束」のない世界におけるアート――「biscuit gallery group exhibition 『re』」についての雑感

          3つの不安について――「記憶は地に沁み、風を越え 日本の新進作家 vol.18」についての雑感

          この文章は、東京都写真美術館で開催中の「記憶は地に沁み、風を越え 日本の新進作家 vol.18」に出品している作家のうち、3人の作品について雑感を記述したものである。 吉田志穂吉田の展示作品は、すべて「砂の下の鯨」と題された連作からの抜粋であるようだ(1)。 遮光カーテンをくぐって会場に入ると、吉田によるステートメントが目に入る。鯨の死体が埋められている砂浜についての作品群だ、ということを頭に入れつつ作品の正面に立って、困惑した。何が写っているのか分からないのだ。 極端

          3つの不安について――「記憶は地に沁み、風を越え 日本の新進作家 vol.18」についての雑感

          [短歌30首連作]言葉を継ぐ

          晩秋を旅するならば崇敬を冬を旅するならば誓いを 魂の水位が下がるのがわかる薄い詩集をなくしたときに 感情の比喩ばかり言う 生理的な涙ばかりを右目がこぼす 葉を落とす木立の影の深さを言うこの唇に色は乗せない 静寂よりことばが世界を創るときすれ違うために生まれてしまう 花のない水盤のように身じろぎもせず黙り込んだ記憶 なみだつ 黒真珠のピアス外せば膿汁はわたしが嵐の海であるから 精神に宿る神なく黄昏を漂うままに六年を病む 輪郭をわずかに黄泉に置いてくるように睡眠薬

          [短歌30首連作]言葉を継ぐ

          [川柳5句連作]聖餐

          神棚のひどくもっちりした部分 耳たぶに蔦が絡んで震え出す 洗礼名が回文の人 整然とモンドリアンの食べ残し カセットコンロの上の祝祭

          [川柳5句連作]聖餐

          [一首評]をしている。愛をしている。愛をまた何千枚ものシャツ脱ぐように

          をしている。愛をしている。愛をまた何千枚ものシャツ脱ぐように /平尾周汰「をしている」ネットプリント「釦」より 助詞から始まるのが非常にトリッキーな一首だが、それは単に物珍しさを狙ったものではなく、歌に確かな効果をもたらしている。 「をしている。」と、「を」の前になんでも挿入しうる箱が提示されたあとで「愛」がそこに置かれると、その「なんでも」の可能性の集合、それはひどく具体性のなく軽い集合だが、そこから愛が選ばれたという対比が愛に厚み、重さ、手触りを与える。 その愛のし方

          [一首評]をしている。愛をしている。愛をまた何千枚ものシャツ脱ぐように

          [一首評]かなしみは音に紛れて泡沫になりゆく ぼくはぼくはぼくは

          かなしみは音に紛れて泡沫になりゆく ぼくはぼくはぼくは /酒田現「灯籠の海〜アルバム「花と水飴、最終電車」より〜」ネットプリント「釦」より 「花と水飴、最終電車」はボカロPであるn-bunaのアルバムであり、この一首が収録されている酒田の連作はこのアルバムへのオマージュとなっている。「ぼくはぼくはぼくは」はその中の一曲「ウミユリ海底譚」の歌詞であり、この一首は「ウミユリ海底譚」の本歌取りとして作られたものであろう。 「ウミユリ海底譚」をひと言で説明するのは難しい。作中主体は

          [一首評]かなしみは音に紛れて泡沫になりゆく ぼくはぼくはぼくは

          [短歌1首]2021/8/22

          火をつけるまたはつけないはつなつの今またはつかなつかの間の水

          [短歌1首]2021/8/22