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2024.4.12 そばの香りを考える。 〜脂質と香り〜

4月12日(金)
大手のお客様からそばの「香り」についていくつか宿題をもらっています。
美味しさをアップし続けようという流れの中で、今までは「食感」が最重点項目だったのですが、これについてはかなり改善されたので、次は「香り」ということです。

ただそばの「香り」は一筋縄ではいきませんよね。
今日は「香り」について新しく分かったことではなくて、既に分かっていることをみなさんと確認していきたいと思います。


そもそもそばの美味しさについてお話すると、
次の3つの要素に分解できます。
①五感で感じるもの(味、香り、食感、見た目・・・)
②生理的なもの(病気のとき、空腹のとき・・・)
③心理的なもの(付加的情報、バイアス:産地、品種、どこで誰と・・・)

このなかで①五感(聴覚を入れないので実質四感)を深掘りして見える化したいというのが私のライフワークです。しかも今年は「香り」に着目していたので、お客様からの要求とたまたま合致した感じです。


まず、通常の食品の「香り」はGC-MSで香りの成分を測れば分かるのですが、そばの香りってとても微妙なので測定が非常に困難です。
しかもそばの香りは、どんな香りのことを言ってるのか?みんな同じ香りのことを言ってるのか?ここが体系的になっていません。
なので「言語化」から始めようとしてるのですが、明確に言葉にできる人がほとんどいないと感じています。

私的には、「ナッツ系の焙煎された甘い香り」と言語化していますが、殻由来とか土由来の田舎系の香りを指している人もいるように思います。
(そういう人には黒く挽けば満足してもらえますが・・・)


で、その「ナッツ系の甘い香り」と仮定して話を進めると、
その香りはそばの実のどういう部分にいっぱい含まれているか?
なんですが、成分的には脂質に含まれていると言われています。

・香り→脂質
・味→タンパク質
・食感→炭水化物(でんぷん)
これらの成分が五感相当の指標になります。

ただ、味と香りは「クロスモーダル」といって、影響し合って頭の中でごっちゃになるので、まあだいたい・・・という感じだと思います。

実際には・・・
脂質は甘皮や胚芽に多く含まれていて、胚乳部分にはあまりありません。
タンパク質も同様に甘皮や胚芽に多く含まれているので、甘皮や胚芽を綺麗に挽き込んだそば粉は味と香り(つまり風味)が強いということになります。
ただ、三番粉みたいになると、風味を通り越してえぐみが出てくるので、バランスは大切です。


じゃあ、どんな原料だと風味が強いか?ですが、
未熟粒の方が胚乳部分が少ないのででんぷんが少なく、相対的に脂質やタンパク質が多くなります。
つまり理論上は、未熟粒の方が味香りが強いことになります。


まとめると・・・
「香り」に特化した粉を作るには、
未熟粒の多い2等または規格外の原料を使って甘皮や胚芽も十分挽きこんだバランスのよい製粉をするのが答えになります。

ここまでは既に分かっている部分です。
(多少異論がありますが・・・)

個人的には粗挽きで、加水を少なくして、茹で時間を少なくすると香りがいいように思うのですが・・・
ここら辺は仮説検証を繰り返していく必要があります。

さらに、香りには「鼻先香(はなさきか)」と「口中香(こうちゅうか)」と2種類あって、おいしさについては「口中香」に着目することになります。
ここも含めて今後とも「香り」について深掘りしていきます。


それでは本日もよろしくお願いいたします。


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