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どうして人間の女性は、排卵時期がわからないのか?

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女性の排卵時期はどうしてわからないように“できている”のか?

子どもが欲しい夫婦には、正確な排卵時期は重要な情報です。最新のOura Ringというデバイスでは、これがわかるようになるかもしれないそうです。

それにしても、不便極まりない。子作りは、わたしたちを乗り物としている遺伝子にとっても望ましいことのはずなのに……。なのに、なぜ排卵時期が、受精可能なタイミングが、“隠されている”のでしょうか。もっと広げて言うと、どうしてわたしたち人間には「発情期」がないのでしょうか。この理由は、実はちょっと複雑です。この複雑な理由をできるだけ簡単に説明していきます。

排卵時期が分かる霊長類とわからない霊長類

この「なぜ排卵時期がわからない問題」に対しては、多くの科学者たちが諸説を打ち立ててきているのですが、決定的な説を唱えたのは、スウェーデンの生物学者、ビルギッタ・シーレン=トゥルベリ博士とアンデス・メラー博士たち。彼らはまずわたしたち人間に近い真猿類を68種リストアップしました。このうち、わたしたち人間と同様に排卵のサインを出さない種類は32種でした。残りの36種の半分が僅かなサインをだし、半分はあからさまなサインを出していました。

排卵サインを出さない種類:32種
排卵サインを少し出す種類:18種
排卵サインをあからさまに出す種類:18種

つぎに配偶システムでこの68種類の真猿類を分類しました。

一夫一婦型:11種
ハーレム型:23種
乱婚型:34種

乱婚型とは、入り乱れて性交し、みんなで子供を育てるシステムです。

次に排卵のサインの有無と配偶システムの関係を見ていきます。

一夫一婦制:11種
•排卵サインなし:10種 •排卵サインあり:1種

乱婚型:34種
•排卵サインなし:20種 •排卵サインあり:14種

ハーレム型:23種
•排卵サインなし:12種 •排卵サインあり:11種

排卵サインのサインと配偶システムが入り乱れている……。しかしちょっとは整理ができます。

一夫一婦型のほとんどが排卵サインがなく、排卵サインがある種はほとんど乱婚型・ハーレム型

といえいます。

結論

人間の排卵サインの有無と配偶システムは、進化のプロセスを経て、現在に至っています。どういう進化か。それは以下の通りです。

(1)ハーレム型
排卵サインがある。そのおかげで効率の良い子作りができる。しかし排卵サインがあると「子殺し」が発生する。ハーレムをあらたに乗っ取ったオスは、すでに生まれいる子どもが自分の子どもではないことを知っているから。

(2)ハーレム型・乱婚型
排卵サインを“隠す”。効率の良い子づくりはできなくなるが、ハーレムを新たに乗っ取られても、子殺しされなくなる。なぜなら、排卵サインがないため、誰の子ども変わらず、オスにとっては自分の子どもである可能性があるため。

(3)一夫一婦型
排卵サイン無し。ハーレム型や乱婚型だとオスが他のメスのところへ行ってしまい、子育てが危うくなってしまう。これはオスにとってもメスにとっても不都合。そこで子育てを夫婦で行うため、一夫一婦型になった。

と現在に至る。というトゥルベリたちの推測が、なかなか信頼性が高そうというのが、現在の排卵サインと配偶システムの成り立ちに対する科学的な見解のようです。いかがでしょう? セックスが楽しい理由もこれに含まれます。楽しいからこそ、年がら年中、発情期なしで性交し、その結果、夫婦は仲睦まじいままであり、かつ、男は女から離れない。離れると年中妊娠が可能な女が他の男の子どもをつくるかもしれないからです。これが嫉妬というものを生む理由でもあります。

また言い換えると一夫一婦型というのは、宗教的なものが根底にあるのではなく、自分たちの子どもをできるだけ死なせずに育て上げるために作られた配偶システムだいうことです。そしてこの配偶システムは、最初から一夫一婦型ではなく、起源はハーレムおよび乱婚型でした。男性性器の形状や女性のセックスに対する反応からは「乱婚型」と言わざる得ない特徴もあります。しかし乱婚型のままでは、霊長類のなかで飛び抜けてコストのかかる子育てに資産(時間や労力)を投入しづらいという状況もあったのかもしれません。


まとめ

排卵サインがわからない理由は、わかるとどうなっているのか、と考えることで推測しやすくなります。排卵サインがわかると男が子殺しをする可能性がある世界があったためです(人間社会にも以前ありました。そして、子どもへの虐待が、新しい夫によって行われることが多いことからも伺えます)。現代社会に生きるわたしたちにとっては、排卵時期がわからないことを不便に感じることが多々あるかもしれませんが、じつはわからないことによる恩恵もまたあったようです。


論拠

この推論について詳しく説明されているのが、ジャレド・ダイアモンド氏の『人間の性はなぜ奇妙に進化したのか』です。


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