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難しい問題を簡単だと思い、簡単な問題は難しいと見積もる認知バイアス「難易度効果」

「認知バイアス大全」マガジン

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難易度効果

難しい問題を軽く見て、簡単な問題を重く受け止めるのが難易度効果という認知バイアス
source: wbur on point


難易度効果(Hard–easy effectとは

難しい問題は、解決できるであろうと難易度を低く見積り、自分の能力を過大評価し、一方で、簡単な問題については難易度を高く見積もり、解決能力を過小評価する傾向

この難易度効果は、時間節約バイアスに似ています。時間節約バイアスとは、「高速を出しているときに、さらにスピードを出して節約できるであろうと思う時間を過大評価してしまうバイアスです


難易度効果の実験

いくつかの実験で被験者は、答えが2つある一般的な知識の問題に答え、さらに各問題の正解率を見積もるように依頼されました。被験者は、自分の答えに対する自信の度合いは,正解した問題では高く,間違えた問題では低くなるはずです。しかし、一般的な結果はそうなりません。多くの人は自信過剰で、ほとんどの人が自分の能力を体系的に過大評価していることが研究で明らかになっています。さらに、人は難しいと思われる問題に対しては自分の能力を過信するのですが、簡単だと思われる問題に対しては過小評価してしまいます。(※2)

異論があります

Brennerら(1996)、Justilら(1997)、Keren(1991)など一部の研究者たちは、難易度効果について疑問を呈しています(※3)。Peter Juslinも1993年の論文(※4)で、難易度効果が正しい環境で行われた場合は認められないと主張しています。2000年、スウェーデンのウプサラ大学のJuslin、Anders Winman、Henrik Olssonは、難易度効果は、これまで「重要な方法論的問題に十分な注意を払わずに解釈されてきた」と主張しています(※5)。彼らの研究では、2つの方法論的問題をコントロールしたところ、難易度効果はほとんどなくなりました。彼らは、「難易度効果は、データのスケールエンド効果、線形依存性、回帰効果に十分な注意を払って解釈されておらず、『認知的過信バイアス』という考えに固執し続けることで、主張を支持するデータへの偏重が生じている」と主張しました。故に難易度効果は、実験者バイアスによるものと考えれます。実験者バイアスとは、「自分の予測と一致するデータを重視し、反するデータを無視する傾向」です。


実験者バイアス

実験者バイアス(Experimenter bias)とは

自分の予測と一致するデータを重視し、反するデータを無視する傾向
または実験者の期待が被験者(実験対象者)の行動に及ぼしてしまう影響


まとめ

ということで、この難易度効果は、ちょっと心もとない認知バイアスです。

参照

※1:Bordley, Robert; LiCalzi, Marco; Tibiletti, Luisa (October 2014). "A target-based foundation for the "hard-easy effect" bias". Università Ca' Foscari Venezia. hdl:2318/149445. Retrieved 5 March 2017.

※2:Burson, Katherine; Larrick, Richard; Soll, Jack. "Social Comparison and Confidence: When Thinking You're Better than Average Predicts Overconfidence". Deepblue. Michigan Ross School of Business. Retrieved 4 March 2017.

※3:Naive Empiricism and Dogmatism in Confidence Research: A Critical Examination of the Hard-Easy Effect

※4:Research on Judgment and Decision Making: Currents, Connections, and Controversies
※5: The disutility of the hard-easy effect in choice confidence



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