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2021.4.16 「寒ざらしそば」の科学的考察

4月16日(金)
今朝は、今販売中の「寒ざらしそば」について考察してみたいと思います。少し難しいこともお話ししますが、なるべく簡単に説明しようと努力しますので、ぜひ、ついてきてください。

江戸時代「寒ざらしそば」は、「蕎麦」という庶民の食べ物が、寒ざらし処理をすることで、藩の威信をかけた将軍家への「献上品」になりました。
少なくても当時の人々はそこまで凄いもの・・・といった認識だった訳です。
では、寒ざらし処理することによって、何がどう変わるのか?
今まで科学的に分析した結果から、少し深く考察したいと思います。

その考察の基となるのは、20年前に「食品総合研究所」「筑波大学」「山形農業試験場」が発表した論文です。鈴木製粉所がかかわって調べたものです。
このとき分かったことは、
・GABAの増加
 →血圧降下、ストレス軽減に期待
・全ポリフェノール量の低下
 →えぐみ軽減の可能性あり
・遊離アミノ酸組成の変動
 →真冬でもタンパク分解酵素が働いた
 →味の変化の可能性あり

これらは、その後長野での調査でも似たような結果と聞いています。

ただし・・・、単糖類、二糖類の増加は測定されていません
つまり、直接の甘味成分である糖は増えていないことになります。
もっというと、でんぷんが分解されていない事になります。タンパク質は分解されてるのに。

数年前、アミラーゼ活性(でんぷん分解酵素)を測定してみましたが、やっぱり酵素が活性化されていませんでした。つまり、でんぷんが分解されて甘味のある糖に変化していないという事になります。

ここ、ちょっとモヤモヤするんですね。
では、あの甘味はどこからくるのか?

えぐみのマスキングが取れたことによって感じているのか?
アミノ酸から感じるのか?
そもそも、蕎麦における甘味とは何か?


これは私の仮説ですが、気温・水温等の条件よって出来栄えが左右されるため、そばの実内部の代謝物(酵素分解等でできる物質)も毎年異なると考えています。なので、もしかすると、年によっては分解酵素が働いて、糖が生成されていることもあり得るのではないか?

事実毎年寒ざらしそばの出来栄えは異なります。

つまり寒ざらしそばは、そういった酵素による分解条件のギリギリの所を狙っているのではないか?とも思っています。
そばの実としては大きな変化が起こっているけど、発芽によって品質が悪くならないギリギリ前・・・そこを狙っているというイメージです。特に寒風に晒しているとき、日中の気温で発芽準備の分解酵素は働くけど、夜寒くなるので発芽まではしないというギリギリの線です。

今年は「慶應義塾大学先端生命科学研究所」との共同研究で、代謝物を分析していただいているので、もう一歩深い部分が分かることを期待しています。

それでは今日もよろしくお願いいたします。

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