ワーキングメモリとは何か? その鍛え方も。
ビジネスと健康に使えるエビデンス
今回の話はビジネスにも健康にも関わる内容です。
ワーキングメモリとは
ワーキングメモリ(Working memory)ごく短いあいだに記憶を留めておく脳の機能。買い物リストを覚えるときや暗算するときなどにフル活用しています。ワーキングメモリが大きければ、思考に使える材料がその分増えます。アイデアを出すときには、異なるものの掛け合わせが有効なわけですが、ワーキングメモリが強いと、このとき多くの材料を一度に扱えるわけで、そうなるとより良いアイデアを生み出しやすくなります。そんなわけで、頭が良い人というのはワーキングメモリの性能が高い。
ワーキングメモリが強いと飽きやすい
ワーキングメモリの性能が高い人は、比較的「心的飽和」しやすいことがミネソタ大学の研究で明らかになっています(※1)。ワーキングメモリが高いと一度の体験で深く多くを記憶、体感できます。その結果、少ない回数で「もう満足」という心的飽和に至りやすい。
ワーキングメモリが強いと落ち込みにくくなる
ワーキングメモリの機能が高い人は、悲観的な考えにとらわれても、そこから楽観的な考えに意識を変えるのが上手な傾向があります。これはノースフロリダ大学の2016年の論文によるものです(※2)。これは、悲観や鬱的な傾向というのは、ルミネーション(反芻思考)により強化されていくわけですが、ワーキングメモリが高いととらわれがちな思考以外の別の思考についても考えられるためです。ワーキングメモリが高いおかげで、複数の視点について考えることができるわけです。ワーキングメモリはこのようにメンタルヘルスにも重要なようです。
ワーキングメモリの鍛え方
1.語学と音楽
語学と音楽に長けている人はワーキングメモリが高い(※3)。
2.瞑想
マインドフルネス瞑想を1日20分ずつ2週間やるとワーキングメモリの機能が向上する(※4)。
3.運動
運動は頭を良くするし、ワーキングメモリを鍛えます。20分ほど歩くだけでも脳の機能はかなりアップします。しかしその効果は1日で消える。なので毎日よく動く、よく歩くことがワーキングメモリの向上につながる。
4.木登りやトレイルラン
固有受容性の高い活動は短時間でワーキングメモリを改善する(※5)。「固有受容性」とは、自分の位置や動作に気づくこと。木登りは、自分の身体の状態と木の形状などを認知しないとできません。こういう活動を固有受容性が高い。このような活動を通して、周囲の状況の変化に対応していくうちに、自然とワーキングメモリが鍛えられていきます。その他の固有受容性の高い活動には、トレイルランニングやボルダリングがあります。
5.ストレスフルな未来を予想しない
一日の始まりに「今日はストレスが多そうだ」と予測するだけで、実際にどんな出来事があろうとなかろうとワーキングメモリの性能は落ち続けることがわかっています(※)。
まとめ
ワーキングメモリは知的活動にとても重要なだけでなく、心の平安にも有効なので、幸せに関わるものでした。地頭の差は努力では埋めきれないこともわかっていますが、運動や瞑想や木登りで鍛えられそうなので、森を歩いたり、ボルダリングをしたりと固有受容性の高い活動と運動をできるだけ行うことが、心身のみならず頭も鍛えることに繋がります。
参照
※1:Remembering Satiation: The Role of Working Memory in Satiation
※2:Does Working Memory Mediate the Link Between Dispositional Optimism and Depressive Symptoms?
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/acp.3272
※3
※4:Mindfulness Training Improves Working Memory Capacity and GRE Performance While Reducing Mind Wandering (2012)
https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/0956797612459659?rss=1&;ssource=mfr
※5
※6:Waking Up on the Wrong Side of the Bed: The Effects of Stress Anticipation on Working Memory in Daily Life
その他
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