「銃を持ったら撃ちたくなる」「ハンマーを持ったら叩きたくなる」 道具の法則
「チェーホフの銃」のよう
ロシアの劇作家アントン・チェーホフの説く文学的技法に「チェーホフの銃」と呼ばれるものがあります。劇中に銃が出てきたら、その銃が使われないといけない、という意味です。「ストーリーには 無用な要素を盛り込んではいけない」ということです。こんな チェーホフの銃に似た認知バイアスがあります。それは「少年のハンマーを持たせたら、少年は何でも釘のように扱いたがるようになる」というもの。これを「道具の法則」と言います。
道具の法則
道具の法則(Law of the instrument)とは
慣れ親しんだ道具に依存しすぎる傾向
欲求五段階説のアブラハム・マズローがこう述べています(※1)。
「もしあなたが持っている道具がハンマーだけであるとき、すべてを釘ように扱いたくなる」
「ハンマーの法則」、「マズローのハンマー」、「ゴールデン・ハンマー」とも呼ばれています( law of the hammer, Maslow's hammer, or golden hammer)。認知バイアス(後述)のひとつ。
ハンマーを手にするとなんでも釘のように打ちたくなる
1868年、ロンドンの定期刊行物『Once a Week』に、こんな記述があります。「少年にハンマーとノミを与え、その使い方を教えると、すぐにドアポストを改造しようとしたり、シャッターや窓枠の角を取ったりし始める。だから、もっと良い使い方を少年に教え、少年のハンマーの使い方を制限内に収める方法を教える必要がある」(※2)。これは少年に限らない。科学者もまた、問題を解決するのに使うのが得意な公式を使って解こうとしてしまうようです(※1)。
「仕事に道具を合わせるのではなく、道具に仕事を合わせようとしてしまう」
1963年に出版されたエッセイ集「Computer Simulation of Personality」のなかで心理学者のシルヴァン・トムキンス(Silvan Tomkins)は、「仕事に道具を合わせるのではなく、道具に仕事を合わせる傾向がある」と書いています(※2)。
投資家ウォーレン・バフェットも「道具の法則」を指摘
1984年、投資家のウォーレン・バフェットは、不適切な数学的アプローチを使いたがる金融市場の研究を批判しています(※2)。「一度身につけた技術は、たとえ実用性がなくても、あるいは負の実用性があっても、使わないのは罪だと思うようです」。
対策
この人間の道具、得た武器、知識に対する偏執は、イノベーションへの不合理なこだわりや道具の使い方へのこだわりと関連しています。不要なイノベーションというもののあります。使い方を工夫すれば 問題が解決するのに、思い込んだ使い方でしか道具を見ていないために問題を解決できないことがあります。前者を「イノベーション推進バイアス」と言い、後者を「機能的固定」と言います。
これらの認知バイアスに対しての対策は、
この認知バイアスを知ること
です。シンプル。そしてキャンプです(笑)。キャンプをすると必ず忘れ物をします。街の中ではないので山や海でわたしたちは持っているもので工夫して、無いものの代用を考案しなくてはならなくなります。これを繰りかえしていると知恵と工夫が強化されます。
認知バイアス大全
認知バイアスとは、人間が進化の過程で獲得したバグ。紹介した認知バイアスをマガジンにまとめています。
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参照
※2:If Your Only Tool Is a Hammer Then Every Problem Looks Like a Nail
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