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SVB破綻の顛末と裏話

はじめに/まとめ

 SVBが破綻/救済買収されて期間がたったところ、徐々に内幕が明らかになってきたのでちょっとまとめてみましたのだ。スマホによる即時取引の浸透と、そこに対応できていない規制/ルールの差異が本件の背景にはありそうだなあと。日本でも対岸の火事ではないと思うのです。oさん

SVB破綻への顛末

破綻のきっかけと対応

 2023/3/8にSVB社は有価証券売却(210億USD)に伴う18億USDの純損失を発表すると同時に増資計画を公表、決算結果に懸念を持った預金者が他行に預金を移す行動に出たことで資金繰りが悪化、大規模な資金調達が必要な状況に。
 その背景には下記の3つの流れがあったと認識です。
(1)そもそも、スタートアップの預金率が高く、[資金調達→SVBに預金]という行動がデフォだった
(2)有価証券運用での失敗で現金化が難しいプロダクト保有に(長期金利上昇→債券価格下落→保有債券の減損)
(3)コール市場での資金調達コストも上昇して、日繰りの資金に事欠く状況・3/10にことを重く見たFDIC(預金保険公社)はSVBを管理下に置き、資金供給を実行

Start-up界隈への影響

 SVBはスタートアップが調達した資金の預け場所(置き場所)で、当該資金を用いた融資も手掛けておりスタートアップの資金繰りに関してハブ的な役割を担っていた。
 本件の一般事業会社への影響はほぼないが、スタートアップでは一時的にDebt調達(融資/債券)が厳しくなることが想定される…理由としては、
(A)SVBがスタートアップ融資の筆頭企業であったことや、市場のスタートアップに対する懐疑的な見方から出し手が極端に不足
(B)ちなみに、SVBの預金β(短期金利と預金金利の変動率)は70%で、他行の40-50%に比べて高い状況であった
 Equityでなく運転資金を融通する需要はスタートアップで高く、融資機能/債券投資機能を持つ事業会社やCVCには投資につなげる機会として千載一遇の機会にし得るのではないかと。

裏話的な(Wall Street Journalより)

 SVBでは3/9に42Bln/USDの預金がスマホ取引を通じて即時に流出、発達した送金速度の向上をベースとするFintechビジネスに既存の規制枠組みが対応できなかった…資金流出とそこへの対応の顛末は以下の通り
(1)資金流出→ご近所公的機関に助けを
 資金流出を受けて、SVBはFHLB(連邦住宅貸付銀行)に20Bln/USDの融資を住宅ローン債権などを担保に要請。FHLBから了解を得るも資金規模が大きすぎて先方で処理できず…
(2)お断りからのFRB泣きつき
 お次はFRBの緊急融資を受けようと申請、担保として住宅ローン債権を求められ、先にFHLBに差し出した担保をFRBに移すように依頼
 しかし、SVBは既にFHLBから融資を受けており、その担保と相殺をする必要が発生。そして計算に時間がかかることが判明
(3)最後は力業に…
 最後に証券管理銀行;BNYメロンを通じて当該融資担保となる債券を移動させようと依頼(FHLBからFRBへの移動)。
 しかし、保管口座からFRBへの移動指示を受理するBNYメロンの締切時間をオーバー…SVBは必死に説得、それを受けたBNYメロンはFRB/NY連銀と調整して、担保を移す処理を完了
 さらにしかし、FRBでは担保移動には事前テストが必要となっており、時間が足りず。結果として右往左往したものの3/9に巨額の流出が発生した…


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