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人間は、それっぽいことに弱い。 認知バイアスの 「合接の誤謬(ごびゅう)」

認知バイアス

認知バイアスとは、進化の過程で獲得した生き残るための工夫のバグ部分。こちらのマガジンでまとめています。


問題です。リンダはどんな女性でしょうか?

独身女性、外交的、とても聡明、専攻は哲学、差別や社会的正義の問題に強い関心を持っている……

以下は、リンダのプロフィールです。リンダは31歳の独身女性です。外交的でとても聡明です。大学での専攻は、哲学でした。学生時代には、差別や社会的正義の問題に強い関心を持っていましたし、反核運動に参加したこともあります。さて、現在のリンダについて推測する場合、(A)と(B)のどちらの可能性が高いと思いますか?
(A)リンダは銀行員である。
(B)リンダは銀行員で、フェミニスト運動もしている。

(ダニエル カーネマン著『ファスト&スロー』より)

答え

わたしたち人間の多くは、(B)の「リンダは銀行員で、フェミニスト運動もしている。」を選びがちです。しかし、確率から言えば、(A)のほうが高い。

条件が増えるほど、もちろん確率は下がります。しかし……

Aである可能性よりもAであり且つBである可能性は小さくなるためです。しかし、実際には、多くの人が、Bの「リンダは銀行員で、フェミニストである」を選びます。それはなぜか?

なぜなら、Bのほうが「それっぽく見えるから」。

リンダの描写は「フェミニスト」の典型的なキャラクターを示しています。それゆえにひとは「リンダはフェミニストであるだろう」と直感的にイメージします。そのため、フェミニストという言葉が入っている言葉を選びます。このようにふたつの事象が重なること合接(Conjunction)と呼びます。ちょっとむずかしいこの言葉は、論理学で「二つの命題がどちらも真」という意味です。このように合接したものを単体よりも可能性が高く感じてしまうことを「合接の誤謬(ごびゅう)」といいます。「誤謬」とは「間違い」を難しくした言葉です。これも論理学で使う表現です。


合接の誤謬

合接の誤謬(conjunction fallacy)とは

特殊なケースの方が一般的なケースより起こりやすいと考える錯覚

です。認知バイアスのひとつ。上記の例は、リンダ問題(the Linda problem)と呼ばれています。どうしてこのような間違いを犯すのかというと、それは、わたしたちに「典型的なイメージはよく存在している」と考えてしまう傾向があるためです。この傾向を「代表性ヒューリスティック」といいます。


対策

計算する or 図にする

人間はとかく確率がものすごく苦手です。なぜならそんなものなく100万年ちかく生きてきているからです。みんなが弱いことに対して強くなるとばっちりアドバンテージを手に入れられます。そんなわけで、重要なことに関しては計算する習慣を持つことで、この認知バイアスを克服できます。

応用

物語を使う

人間は確率に弱い一方で、物語に強く惹かれます。ストーリーとキャラクターを結びつけると惹かれる度合いが強くなります。人を魅了する情報を提供したいとき、物語、キャラクターの創造に注力すると良いでしょう。


オススメの本

『ファスト&スロー』ダニエル・カーネマン(著)

ノーベル経済学賞を受賞した、ダニエル・カーネマン博士が、この合接の誤謬やその他の認知バイアスに関して、こちらの本でわかりやすく解説しています。



関連した認知バイアス

基準率の錯誤(Base rate fallacy)

イメージしやすい特殊な数字には敏感に反応する一方で、統計的な一般的な数字は無視する傾向。


代表性ヒューリスティック

あるものの代表的な特徴(典型的なイメージ)と合致しているならば、それに近いだろうと直感的に判断すること

ヒューリスティック(heuristic)とは、「正しい保証はないけれど、すぐに判断する割にまあまあ正しい可能性が高いこと」です。心理学的には「発見的手法」という意味になります。ヒューリスティックには、この代表性ヒューリスティックのほかに利用可能性ヒューリスティックというものもあります。こちらは、「主張を何度も聞いているうちに、真理であると集団で確信する傾向」を意味したヒューリスティックです。


認知バイアス一覧

認知バイアスをこちらの記事で一覧にしています。


参照

※1:Conjunction fallacy

※2:連言錯誤conjunction fallacy

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