「マストバイな家電ベスト5」に潜む盲点:「サンプルサイズに対する鈍感さ」
わたしたは代表された数字に弱い
「マストバイな家電ベスト5」や「顧客満足度98%」などの表現にふれると「どれどれ」と興味が湧いたり、良いものかも?と信頼性が芽生えそうになったります。これは何かというと代表的ヒューリスティクというものなんですが、言い換えると「直感」です。わたしたちの直感は、信用できるものとあまりできないものがあります。今回は、あまり信用できない直感のひとつ「サンプルサイズに対する鈍感さ」を紹介します。
サンプルサイズに対する鈍感さ
サンプルサイズに対する鈍感さ (Insensitivity to sample size)とは
少数のサンプルを調べただけで信念が形成される傾向
人間は、サンプルのサイズ(量)よりもその代表性に目を向ける傾向を持っています。」というもの心理現象のことを指します。「顧客満足度98%」という表現を見て信頼性が高いという印象をうけてしまいますが、このパーセンテージを算出した母数の規模も質も不明なままです。5人から聞いて、4人が100点満点中100点をつけて1人が90点をつけても顧客満足度は98%になります。そしてその5人には「評価をしてくれれば1000円キャッシュバック」という条件で評価依頼している場合、高評価をする確率もあがります。それでも「顧客満足度98%」は嘘になりません。これはわたしたち人間の「サンプルサイズに対する鈍感さ」を利用したやり方です。
認知バイアスに関しては何度も名前があがるエイモス・トヴェルスキーとダニエル・カーネマンら以下のような質問を被験者に向けてした実験があります(※1)。
「ある町には2つの病院があります。大きい方の病院では1日に約45人の赤ちゃんが生まれ、小さい方の病院では1日に約15人の赤ちゃんが生まれます。ご存知のように、赤ちゃんの約50%は男の子です。しかし、正確な割合は日によって異なります。50%より高いときもあれば、低いときもあります。1年間、それぞれの病院で、生まれた赤ちゃんの60%以上が男の子だった日を記録しました。どちらの病院の記録が多いと思いますか?」
①大きい方の病院
②小さい方の病院
③ほぼ同じ
3つのうちどの回答が多かったかと思いますか?
①または②と回答した人は22%
③と回答した人が56%でした。
わたしも直感で答えると③でした。しかしサンプルが多ければ偏りが小さくなっていき50%に近づいていきます。つまり大きな病院であるほうが赤ちゃんの男女差は減っていくので「生まれた赤ちゃんの60%以上が男の子だった日」という偏った結果になりやすいのは②の「小さい方の病院」です。なので正解は「小さい方の病院」。
対策
わたしたちのこの盲点についての対策はシンプルで強力です。それは
母数を気にする
というもの。「アンケート調査の結果」という表現があったとき、アンケートの対象者は?数は?ということを気にすると自動的に「サンプルサイズに対する鈍感さ」は軽減されます。怪しい(操作的な)広告は、代表数は示すが、サンプルサイズは示しません。そのあたりを精査していくとけっこう簡単に「怪しさ」の度合いが見えてきます。
おすすめ本
カーネマンの著書はこういった認知バイアスやヒューリスティクスをわかりやすく紹介してくれています。名著。
そんなカーネマンについて詳しく書いてくれているのがこちら。
認知バイアス大全
紹介した認知バイアスをマガジンにまとめています。
参照
※1
※2
※3 :Judgment under Uncertainty: Heuristics and Biases
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