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幸せと前進を生み出す、認知バイアス 「楽観主義バイアス」

「認知バイアス大全」マガジン

人間は不合理な行動をよくしていますが、これは認知バイアスという進化の過程で獲得した生き抜くための工夫のバグ具分によるものである場合が多い。そんな認知バイアスを集めたのが、認知バイアス大全マガジンです。


離婚率を知っても、ひとは自分たちは離婚しないと考える

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人は、ネガティブな可能性に関して自分たちを例外だと思っています。

ヨーロッパの離婚率は40%です(ちなみに日本の離婚率は35%(※3))。この事実を示しても、結婚したばかりの人たちに「あなたたちの離婚する確率は?」と尋ねると、ほとんどの人が「0%に近い」と答えます。しかし、彼らが確率の外にいる存在なわけではないため、そう応えた夫婦の40%が離婚します。(ところで楽観主義バイアスが強いひとは、離婚率が高いが、再婚率も高い。

1709年生まれの英国の文学者、サミュエル・ジョンソン(Samuel Johnson)が、結婚に関してこのような言葉を残しています。

再婚とは、経験に対する希望の勝利である。
Remarriage is the triumph of hope over experience.

Samuel Johnson

このように人は、確率を目の前にしてもなお自分たちの未来を楽観視する傾向を持っています。これを楽観主義バイアスと言います。

楽観主義バイアス

楽観主義バイアス(Optimism bias)とは、

悪い事は自分には起きないと考える傾向

です。楽観主義バイアスは、性別、民族、国籍、年齢を超えて一般的に見られるもので、ラットや鳥などの動物にもあります。楽観主義バイアスは、様々な場面で見られます。例えば、犯罪被害者になるリスクが低いと考えること、喫煙者が他の喫煙者よりも肺がんになる可能性が低いと考えること、トレーダーが市場での潜在的な損失にさらされる可能性が低いと考えることなど。この楽観主義バイアスを説くのは、University College Londonの教授、ターリー・シャロット博士。

Tali Sharot 博士は、University College Londonの教授
source: CNN “Why we fool ourselves into optimism”

シャロット博士の楽観主義バイアスについては、2012年のこちらのTEDで動画としてもみることができます。


楽観主義バイアスはわたしたちを前進させる力を持っている

楽観主義バイアスは、さまざまなケースで、失敗や死を招くことにがあります。とてば、消防隊員にとって、楽観主義バイアスは命を危険にさらすものです。しかし警戒しながら、楽観主義バイアスを取り入れるとき、わたしたちは、前進するスピードを高めることが可能になります。そして万が一にも備えているので、大怪我をさけることもできます。

ネガティブな出来事についての楽観主義のほうが強い

楽観主義には、ネガティブな出来事とポジティブな出来事の両方に対して発生します。ポジティブな出来事とは、自分は他者より経済的成功しているという具合のこと。ネガティブな出来事とは、自分はアルコール依存症にまだなってないという具合のもの。

ポジティブな出来事は幸福感や自尊心につながることが多いのに対し、ネガティブな出来事は、危険な行動をとったり、安全のための予防措置をとらなかったりするなど、より多くのリスクを伴う結果をもたらします。また依存症対策が後手に回る要因にもなります。

楽観主義バイアスをハックする

さてこの楽観主義バイアスには良い面と悪い面があります。バイアスとは合理的ではない認識の歪みですから弊害はあります。悪い面は、リスクを低く見積もるというところ。投資においては失敗の可能性を増やしますし、消防士なら生死に関わる判断ミスに繋がります。逆に良い面は、楽観主義バイアスは、わたしたちの人生を前進させる力を持っていることです。

楽観主義バイアスのハック(1):楽しみ=長続きする幸せ

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わたしたちの幸福は、嬉しかったり楽しかったりする出来事が起こっている最中だけでなく、それを予想している間にも高まります。あなたの大好きな俳優(女優)と熱烈なキスができるという権利をお金で買えるとします。今すぐ、1時間後、3日後、1週間後にそれができるとしてそれぞれいくら払いますか?という質問に最も多くのお金を払うと応えたのは3日後でした。なぜならキスができるその日まで、楽しみにできるから。ショートケーキのいちごをすぐ食べない動機と同じです。この「楽しみにしている間」も人は幸福を感じることができるのです。というか、この期間のほうが幸福といえるほどです。

楽観主義バイアスのハック(2):結果に負けない幸福度

楽観主義バイアスが強いと成功しようと失敗しようと、楽観主義ではない人より高い幸福度をキープ出来ます。たとえば、楽観主義者は、恋人に振られても、あまり自分が悪いと考えません。相手を見る目がないと考えたり、そういうこともあるか、と考えたりします。プロジェクトに失敗しても、時期や状況を原因と考えます。逆に悲観主義であるなら、成功も「たまたまうまく行った」と解釈し、失敗は自分のせいだと感じます。どうあっても不幸になってしまいます。楽観主義者は、どうあっても幸福のままでいる、と言えます。

楽観主義バイアスのハック(3):未来を変える力

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楽観主義者は、「うまく行く」と思っているので、その未来を楽しみに努力ができます。いうなれば、成功を現実に引き寄せる力を持っていると言えます。「美人の隣にいられるのは、美人に声をかけた男だけ」と言われますが、これが楽観主義バイアスの3つ目の良い面をうまく表現しています。「きっとうまく行く」と考える人は、怠惰に過ごすというより、努力する力を得ています。


対策・応用

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目標を実現させ、かつ幸せになるは、リスクを警戒しつつ、楽観主義バイアスに身を委ねる

楽観主義バイアスは、さきほど触れたように、ときに生命の危機や損失のリスクを高めます。それには警戒しつつ、しかし楽観主義は手放さない。そうすれば、目標の実現前から幸福であり、あつ実現にむけて努力を注ぎ続けられます。

ターリ・シャロット博士は、この楽観主義バイアスのハックについて、こちらのTEDの15:44あたりで解説しています。シャロット博士は、こちらの漫画を使って端的にそれを説明しています。

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source: TED ターリ・シャーロット: 楽観主義バイアス

楽観主義のペンギンは、飛べると思って崖から飛び降りるが、楽観主義バイアスを知ってなおその恩恵をハックしようとしているペンギンは「飛べると思うが、飛べなかったときにも備える」ことをします。


オススメの本

楽観主義バイアスの良い面、悪い面に詳しい(そして美人)ターリ・シャロット博士の著書。


関連した認知バイアス

公正世界仮説(Just-world hypothesis)

この世界は人間の行いに対して公正な結果が返ってくると考える傾向。



参照

※1:Optimism bias

※2:TED ターリ・シャーロット: 楽観主義バイアス

※3:日本の夫婦の離婚率は35%!実態と原因・離婚回避のためにできること


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