日産がNACS採用へ、どうなるCHAdeMO?!
はじめに
7/20朝刊やリリースも出ていますが、日産がNACS採用を決めたと公表し、アジア/日系で初のNACS採用に舵を切りました。北米展開に限っており、CHAdeMOはまた別文脈で語られるとは思いますが、大きな動きであることは間違いないであります。
今回の動きと、CHAdeMOのおさらいをまとめてみました。
1;日産の発表
日産は2025年からのNACS採用でTeslaと合意したと公表、施策は下記の通りで他社と同様の[アダプタ対応]→[新モデルへの搭載]ですがアジア地域では初の提携公表となる。
(1)2024年以降発売のアリアにNACSアダプタを提供
(2)2025年以降の北米生産のEVにNACS充電ポートを標準搭載
先に発表している[Nissan Ambition 2030]では2030年までに米国のEV販売比率を40%以上とする目標で、達成への貢献が期待される。
2;日産のNACS採用の影響
日産の北米主力EV;アリアはバイデン政権による補助金対象である[CCS-1]を充電規格として採用するが、昨今のNACS無双/バイデン政権の補助金対象へのNACS採用が後押しした。
[Nissan Ambition]での2030年の電動化目標達成には利便性提供が必要不可欠と判断、北米の急速充電網で7割近いシェアを持つSuperChargerへのアクセスへの道筋をつけた。ちなみに当該計画は下記を含む
(1)2030年までにEV19車種を含む27車種の電動化車両を新たに導入
(2)2030年までの日産/INFINITIブランド全体の電動化比率目標として55%に
(3)2030年に米国で発売するEVの販売構成比を40%以上にする
日本独自の充電規格である[CHAdeMO]に関しては引き続きアジア地域での普及促進に向けた旗振りは行う想定
3;CHAdeMO規格について
2010年に日本主導して規格化したEV急速充電方式で、急速充電実施時には車両-充電器での交信/残量確認/充電のフローが必要で通信規格が求められるために設定。急速充電機だけでなくV2L充電器/コネクタにも適用され、協議会を通じて機能拡張が実施。具体的には下記。
-21年;最大900kWの出力が可能に
-22年;中国電力企業連合会と次世代充電規格;ChaoJiを共同開発スタート
-23年;CHAdeMO4.0(Ultra-ChaoJi)の仕様書発行予定
CHAdeMOの充電順序(シーケンス)は下記となり、要所でデータ授受が行われる。このデータ流通をリアルタイムで監視して即応対応できる点に強みがあるとされる。
1;EVと充電ステーションを接続
2;EVと充電ステーションの互換性を確認、EVが準備完了状態に移行
3;充電コネクタとEV接続[車両コネクタロック]を行う
4;給電開始
5;EVから充電停止命令を送り充電が終了
6;車両コネクタロックが解除
7;支払い手続き
A;世界での急速充電規格
EV急速充電は大きく4つの規格が存在し、地域特性に合わせて各国プロバイダがサービス提供してユーザに快適な充電体験を提供する
└北米/欧州=CCS、北米=NACS、アジア=CHAdeMO、中国=GB/T
性能競争の主戦場は大出力充電への対応で、特に長距離走行メインの北米/欧州では一充電あたり航続距離&充電時間が肝要。急速充電規格としてのCCS-2及びNACSが陣取り合戦しつつも、昨今ではアダプタ介した相互互換性を模索し始めていることは当該領域が既に非競争領域であることの証左なのかも…
CHAdeMOの海外設置個所は徐々に増加しており世界全体で50,000基設置され、うち海外では40,000基程度が設置される。
B;CHAdeMOの課題
国内での設置個所は10,000基程度でピークアウトしており、補助金頼み/充電機能の弱さといった点が課題に…。普及タイプ充電器はProtocol1.0からの深化が進まず、充電機能に相当な制限がある
(1)最大電圧500V/最大電流125AのDC急速充電規格は、実効充電出力が50kWが最大で20-30kWのものが大半を占めている…
(2)2014年以降の補助金でコンビニ等での設置が進んだが、充電時間制限や機材老朽化(による廃止)などで長距離走行には適したインフラ環境整備に至っていない現状も…
C;今後
CHAdeMOの技術的潜在性は高いが実用性に欠ける点が課題で、ユーザ起点で考えたビジョン設計と達成への道筋設計が求められると思われる
-(充電器)グローバルではABB、国内では椿本チェインなどの急速充電機開発に力を入れる企業と連携して充電器の開発にリソース投下
-(設置)目的にで充電器に求める性能が異なるところ、急速充電機をSA/PAや道の駅/ホテルといった観光要所に設置、普通~低急速充電がコンビニ/郵便局などに設置してニーズに沿った設置
-(補助策)むやみやたらな設置で無く、充電を事業として位置づけて補助金でなく税優遇や規制緩和といった観点で進める必要
もちろんEVの普及が促進されないと上記も絵に描いた餅ですが、ニワタマ問題…結局はユーザ目線に帰るってのが大事だと思われます。
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