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「聴覚障害者のソーシャルワーク」社会福祉のレポート作成の参考にどうぞ。

「聴覚障害者のソーシャルワーク」を参考に聴覚障害者の生活上の諸問題にかかわる相談援助における専門性についてまとめた読書メモです。広く発信したいと考え、noteに投稿します。後半部分は有料です(本文3997文字)。

✔聴覚障害者のソーシャルワーク,原順子,明石書店,2015
✔聴覚障害児・者支援の基本と実践,奥野英子,中央法規出版,2008

参考図書

聴覚障害者の多様性

「耳が聞こえない人」と一言でいっても、個々の聴力、失聴時期、コミュニケーション手段、受けた教育、アイデンティティ、世代に応じた生活史の相違など、聴覚障害者は多様な状況である。聞こえない人を表す用語も、聴覚障害者、ろう者、難聴者、中途失聴者などと多様である。

聴覚障害者の当事者団体である全日本ろうあ連盟(2007)は、聴覚障害者は、失聴の時期、聴力程度、育った環境、受けた教育的条件などに相違があり、その障害の困難性や特性などを一律的に判断することは避けるべきであるとしている。

コミュニケーションの手段についても、手話、口話(発音発語・読話)、補聴器利用、筆談・要約筆記などがあり、聴覚障害者個々の状況によってコミュニケーション手段が異なっているので、それぞれの聴覚障害者が使用するコミュニケーションの方法やニーズを的確に受け止めた対応が求められるとしている。

全日本ろうあ連盟は、「自己選択 ・自己決定の観点からみた聴覚障害者の対応能力」による分類を以下のようにおこなっている(2007)。

(1)日本語の理解があり、読み書きや手話使用の能力のある聴覚障害者の場合、手話通訳や筆談・要約筆記による情報・コミュニケーションのサポートで自己選択・自己決定が可能である。
(2)難聴・中途失聴の障害で、普通学校で教育を受けた者は、補聴器使用、筆談・要約筆記による情報・コミュニケーションのサポートで自己選択・自己決定が可能である。
(3)手話を日常的なコミュニケーションとして使用しているが、日本語の獲得が十分ではなく、読み書きの能力に制約がある者には、手話通訳による情報・コミュニケーションのサポートだけでなく、自己選択・自己決定をおこなうための説明、助言・相談支援などが必要であれう。
(4)標準手話が使えず、読み書きの能力も非常な困難が伴う者には、身振り的な手話を中心とした情報・コミュニケーションのサポートとともに、生活支援を含めた解介助等が必要である。

全日本ろうあ連盟,2007

聴覚障害者へのソーシャルワーク

奥野によると「聴覚障害者を対象とするソーシャルワークは、聴覚障害者のニーズを踏まえて支援することが求められる。具体的には、聴覚障害のある人々とのコミュニケーションが取れることが基本であり、さらに、聴覚障害の特性を正しく理解し、目に見えない障害である聴覚障害ゆえに起きているさまざまな課題・問題を理解したうえで、利用者の立場に立って、心ある支援をしていくことが求められる」とした上で、聴覚障害者へのソーシャルワークについて次のことをあげている。

「①手話通訳者を介さずに、聴覚障害者と直接に、手話、口話、筆談、ホームサインなどでコミュニケーションができること」「②目に見えない障害であるがゆえに生じるであろうさまざまな課題や問題」について、「③聴覚障害の特性を正しく理解したうえで、利用者の立場に立って支援すること」である

「聴覚障害児・者支援の基本と実践」奥野,2008

聴覚障害ソーシャルワーカーのスペシフィックな技能

ソーシャルワークにおいては、さまざまな場面における専門的コミュニケーション技術(非言語的コミュニケーションを含む)が重要であり、ソーシャルワーカーは対象者と直接的に効果的なコミュニケーションをおこなうことが求められる。聴覚障害ソーシャルワークでは、クライエントのコミュニケーション手段に応じたコミュニケーションを行うべきであるが、現状ではソーシャルワーカーではなく手話通訳者が相談業務をおこなう場合もある。それは、通訳者としてクライエントに同行して通訳をしている際にも、その場で相談援助を求められる場合や、わざわざソーシャルワーカーでなくても対応できると考えられるニーズが生じた時に、聴覚障害ソーシャルワーカーが制度的に明確に位置づけられていないがために、手話通訳者がソーシャルワーク実践をおこなう状況が生じてしまうからである。

原は、以下の理由により、手話通訳者が通訳業務以外に相談援助業務をおこなうのではなく、専門性をもつ聴覚障害ソーシャルワーカーが相談援助すべきであると述べている。

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福祉分野のソーシャルワーカーとして、2021年社会福祉士(社会福祉系通信制大学卒)取得、2022年公認心理師(Gルート)、2023年精神保…

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