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認知バイアス大全

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賢い人も含めて、わたしたち人間が「頭の悪い行動をしてしまう」理由は、だいたい認知バイアスによるものです。認知バイアスとは、進化の過程で得た機能の「バグ」。この認知バイアスの良いと… もっと読む
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後悔は人生に役にたつ。 認知バイアス 「反事実的思考」

銅メダリストは、銀メダリストより幸せな理由オリンピックメダリストの場合、銅メダリストのほうが、銀メダリストよりも結果に満足していることが多いようです(※1)。銀メダリストは、「もし、ああしていれば」という、過去についての「選ばなかった選択」について考えるとき、その「選ばなかった選択」の結果が、金メダル獲得という「今より上の事実」を想起します。一方で、銅メダリストは、同じように「もし、ああしていれば」という過去の「選ばなかった選択」について、考えるとき、その想起する「選ばなかっ

「それっぽさ」が判断を歪めてしまう 「代表性ヒューリスティック」

認知バイアス大全マガジン人間の不合理な行動には、認知バイアスが大きく関わっていることがあります。そんな認知バイアスを紹介しているのが、認知バイアス大全マガジンです。 メガネをかけているだけでガリ勉にみえる度の強い眼鏡をかけていたらガリ勉と自動的に推測してしまう。これはわたしたちに「度の強いメガネの学生」=ガリ勉というステレオタイプなイメージがあるためです。漫画の描写から学習したのかもしれませんが、このような「それっぽい」というイメージをわたしたちは、さまざまなものに対して持

投資やギャンブルで、「きてる!」、「もってる!」と思ったら要注意 「ホットハンドの誤謬」

「認知バイアス大全」マガジン認知バイアスとは、人間が進化の過程で獲得した生き抜く工夫……のバグ部分。不合理な判断、行動を起こさせます。そんな認知バイアスを集めたマガジンが「認知バイアス大全」マガジンです。 コインをトスして3回連続して表が出ると……コインを3回表ができると人は、次も表が出る気がしてきます。こうして確率に対しての認知に歪みが生じます。これをホットハンドと呼びます。ギャンブルで負けが続くと次もまた負ける気がしてきますが、これを逆に「コールドハンド(Cold ha

236の認知バイアスの一覧

認知バイアスとは認知バイアスとは、人間にある思考や判断の偏りです。わたしたちは、認知バイアスを知らないことで、知らないうちに合理的ではない判断をしたり、記憶を歪めたりしています。しかし「認知バイアス」の知識を獲得すると、こういった人間のバグを回避できるようになります。 認知バイアス「認知バイアス大全」マガジンにまとめています。 認知バイアス一覧

人の記憶は3年前をさかいにして歪んでしまう 「望遠鏡効果」

あれいつだったかな?人間は確率に弱いのですが、「いつだったのか」ということを思い出すことも苦手です。わたしたちの脳や身体は狩猟採集生活を前提としたままですが、狩猟採集生活では、「いつだったのか」を正確に思い出すニーズはあまりありませんでしたから。これがおもしろいことに3年前をさかいにして歪み方が変わります。これを望遠鏡効果(Telescoping effect)と言います。 望遠鏡効果 望遠鏡効果(Telescoping effect)とは です。これ、なぜか3年前が境目

ツラかったことは覚えているが、その長さは忘れる 「持続の軽視」

ツラいことについて人は継続時間は記憶しない?ダニエル・カーネマン(Daniel Kahneman)とバーバラ・フレデリクソン(Barbara Fredrickson)は、ある研究で、被験者に観ていて楽しい動画と嫌悪を感じる動画を見せました。その後で動画について被験者に振り返ってもらうと被験者たちは刺激の長さについては考慮せず、内容にのみ着目していました。まるで一連の感情的な「スナップショット」であるかのようにそれらを記憶していました。(※3) また、カーネマンとフレデリクソ

選択肢が増えるとちょっと不幸になる!?  「区別バイアス」

問題:どちらが嬉しい?あなたが買い物をしていると「キャンペーン中につき、購入金額の一部がキャッシュバックされます」といわれます。つぎの2つの言われ方のどちらのほうが嬉しいですか? ふたつの言い方を同時にみせられると(2)の「10%をキャッシュバック!」のほうに魅力を感じます。しかしこれらを別々に見せられると魅力度にあまり差が生じません(※2)。このように、複数の条件を同時に比較した場合と別々に評価した場合で、評価が変わることがあります。これを「区別バイアス」といいます。

あらかじめ設定されているものをそのまま受け入れてしまう 「デフォルト効果」

メールの署名設定をしないままにしている…わたしたちは、デフォルト設定をそのままにしがちです。 上のグラフは、各国の「臓器提供の同意率」を示しています。左4カ国(デンマーク、オランダ、イギリス、ドイツ)と右の7カ国(オーストリア、ベルギー、フランス、ハンガリー、ポーランド、ポルトガル、スウェーデン)には大きな隔たりがあります。国民性の違いでしょうか。じつはこれ「臓器提供の質問の仕方」が違うために生まれている差です。 同意率が低い左4カ国では、臓器提供をしてもよいという人が意

選択肢に「お得なもの」があるとき、そこには「おとり効果」が使われているかも?

甲乙つけがたい2択にもうひとつの選択肢を加えるあなたはあるメーカーに勤めており、消費者にぜひ買って欲しい自社の製品、商品Aと、絶対に買って欲しくない他社のライバル製品、商品Bが存在しているとします。商品Aと商品Bには、どちらも優れているところと劣っているところがあり、消費者は、購入時にどちらを選ぶか迷うことが多い。このような状況に対して自社の「商品A」に対してあらゆる点で劣っているが、他社の「商品B」よりは優れているところも劣っているところもある「商品C」を投入するとします。

人間は、それっぽいことに弱い。 認知バイアスの 「合接の誤謬(ごびゅう)」

認知バイアス認知バイアスとは、進化の過程で獲得した生き残るための工夫のバグ部分。こちらのマガジンでまとめています。 問題です。リンダはどんな女性でしょうか?答え わたしたち人間の多くは、(B)の「リンダは銀行員で、フェミニスト運動もしている。」を選びがちです。しかし、確率から言えば、(A)のほうが高い。 Aである可能性よりもAであり且つBである可能性は小さくなるためです。しかし、実際には、多くの人が、Bの「リンダは銀行員で、フェミニストである」を選びます。それはなぜか?

「自分の説を正しい」と思い込むための検証を繰り返す“適合バイアス”

自分が正しいことを証明するためのテスト研究者に限らず、わたしたちは自分たちの説や自分たち自身が正しいということを証明するために、検証しようとしがちです。たとえば「Aさんは、意地悪いで心が狭い」という仮説。Aさんが意地悪である根拠を示し、そして探します。見つけたり、こじつけたあとに「ほら、やっぱりAさんは意地が悪い!」という結論を出します。自分自身に対しても、自分の味方だと考える誰かに対しても、これを証明し、同意を得ようとします。これが(卑近なバージョンの)「適合バイアス」です

人間は無意識にサボってしまい、それに気づかない 「置換バイアス」

問題です次の問題にあまり深く考えずに答えてください。 いくらと答えましたか? わたしはボールは10セントと答えてしまいました。みなさんもそうだったら嬉しい(笑)。これは間違いです。ちょっと「ちゃんと」計算してみましょう。 この計算をせずに、わたしたちは、直感的に1.1ドルから1ドルを引いてボールを10セントという答えをだしがちです。この「ざっと計算したことにしてしまう」という行為を置換バイアスといいます。 置換バイアス置換バイアス(substitution bias)[

世界は悪化していると考えてしまう「凋落主義」

凋落主義 凋落主義(ちょうらくしゅぎ)(Declinism)とは です。過去を現在より好ましく思い、未来を悲観します。「バラ色の回顧」とほぼ同じ。バラ色の回顧(Rosy retrospection)とは「過去の出来事を、その時よりあとになってからのほうが良い評価を与えて、思い出す傾向」です。 なぜ起こるのか?認知バイアスのひとつ、ポジティブ効果(Positivity effect)というものがあります。これは「高齢者が記憶の中でネガティブな情報よりもポジティブな情報を好む