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鈴掛真の短歌

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#エッセイ

短歌 新作7首 『人として』

子どもの頃、大人になればなんでもできると思っていた。 まだわからない社会の仕組みや、納得のいかない理不尽なルールが、大人になればぜんぶ理解できるようになると思っていた。 けれど、大人になったって、できないことや知らないことはちっとも減っていかないし、むしろ大人だからこそ、守らなきゃいけないたくさんの制約に縛られてしまう。 大人として? 男として? いや、混沌としたこんな世の中を、僕はただのひとりの人として生きていたい。 そんな気分を、7つの短歌で書いてみました。

短歌 新作7首 『割り切った関係』

僕らはいつからか、多くを語るのを辞めてしまった。 時代とともに簡略化される意思疎通の中で、行間を読むのに慣れてしまったり、あえて行間を読まなかったりする。 もしも行間を、すべて言葉で埋めたなら、僕らはいがみ合うだろうか。 それとも、幸福になれるだろうか。 そんな気分を、7つの短歌で書いてみました。 第一歌集『愛を歌え』には収録されていない新作です。 もしも気に入っていただけたら、ぜひ『愛を歌え』も読んでみてくださいね。 あの俵万智さんが帯文で「今を生きる愛の名言が

短歌 新作7首 『バースデー』

目に見えず、手に触れられず、形にできない愛情。 そんなあやふやで、曖昧で、不確かなものを手綱にして、僕らは信じ合ったり、傷つけ合ったり、いがみ合ったりしている。 そんな気分を、7つの短歌で書いてみました。 第一歌集『愛を歌え』には収録されていない新作です。 もしも気に入っていただけたら、ぜひ『愛を歌え』も読んでみてくださいね。 あの俵万智さんが帯文で「今を生きる愛の名言が、ここにある。」と太鼓判を押してくださった、295の短歌で綴った物語です。 『バースデー』 

短歌 新作7首 『透明なナイフ』

愛情は、暗闇から人を救いだす光にもなれば、人を拒んで傷つける凶器にもなりえる。 傷つけて、傷つけられて、小さな傷跡が少しずつ増えてゆき、気がついた頃には、もう立ち上がれないほどずたずたになっていたりする。 別れは突然なんかじゃない。 きっと見えない形で、今日も少しずつ足元を揺るがしている。 そんな気分を、7つの短歌で書いてみました。 第一歌集『愛を歌え』には収録されていない新作です。 もしも気に入っていただけたら、ぜひ『愛を歌え』も読んでみてくださいね。 あの俵万

年賀状は印刷に頼らない男。'20

新年の挨拶は今や、「今年もよろしく!」とSNSに一言だけ投稿すれば済んでしまうから、わざわざ手間とお金をかけて年賀状を用意する人は少なくなってきました。 仲が良くても住所は知らない友達っているし、年賀状を送りたいがために住所を聞くってのも、学生の頃はクラスメートを相手によくやったけど、大人同士になると気味悪がられそうだし。 それでも僕は、仕事で関わりのある人を中心に、毎年数十枚の年賀状を用意して送っています。 それも、表面の宛名と差出人も、裏面のデザインとメッセージも、1

短歌 夏の新作8首 『冬のすいか』

令和初めての夏も、終盤に差し掛かりましたね。 変わらないことで得られる安心感。 変わらないことで募るマンネリズム。 それでも今日という日を生きられることに感謝して、明日という日がやって来るのを待っている。 そんな日々感じているモヤモヤを、8つの短歌で表現してみました。 タイトルは『冬のすいか』。 夏だけど。 僕が所属している短歌結社「短歌人」の同人誌では毎年8月に、若い会員が腕を競い合う20代30代特集が行われていて、今年はこの連作で参加しました。 先月発売したばか