力試しに手話通訳士試験「障害者福祉の基礎知識」を解いてみた①〜社会福祉の試験対策〜
手話通訳士試験の学科試験は、「障害福祉の基礎」「聴覚障害者に関する基礎知識」「手話通訳のあり方」「国語」の4領域から出題されます。「障害福祉の基礎」は社会福祉、障害福祉全般の知識が必要とされる内容です。手話通訳者全国統一試験の試験対策にもなると思い、令和5年度手話通訳技能認定試験(手話通訳士試験)学科試験を解いてみました。
手話通訳士も手話通訳者の試験も同じ四肢択一方式ですが、感覚的には手話通訳者全国統一試験の方が難易度が高い印象を受けました。
問1.ノーマライゼーション
3.が正しい。
「ノーマライゼーション」は、デンマークのバンク・ミケルセンによって提唱された。デンマークが1959年に制定した知的障害者福祉法において登場した概念である。本質は、「障害者に対してノーマルな生活条件を整えることであり、決して障害のない人になることではない」としている。バンク・ミケルセンは「ノーマライゼーションの父」とよばれた。
ノーマライゼーションの概念の国際化を図り、理論的に深化させていったのがスェーデンのベンクト・ニイリエである。ベンクト・ニイリエは「ノーマライゼーションの8つの原理」を発表した。ベンクト・ニイリエはノーマライゼーションの育ての親とよばれた。
1.は「ノーマルな生活ができるように訓練する」が間違い。
2.は「知的障害児の親の会」が間違い。「知的障害者福祉法」において登場したものである。
4.は「ノーマライゼーションの8つの原理」を提唱したのはベンクト・ニイリエである。
問2.ピアカウンセリング
3.が正しい。
1.のアドボカシーとは権利擁護の意味であり、弱い立場にある人の生命や権利、利益を擁護して代弁すること。
2.の「エンパワメント」とは、社会的弱者や被差別者が、自分自身の置かれている差別構造や抑圧されている要因に気づき、その状況を変革していく方法や自信、自己決定力を回復・強化できるように援助すること。
4.「レスパイト」とは「休息」「息抜き」「小休止」という意味であり、在宅介護の要介護状態の方を介護をしている家族などが一時的に介護から解放 され、休息をとれるようにする支援のことである。
問3.相談支援専門員に求められる技能と役割
1.が正しい。
ケースワークの援助過程は①インテーク、②アセスメント、③プランニング、④実行・介入、⑤モニタリング、⑥終結である。インテークではニーズの把握を図り、アセスメントでは対象者を取り巻く状況やニーズを明らかにし、整理する。プランニングでは、アセスメントに基づき、対象者の自己決定(意思決定)を保障しプランを作成する。プランをもとに様々なサービス、社会資源などを活用し、関係者と連携しながら、援助を実施する。援助の途中で定期的に援助内容を振り返り、援助が適切で有効であったか、点検、評価する。課題が解決し、生活状況に改善や安定がみられたら援助の終結となる。
問4.国際生活機能分類(ICF)
2.が正しい。
事例は、「参加」に制約がある。水泳教室で前例がないため特別扱いができないという理由は、「環境因子」によるものである。
ICF(国際生活分類)は、前身であるICIDH<国際障害分類、WHOによって1980(昭和55)年に作成>の全面的な改訂版として、2001(平成13)年のWHO総会で確定したものである。
特徴の第一は、プラス指向の視点と表記が用いられたことである。すなわち機能障害ではなく「心身機能・構造」、能力障害でなく「活動」、社会的不利でなく「参加」とされる。これらが障害された状態として、それぞれ「機能・構造障害」、「活動制限」、「参加制約」とした。
個々が持つ機能障害や能力障害に起因する支障や制限を「個人因子」とし、障害のある人を取り巻く種々の条件(社会的障壁)を総称して「環境因子」とした。
問5.ヘルプマーク
2.3.4.は正しい。誤っているものは、1である。ヘルプマークという。
義足や人工関節を使用している方、内部障害や難病の方、または妊娠初期の方など、外見からは分からなくても援助や配慮を必要としている方々が、周囲の方に配慮を必要としていることを知らせることで、援助を得やすくなるよう、作成したマークである。ヘルプマークの配布や優先席へのステッカー標示等を、平成24年10月から都営地下鉄大江戸線で、平成25年7月から全ての都営地下鉄、都営バス、都電荒川線、日暮里・舎人ライナーで開始し、さらに、平成26年7月からゆりかもめ、多摩モノレール、平成28年12月から、都立病院、公益財団法人東京都保健医療公社の病院へと拡大して実施している。
対象者は、義足や人工関節を使用している方、内部障害や難病の方、妊娠初期の方など、援助や配慮を必要としている方である。<東京都福祉局>
問6.障害者基本法
2.が正しい。
1.の市町村及び都道府県に「障害福祉計画」の策定が義務付けられているのは「障害者総合支援法」である。
3.の地域生活支援事業を規定している法律は「障害者総合支援法」である。
4.意思疎通支援事業を規定している法律は「障害者総合支援法」である。
障害者基本法は、障害者の自立と社会参加の一層の促進を図るために、1993年に「心身障害者対策基本法」が「障害者基本法」に改正された。障害者の「完全参加と平等」をめざし、対象となる障害を身体障害、知的障害、精神障害とした。国民の間に広く障害者の福祉についての関心と理解を深めるために12月9日を「障害者の日」と規定した。2004年の改正で、12月3日から9日までを「障害者週間」とした。政府は障害者の福祉等に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、障害者基本計画を策定しなければならないとした。地方公共団体(都道府県、指定都市、市町村)においてもこれに準じた計画(障害者計画)の策定を義務化した。
*「障害者基本計画」と「障害福祉計画」のちがいに留意する。
問7.第6期障害福祉計画・第2期障害児福祉計画の策定
1.2.3は含まれている。含まれていないものは4.である。
障害福祉計画・障害児福祉計画の基本的理念
1.障害者等の自己決定の尊重と意思決定の支援
2.市町村を基本とした身近な実施主体と障害種別によらない一元的な障害福祉サービスの実施等
3.入所等から地域生活移行への移行、地域生活の継続の支援、就労支援等の課題に対応したサービス提供体制の整備
4.地域共生社会の実現に向けた取組
5.障害児の健やかな育成のための発達支援
6.障害福祉人材の確保
7.障害者の社会参加を支える取組
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000163638_00001.html
問8.「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)」
4.が正しい。
障害者総合支援法の対象は身体障害、知的障害、精神障害に加え、「難病等」が追加された。障害者自立支援法の対象者は身体障害、知的障害、精神障害であったが、制度の谷間のない支援が提供できるようにするために、障害者総合支援法では難治性疾患克服研究事業の対象となっている疾病<361疾病、2020(令和2)年現在>の患者が対象。障害が固定しないために身体障害者手帳の取得ができなくても、一定の障害がある方々が障害福祉サービスを利用できるようになった。
自立支援法で問題があると指摘された応益負担は応能負担に変更された。
問9.「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」
3.が正しい。
(目的)
第一条 この法律は、高齢者、障害者等の自立した日常生活及び社会生活を確保することの重要性に鑑み、公共交通機関の旅客施設及び車両等、道路、路外駐車場、公園施設並びに建築物の構造及び設備を改善するための措置、一定の地区における旅客施設、建築物等及びこれらの間の経路を構成する道路、駅前広場、通路その他の施設の一体的な整備を推進するための措置、移動等円滑化に関する国民の理解の増進及び協力の確保を図るための措置その他の措置を講ずることにより、高齢者、障害者等の移動上及び施設の利用上の利便性及び安全性の向上の促進を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的とする。
(基本理念)
第一条の二 この法律に基づく措置は、高齢者、障害者等にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものの除去に資すること及び全ての国民が年齢、障害の有無その他の事情によって分け隔てられることなく共生する社会の実現に資することを旨として、行われなければならない。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418AC0000000091
問10.日本の障害児教育
1.2.3.は正しい。誤りは4.である。
我が国の特殊教育の発展
我が国の特殊教育制度は、昭和22年に制定された学校教育法において、盲学校、聾学校、養護学校(以下「盲・聾・養護学校」という。)、特殊学級が明確に位置付けられ、昭和23年度から盲学校及び聾学校教育の義務制が開始され、昭和31年度には、義務制が完成した。一方、養護学校についても着実に整備が図られ、昭和54年からは養護学校教育の義務制が実施された。
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/006/toushin/010102b.htm
特別支援教育について
平成19年4月には学校教育法の一部改正により、従来の盲学校、聾学校、 養護学校の制度は、幼児児童生徒の障害の重複化に対応するため、複数の障害 種別を受け入れることができる特別支援学校の制度に転換された。また、小・ 中学校等においても発達障害を含む障害のある児童生徒に対する特別支援教育 を推進することが法律上明確にされた。
特別支援学校
視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体不自由者及び病弱者(身体虚弱者を 含む。)を対象としている。幼稚部、小学部、中学部及び高等部が置かれる。
特別支援学級
障害のある児童生徒のために小・中学校に置かれる学級であり、知的障害、肢体 不自由、病弱・身体虚弱、弱視、難聴、言語障害、自閉症・情緒障害の学級がある。
通級による指導
小・中学校の通常の学級に在籍している障害のある児童生徒が、ほとんどの授業 を通常の学級で受けながら、障害の状態等に応じた特別の指導を特別な場(通級指 導教室)で受ける指導形態であり、言語障害、自閉症、情緒障害、学習障害(LD)、 注意欠陥多動性障害(ADHD)などを対象としている。
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001wjus-att/2r9852000001wkgh.pdf
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?